第143話 暗黒兵団
文字数 2,076文字
虎之助は、ヒッポイト星人の首を絞めながら
「お主をお殺した後は、ヒッポイト星に乗り込んで、住民を全員殺するござる」
と、脅した。
「そんな酷いことは止めてくれ」
ヒッポイト星人は、止めるように懇願するが
「お主らの種族は皆殺しにするでござる。拙者をバカにした事を、あの世で後悔するが良いでござる」
虎之助は冷酷に言い放った。
ーーなっ、なんと残忍な娘じゃーー
虎之助の冷酷さには、敵である士会鬼も背筋が寒くなった。
「後悔しながら死ぬでござる」
冷たい笑みを浮かべる虎之助。
しかし
ボカッ!
と、誰かに頭を殴られてしまった。
「そんなアホなことは止めろ。その宇宙人を離してやれ」
「痛いでござる。誰でござるか?」
虎之助が振り向くと、岩法師がすぐ後ろに立っていた。
岩法師の背後には、結界に閉じ込められていたメンバー全員がそろっている。
「お主ら、闇の結界から出て来れたのでござるか?」
不思議そうに虎之助が尋ねる。
「蜘蛛の糸で編んだ糸に法力を込めて、お前の足に結んでおいた。その糸をたどって来たら外に出れたのだ」
岩法師が説明する。
「本当だ、拙者の足に糸が結んであるでござる」
「お前なら、闇の結界から出られると思ってな。それより、早くその宇宙人を離してやれ」
「仕方ないでござるね」
虎之助が手を離すと
「もう絶対に、こんな野蛮な星には来ないぞ」
ヒッポイト星人は、来たことを後悔しながら、素早く逃げて行った。
「おい、加藤。その娘は残忍すぎるぞ、いつからDSPは正義を捨てたのじゃ」
加藤が士会鬼に嫌味を言われた。
「おのれら鬼に言われる筋合いは無いわ」
加藤は跳躍すると、鎖ガマを士会鬼に向けて投げつける。
鎖ガマは、士会鬼の身体に巻き付いて、両手の自由を奪った。
「今だ、武蔵。奴を倒せ」
「承知ッス」
ズバッ!ズバッ!
武蔵は素早く二刀流で、士会鬼の首と胴体を切り捨てた。
ブシュー
切られた首と腹部から大量の血が吹き出す。
「老人に対して酷いことをする奴じゃな。ワシに血を流させた事を後悔するぞ」
血を流しながらも、士会鬼は平然としている。
士会鬼の血を吸い込んだ地面が盛り上がり、金属で出来たような鬼が5体現れた。
「なんじゃ、コイツら」
驚いて、後退する加藤と武蔵。
「コイツらは銅の体を持つ鬼どもじゃ。貴様らでは、倒すのに骨が折れるぞ」
銅の鬼たちが、DSPのメンバーに襲いかかった。
加藤に岩法師・武蔵・狂四郎・虎之助が、それぞれ相手をするが、銅で出来ているために、刀では切りにくく、修復能力も備わっているようで、斬っても、すぐに修復されてしまう。
「コイツらは古代に造られたブロンズデビルだ。無敵のブロンズデビルを操る者は世界を支配すると言われている」
加藤は、ブロンズデビルの事を知っているようだ。
「では、コイツらを倒す方法はないんッスか?」
武蔵もブロンズデビルには苦戦している。
「いや、無くはない。臨・兵・闘・者・皆・陣・列・前・行」
加藤が九字を唱えだした。
すると空から、銀色に光る天使が5体現れた。
「ブロンズデビルには、シルバーエンジェルで対抗する。この世の全ての悪を浄化するシルバーエンジェルに敵はいない」
自信ありげに加藤が言った。
天使たちは、ブロンズデビルに向かって行く。
パクパク
しかし、シルバーエンジェルはブロンズデビルに、あっけなく食べられてしまった。
「皆んな食べられてちゃったッスよ」
残念がる武蔵。
「食べられたでござる。美味しそうには見えなかったでござるが」
結局、シルバーエンジェルは瞬殺されてしまった。
「バカな、俺のシルバーエンジェルが……」
自信を持って送り出したシルバーエンジェルが、あっけなく食べられてしまい、加藤のテンションが大幅に下がった。
「ドジっ子の加藤の術では無理でござる、拙者がやるでござる。臨・兵・闘・者・皆・犬・猫・ファミチキ・からあげクン」
虎之助も九字を唱え出した。
「お前の九字、後半が、なんか変だったぞ。からあげクンって聞こえたけど?」
加藤が突っ込む。
「途中から面倒くさくなったので、適当に言ったでござる」
「ちゃんと唱えないとダメだろ」
と、加藤と虎之助が話していると、地面が割れて、地中から地獄の暗黒兵団が現れた。
恐ろしい姿をした悪魔たちが、漆黒の鎧をまとっている。
「怖っ!お前、なんちゅうもんを出すんだ」
さすがの加藤もビビっている。
「出たモンは仕方ないでござる〜」
呼び出した虎之助さえ、怯えて加藤の後ろに隠れた。
その悪魔たちが、一斉にブロンズデビルに襲いかかって行く。
暗黒兵団は、次々とブロンズデビルを修復不可能になるまで徹底的に破壊すると、士会鬼に向かって行った。
ーー地獄の暗黒兵団が、このワシに向かって来るとは、この娘やはり白鬼が造っていた闇の西王母じゃなーー
本来は鬼の味方である暗黒兵団が自分に向かって来るのを見て、士会鬼は虎之助の暗黒パワーの巨大さを感じ取った。
「ならば、ワシも本当の姿を見せねばならんの」
そう言って士会鬼は宙に浮き始めると、本当の姿に変化して行くのであった。
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