第35話 リンゼイ老師のリベンジでござる
文字数 3,192文字
虎之助たちは、岩法師にステーキを奢ってもらい、宿舎に帰る途中であった。
「ステーキ美味かったな。今度、桜田刑事を誘って行こう」
狂四郎も上機嫌である。
「エエなぁ、彼女が居る奴は」
小太郎が、うらやましがっている。
「お前も彼女を作れば良いじゃないか。例えばこんなのとか」
狂四郎は虎之助を指さした。
「姉さんは、俺の師匠みたいなもんやからなぁ」
最近、小太郎は毎日のように、虎之助から剣と忍術の稽古をつけてもらっている。
「小太郎は拙者が鍛えているので、かなり腕が上がったでござる」
「もともと、俺は天才剣士やしな。
その時、岩法師は刺すような殺気を感じた。
ーーなんだ、この殺気はーー
「みんな、気を付けろ!敵がすぐ近くに居るぞ!」
岩法師が叫ぶ。
「おい、殺気を出すなって言ったろ」
「しょうがねえじゃないか、出るもんは出るんだよ」
ライアンとアンドロポプの会話が聞こえる。
「あいつらは『国際電器協会』でござる」
虎之助も敵に気がついた。
「大勢いるな」
リンゼイ老師一派に加え、ライアンとマーゴットにアンドロポプと『国際電器保安協会』のメンバーが勢ぞろいしている。
どうやら虎之助たちは、待ち伏せされていたらしい。
岩法師と狂四郎は、警戒して武器をかまえた。
「姉ちゃん、手握ってもエエ?」
いつの間にか、マーゴットの側まで来ていた小太郎が、手を握ろうとしている。
「ダメに決まってるでしょ!アンタ敵なんだから、あっちに行きなさいよ!」
「嫌や、俺は姉ちゃんみたいな彼女が欲しいんや!」
小太郎がダダをこね出した。
「お主ら、お似合いでござるよ」
なぜか、虎之助もこちらに来ている。
虎之助に気付いたアンドロポプが、近づいて来て
「小娘、この前の借りを返すぜ」
と、いきなり、虎之助に殴りかかって来た。
「唐沢家忍術『秘技三枚おろし』」
ズバ、ズバッ!
だが虎之助の攻撃の方が一瞬早く、アンドロポプは綺麗に三枚におろされ、パタパタッ!と3つに別れて倒されてしまった。
「アンドロポプめ、この娘はヤバいって注意してやったのに、バカな奴だな」
ライアンは、あきれながらも
「マーゴット、死にたく無ければ、その娘にかまうな。俺らの相手は向こうの坊さんと侍だ」
と、マーゴットと2人で、岩法師と狂四郎に向かって行く。
「岩法師さん、2人こっちに来ますよ」
狂四郎は刀を構えながら言った。
「ぬかるなよ狂四郎」
薙刀を構えた岩法師も、臨戦態勢にはいっている。
リンゼイ老師は、ずっと虎之助を睨んでいた。
ーー他の者は、どうでも良いが、あの小娘だけは絶対に殺すーー
「アーナブ、マニッシュ。あの小娘を殺るのじゃ!」
リンゼイ老師の掛け声と共にアーナブとマニッシュが、虎之助に向う。
各自が相手を見つけて戦い始めると、小太郎とリンゼイ老師が残るかたちとなった。
「あの2人は姉さんにまかせて、俺はあのジジイを殺ろう」
意外にも小太郎は、余裕の表情でリンゼイ老師に向かって行く。
「ジジイ、覚悟しろ!」
ーー姉さんから教わった必殺技『地獄斬り』を試したるーー
『地獄斬り』とは、頭部と腹部と股間を、一秒間に4回づつ斬って地獄に落とすという、おそろしい技である。
しかし、向かって来る小太郎に対して、リンゼイ老師は平然としている。
「死ねや、ジジイ!」
小太郎の『地獄斬り』がリンゼイ老師に炸裂する。
が、手応えが無い。
「うっとおしいぞ、ザコ小僧」
ドスッ!
いつの間にか、小太郎の背後に周り込んでいたリンゼイ老師が、掌底をはなった。
「るへ〜」
小太郎は、吹っ飛ばされて、道路沿いの喫茶店に突っ込んでいく。
「お主ようなザコが、ワシに挑むなど30万年ほど早いわ」
小太郎を軽く倒し、何事も無かったようにリンゼイ老師は、虎之助に向かって、ゆっくりと歩いて行く。
アーナブとマニッシュにリンゼイ老師が加わり、虎之助が3人を相手にする事になってしまった。
「アーナブ、マニッシュ。この娘は確実に殺すのじゃ」
「承知しました」
アーナブが呪文を唱えだすと、地面が盛り上がり、地中から1つ目の大男が現れた。
「インドの人食い怪物ラークシャサだ。あの小娘を喰らえ」
アーナブに命令されたラークシャサが、虎之助に向かって来る。
「そっちがインドの怪物なら、こっちは日本の妖怪を出すでござる」
虎之助は、妖怪を召喚する気である。
まさに、インドの怪物と日本の妖怪の、歴史的な対決が行われようとしていた。
リンゼイ老師はラークシャサを見て、すでに勝利を確信している。
ーーラークシャサは、羅刹と呼ばれる最強の人食い怪物じゃ。日本の妖怪など相手にならんじゃろうーー
リンゼイ老師は穏やかな表情で、戦いを見守っている。
虎之助が呪文を唱えた。
すると、強い光と共に金髪の美女が現れた。
「プレアデス星人、あの怪物を殺すでござる」
日本の妖怪が出て来ると思い込んでいたら、まさかの金髪美女であるプレアデス星人の出現にアーナブたちは、たじろいだ。
「ちょ、ちょっと待て!これの、どこが日本の妖怪だ?プレアデス星人って、名前からして宇宙人じゃないか!」
アーナブは抗議するが、プレアデス星人は容赦なくラークシャサに向けて殺人ビームを放つ。
「クフッ」
ビームが直撃したラークシャサは、跡形もなく消滅してしまった。
「まさか、あのラークシャサが一瞬で!」
さすがのリンゼイ老師も驚きを隠せない。
「次は、あの3人を殺すでござる」
アーナブたちを指さして、虎之助がプレアデス星人に指示を与える。
「宇宙人を出すなんて非常識じゃぞ!」
リンゼイ老師も抗議するが、プレアデス星人は非情にも、3人に向けて殺人ビームを放った。
「おのれ、リンゼイバリア」
リンゼイ老師がバリアを張った。が、殺人ビームの勢いを止めることは出来ず、3人とも、まともにビームを食らってしまった。
「クフッ」
アーナブとマニッシュは消滅し、リンゼイ老師も重症を負ってしまった。
「プレアデス星人、とどめを刺すでござる」
だが、なぜか指示に反して、プレアデス星人は虎之助の方に歩いて来る。
「地球の人よ、私はもうプレアデス星に帰らねばなりません」
と、別れを告げた。
「そうなのでござるか?」
「そうなのです」
「では、お礼にコレをあげるでござる」
虎之助が、一握りの落花生の殻をプレアデス星人に渡すと
「ピッピッピッピッ、ピーナッツ」
と、歌いながらプレアデス星人は飛んで行ってしまった。
「あの、興味本意で聞くんじゃが。プレアデス星では落花生の殻が貴重なのか?」
ボロボロにりながらも、リンゼイ老師は落花生の殻の事が気になるようだ。
「ただの、ゴミでござる」
平然と虎之助は答えた。
「なんと非情な。テメエの血は、いったい何色じゃ!」
リンゼイ老師は叫びながら、ブラフマーへと変化していく。
「このド外道が。絶対に許せぬ!」
ブラフマーは激怒している。
しかし、虎之助は、チアガール戦士ピチョリンに変身して
「許せぬなら、どうするんでござるか?」
と、言いながら、アメリカンフットボールのチアリーダー並みのチアダンスを踊っている。
「死ね、この悪魔!」
リンゼイ老師は両手から、チアガール戦士ピチョリンに向けて、膨大な神気を放った。
シュバー!
「ピチョー」
チアガール戦士ピチョリンは、道路沿いの喫茶店まで吹っ飛ばされた。
「姉さん、大丈夫でっか?」
喫茶店の店内では、小太郎がクロワッサンを食べながらコーヒーを飲んで、くつろいでいた。
「俺は違いが分かる男やから、このコーヒーの美味さが良くわかりますわ。姉さんも、どうでっか?」
チアガール戦士ピチョリンは、立ち上がると小太郎からクロワッサンを1つ取り、ポケットから出した小瓶から液体をクロワッサンにかけながら
「この毒入りクロワッサンを食わせて、あのジジイをブッ殺すでござる」
と、不敵な笑みを浮かべるのであった。
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