第149話 エピローグ
文字数 1,890文字
士会鬼亡き後の鬼族は、主だった鬼神が隠居してしまった為、鬼塚と川島が仕切ることになった。
鬼塚は争いを好まず人間との共存を望み、鬼が人を襲うことは、次第に無くなって行く。
士会鬼との戦いで重症を負った加藤と狂四郎、小太郎の3人は、そろって警察病院に入院していたが、無事に完治して退院することになるが、加藤は高齢のため、退院後は再び隠居生活に戻ることにした。
鬼が人を襲わなくなったので、DSPは解散となるが、所属していた転生者たちは、鬼以外の人外の者への対応を行う警察の特別課へと配属されて、魑魅魍魎といった類の者共と戦いつづけている。
左近は、相変わらず小学生に通いながら、剣術の修行に励んでいる。
千代はというと、転生者という事で小太郎たちと一緒に特別課で勤務していた。
虎之助の頃のような凄まじい暗黒パワーは無くなったが、唐沢家のくノ一としての能力は健在であり、充分に戦力として成り立っている。
「お疲れさん」
勤務が終わると、狂四郎は桜田刑事とのデートに急ぐ。
「ええな、アイツは彼女がおって」
小太郎が、狂四郎の後ろ姿を眺めながら羨ましがっていると
「今日は僕もデートっス」
武蔵も彼女と会うようである。
「お前もかいな」
2人がデートすると知って、小太郎のテンションは下がっていく。
「千代さん、アイツら最近たるんでまんなぁ」
と、千代に訴えるが
「そうですか」
と、何故が千代は落ち着かない様子である。
その時、三十代と思われる、むさ苦しい男がやって来て
「今日は仕事が早く終わったので、お食事でも一緒にどうですか」
千代に笑顔で話しかけた。
「ありがとう、黒瀬さん。行きましょう」
千代も笑顔で応える。
「ええっ、なんでお前が。まさか、アンタら付き合ってるんか?」
黒瀬が千代と親しげにしているのを見て、驚く小太郎。
「少し前から、お付き合いさせてもらってます」
千代は平然と答えた。
「黒瀬はん。こんな年下と付き合うって、お前は、ロリコンで体育会系の鬼か!」
思わず黒瀬に突っ込む小太郎。
「人聞きの悪いことを言うなよ。千代さんとは結婚を前提に、真面目にお付き合いをさせてもらってるんだ」
「けっ、結婚って!君ら、美女と野獣と言うより、オッサン変質者と騙されとる未成年の少女やないかい!」
小太郎は驚きすぎて、失礼な事を口走った。
「君は酷いことを言うな。俺は真剣に千代さんを愛してるんだ」
黒瀬は、顔を真っ赤にしながら訴える。
それを見て、千代は嬉しそうに笑っていたが
「では小太郎さん、また明日」
と言いながら、黒瀬の腕を引っ張って連れて行ってしまった。
一人残されて、放心状態になった小太郎に
「なに落ち込んでるんだ」
勤務が終わったばかりの岩法師が、声をかけて来たが
「いや、何でもあらへん」
思わず小太郎は走り出した。
「なんじゃ、あいつ。帰る場所には同じ宿舎なのに」
不思議がる岩法師。
DSPの宿舎は、引き続き特殊課の宿舎として使われており、今までのメンバーは全員そのまま住んでいるのである。
小太郎は走り続けていた。
ーー恋人は欲しいけど、虎之助姉さんがいた頃は充実していて楽しかったな。そりゃ、今のほうが敵が弱くなって安全な職場になったけど、なんだか寂しいわーー
「よう、少年。元気にしとるか?」
「あっ、アンタは」
久しぶりのアンドロポプであった。
走っているうちに、いつの間にかアメリカ村に来ていたのである。
無意識に虎之助やマーゴットとの思い出が多い、この場所に来ていたのである。
「まだ、ココに、たむろしてるんか?」
「国際電器保安協会ロシア支部が無くなったんで、俺が一人で日本支部をやってるんだ」
「じゃ、また敵同士なんか」
「そうなんだけど、もう転生者とは戦わない事にした。俺の相手は、人外の者どもだ」
「ほんだら、俺らの味方なんか?」
「味方って訳じゃないが、敵ではない」
「なんや複雑やな」
「まあ、そうだな」
「アメリカ支部の奴らは、どこや?」
「ライアンとマーゴットなら、アメリカに帰ったぞ」
「それやったら、アンタも寂しくなるな」
「アンタもって事は、お前は寂しいのか?」
アンドロポプは、小太郎を見つめた。
「そうか、そういえば、あの小娘は妹に入れ替わったんだってな。お前ら仲が良かったから。だが、そんな事を言ってる場合じゃないぞ、鬼がおとなしくなったせいか、近頃は妖怪や地球外生命体が頻繁に出現しているそうだ」
ーーそういえば、確かに、最近やたらと緊急出動が多かったわ。こりゃ、ヘコんでる場合じゃないでーー
「よっしゃ!お互いに頑張りまひょか」
小太郎は、自分の宿舎に向かって走り出した。
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