第108話 西王母と加藤
文字数 1,904文字
川島はモスクワ中心部にある、政府のビルに向かっていた。
国家戦略室の室長であるラスプーチンを、始末する為である。
「このビルか」
見上げてみると、微かにラスプーチンの気配を感じた。
「では行くか」
川島は、ビルの玄関から堂々と入って行った。
「それで、カス人間さんに、お願いがあるのです」
加藤に向かって西王母が言った。
「お願いは良いのですが、ワシのことを、カス人間って呼ぶのは止めてもらいたい」
「なぜですか、アナタはカス人間でしょう?」
「違いますよ」
ここは、きっぱりと否定する加藤。
「では、何人間ですか?」
「ワシは普通の人間だ」
「では、ゲス男のアナタに、お願いがあるのですが」
「ワシは、ゲス男ではありません」
「では、クソ虫人間のアナタに、お願いがあるのですが」
「ワシはクソ虫人間ではありません。っていうか、全然、話が進みませんので、ワシのことは加藤と呼んで下さい」
「わかりました。では、アホの加藤に、お願いがあるのですが」
ーーアホの加藤って。まあ仕方がない、このままでは話が進まん、とりあえず先に話を聞くかーー
しぶしぶ加藤は、西王母の話しを聞くことにした。
「どんな、お願いですか」
「アホの加藤に、すべての黒幕である白鬼を抹殺して欲しいのです」
西王母は真面目な顔をして言った。
ーー言ってることは良くわかるが、白鬼は鬼神の中でも最強の鬼だ、今のワシで勝てるかどうかーー
加藤が黙って悩んでいると。
「聞いているのですか、アホの加藤?」
西王母が不機嫌そうに尋ねる。
「ちゃんと聞いてますよ。ただ、白鬼は強すぎます、ワシの手に負えるかどうか」
「わかっています。私も、アホの加藤ごときが一人で白鬼を始末できるとは、思っていません」
ーーなんかムカつく言い方だなーー
「では、誰かと一緒に殺るのですか」
ムカつきながらも我慢して、話しを続ける加藤。
「パーカー、あの人たちを連れて来なさい」
西王母がパーカーに指示をだす。
しばらくすると、パーカーが数人の男女を連れて来た。
「この者たちが、アホの加藤を援護をします」
なんとパーカー連れて来たのは、ヘスティアとポセイドン、ハーデースであった。
ーーコイツらは資料で見たことがある。確か国際電器保安協会ギリシャ本部の幹部だーー
「よろしく、アホの加藤。私たちは白鬼と敵対している者です、一緒に白鬼を倒しましょう」
ヘスティアが右手を出して、加藤に握手を求めて来た。
「はあ、よろしく」
ーーコイツらまで、アホの加藤ってーー
事態を把握できずに、とりあえず握手を交わす加藤であった。
大阪DSPの宿舎では、安倍康晴と岩法師たちが悩んでいた。
新しく顧問に就任したばかりの加藤が、居なくなったからである。
「それで加藤さんは、空に登って行ってしまったんですか?」
安倍が岩法師に確認している。
「虎之助の話しでは、そういう事らしいです」
岩法師が答える。
「加藤はんが戻って来るまで、ボルデ本山はんに顧問代理を頼みましょうや」
と、ボルデ本山に懐いている小太郎が、提案する。
「拙者は、ニャン平太が顧問になるのが良いと思うでござる」
ニャン平太の事が大好きな虎之助も、提案する。
「その2人は駄目ッスよ、身元がハッキリしてないッス」
意外にも武蔵が、まともな意見を言った。
「ニャン平太の身元は、しっかりしてるでござる!」
反論する虎之助。
「本山さんが魔法で出したゲームのキャラじゃん」
「なに言ってる武蔵。お主こそ、史実とキャラが違うでござる、きっと、ニセ武蔵でござる」
「俺は本物の武蔵ッスよ、お嬢ちゃんこそ正体不明ジャン。変な暗黒術を使うし」
ムカっ!
「武蔵、お前を殺すでござる」
キレた虎之助が刀を抜いた。
「やる気なら、受けて立つッス」
武蔵も刀を抜く。
殺気だつ2人の間に緊張が走る。
ーーまた喧嘩か、しょうがないなーー
「おい、虎之助。喧嘩は止めろ、夕食にお寿司を取ってやるから」
喧嘩に気づいた岩法師が止めに入った。
「お寿司でござるか」
虎之助は、しばらく考え込んでから
「よく考えてみると、ニャン平太の知能では顧問は務まらないでござる。それに、アイツは猫か人間か分からない得体の知れない生き物だし」
と、あっさりと自分の意見をくつがえした。
それを聞いていた狂四郎が
「お前は、ニャン平太と仲良しだったじゃねえか」
呆れながら、つぶやく。
「私に心当たりがある人が居るのですが、加藤さんが帰って来るまで代理を、お願いしようと思います」
さすがに安倍一族である、安倍康晴は顔が広い。
「そうですね、お願いします」
岩法師も特に断る理由も無く、代わりの案も無いので、顧問代理の件は安倍に任せる事となった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)