第114話 夜叉VS妖怪尻ふき
文字数 1,846文字
加藤たちが時空の歪に入って行くと、えらく立派な日本庭園が見えた。
「こんな所に、白鬼の棲み家があったのか」
手入れが行き届いている美しい庭園の中に、和風の屋敷がある。
「あれが白鬼の家だな」
ハーデースとポセイドン・ヘスティアは気を入れ直す。
「よし、行くぞ」
素早く、加藤が屋敷に向かって走り出した。
すると、庭園から10人ほどの鬼武者が現れて、加藤を取り囲む。
加藤は跳躍して鬼武者たちを飛び越え、そのまま屋敷に向かって走り続けていく。
「俺たちも行くぞ」
ポセイドンとハーデースは、鬼武者に向かって行った。
「くらえ!」
妖怪尻ふきは剣をかざして夜叉に突っ込んで行く。
ペシャ
だが、すぐに夜叉に踏み潰されてしまった。
「姉さん、ヤバいですよ。あの変な妖怪が瞬殺されましたで」
普段は強気な小太郎が、弱気になっている。
「鬼神が正体を見せたのなら、拙者も正体を現すどすえ」
「姉さん正体は、皆んな知ってまっせ」
小太郎は、怪訝そうな顔をしている。
「今から、誰も知らない拙者に変身するどすえ」
まめヤッコが呪文を唱えると、虎之助の衣装が変化して行き、メイド少女戦士マリリンへと変身した。
「このメイド姿で油断させて、毒入りコーヒーを飲ますでござる」
メイド少女戦士マリリンは、お盆に毒入りアイスコーヒーを置いて、やる気まんまんである。
「いや、姉さん。その姿は何度か見てるし、この状況で鬼神が油断なんかしまへんで」
小太郎は呆れながら注意した。
「えっ、そうなのでござるか」
「そうでっせ」
「じゃ、力ずくで飲ませるでござる」
メイド戦士マリリンは、毒入りコーヒーを持って夜叉に向かって行く。
「貴様は、このコーヒーを飲んで死ぬでござる!」
「そんな物、飲むか!バカ者」
夜叉は口から破壊光線を出して、マリリンを攻撃して来た。
しかし、破壊光線を避けながら、マリリンは夜叉に向かって走る。
「くそっ、すばしっこい奴め」
破壊光線を止めて、夜叉は金棒で殴りかかって来た。
「行くでござる」
マリリンは高く飛び上がって、手刀で夜叉の首を狙う。
「させるか、小娘!」
夜叉の金棒がマリリンを捉えた。
ズバッ!
マリリンは手刀を振り切った。
「ばっ馬鹿な」
ボトッ!
金棒ごと夜叉の首が斬られて落ちた。
「やった!さすが姉さん」
喜ぶ小太郎。
「毒入りコーヒーを、飲ますでござる」
切り落とした夜叉の頭部の口に、コーヒーを飲ませるマリリン。
「切り落とした首に毒入りコーヒーを飲ますとは、やる事が理解できん娘だ」
ボルデ本山はマリリン行動に、困惑している。
「おのれら、俺の首で遊ぶんじゃねえ!」
なんと、首を落とされた夜叉の胴体に、顔が現れて話し出したではないか。
「おおっ、死んで無かったのか」
驚くボルデ本山。
「首を斬られたぐらいでは、鬼神は死なん」
「思った以上に鬼神は厄介ッスね」
少し体力が回復した武蔵は、立ち上がると刀を構えて夜叉の方に歩いて行く。
「武蔵、大丈夫か?」
ボルデ本山が心配している。
武蔵が夜叉と対峙している間に、マリリンが毒を飲ませた夜叉の首が、干からびて頭蓋骨が見えて来た。
「やっぱり有ったでござる」
マリリンは、頭蓋骨の額の部分に光る物を見つけた。
「姉さん、それは何でんねん?」
「言い伝えでは、鬼神の額には金のラッキーカードがあって、お菓子会社に送ると『おもちゃの缶詰』がもらえるでござる」
「へえー、そりゃ楽しみでんなぁ。早く送りましょうや」
などと2人で話していると。
「コラッ!出たらめを教えるな。そんなの、くれる訳ないだろ!」
と、夜叉に怒られた。
「うわっ!怒られたでござる、逃げるでござる」
「そうでんな、逃げましょ」
マリリンと小太郎は、コソコソと逃げ出した。
「君らは、さっきから何をやっとるんじゃ!」
2人は、ボルデ本山に注意されてしまった。
「そうだ、拙者は鬼神を倒すんだったでござる」
「俺もですわ。姉さんが『おもちゃの缶詰』とか面白トークをするから、気を取られて、すっかり忘れてましたわ」
2人は本来の目的を思い出した。
「なんだ、こいつら機械じゃないか」
ハーデースとポセイドン、ヘスティアが倒した鬼武者は、すべてロボットであった。
「用心深い白鬼は、自分の部下にも居所を教えず、ロボットに警護させてるようね」
ヘスティアは倒した機械の鬼武者を調べている。
「気の小さい野郎だ」
ポセイドンは小馬鹿にしたように言った。
「加藤は、先に屋敷に入ったようだ。俺たちも行くぞ」
ハーデースたちは、白鬼の屋敷に向かった。
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