第71話 小太郎とラスプーチン
文字数 2,279文字
虎之助とスーパーゼウス人が戦いを行っていた場所では、まだスーパーゼウス人から放出された蒸気が漂っていた。
蒸気は少しづつ集まり出し、徐々に大きな塊になって行く。
ちょうど人の大きさ程になると、人の形を作り一人の男となった。
「ゼウスの野郎、俺様に雷を落としやがって」
国際電器保安協会ロシア司令官のラスプーチンである。
彼は不死に近い身体を持っており、何度でも蘇ることが出来る。
「どうやら、ゼウスは死んだようだが、ギリシャ本部の奴らは許せん。特にアポロンの野郎は必ず殺してやる」
と、ラスプーチンが復讐を誓っていると。
「あれっ、オッサンは前に壊れた屋敷で会ったゾンビやないか」
小太郎が現場に戻って来た。
ゼウスからエクスカリバーをパクったものの、しばらく振り回しているウチに飽きてしまっていたのだ。
「なんだ、あの時の小僧か。お前、良い物を持っているな」
小太郎が持っていたエクスカリバーが、ラスプーチンの目に止まった。
「良いやろ、この剣。オッサンに売ったろか」
「ほう、いくらだ?」
「そうやな、三千円やな」
「えらく安いな」
「じゃ、400万円や」
安いと言われ小太郎は値段を釣り上げた。
「高いな」
「ほんなら、300円でエエわ」
高いと言われ小太郎は、大幅に値段を下げた。
「よし、買った」
ラスプーチンは、300円で聖剣エクスカリバーを手に入れた。
「じゃ、小僧。達者でな」
小太郎に代金を払うと、ラスプーチンはギリシャに向かって飛んで行った。
「あのオッサン飛べるんや、便利やなぁ。そうや、この300円でお菓子を買って帰ろう」
小太郎は、スーパーマーケットに向かって走り出した。
「おい、大丈夫か」
川島は倒れているグッピーちゃんを抱き起こす。
「くそう、あの髭ジジイ。絶対に許さないから」
起こされながらも、グッピーちゃんは怒っている。
「アイツは、もう死んだよ」
「えっ、もしかして専務さんが倒してくれたの?」
「ああ、そうだ。他の者たちも探して連れて帰ろう」
ーーくそう、グッピーちゃんまで、俺が専務だって事を知っていたとは。あの社長にも困ったもんだなーー
川島は苦笑いしながら、グッピーちゃんと一緒に処刑鬼隊のメンバーを探し始めた。
武蔵が虎之助を肩車しながら、宿舎に向かっていると
「あそこのスーパーマーケットに寄るでござる」
と、虎之助に指示された。
「肩車しながらじゃ、入れないッスヨ」
高さ的に、入り口のドアにつっかえそうである。
「じゃ、オンブで良いでござる」
虎之助は肩車から、オンブの体勢に移動する。
「あのチップスと、このチョコレートを買うでござる」
スーパーマーケット入ると、武蔵は虎之助の選んだお菓子を買い物カゴに入れさせられた。
「そろそろオンブも疲れたッス、もう降りてくれないっスか」
「ダメでござる、帰るまで合体しておくでござる!」
ガブッリ!
武蔵は首を虎之助に噛まれた。
「痛ッス。あれっ、あんな所に小太郎ッチが居るッスよ」
武蔵は首を噛まれながらも、スーパーの店員さんを口説いている小太郎を見つけた。
「オバちゃん、俺とバビロンの空中庭園に行けへんか」
小太郎が30代ぐらいの主婦っぽいパートの店員を、一生懸命に口説いていた。
「あんた仕事の邪魔だから、あっちに行って」
オバちゃんと呼ばれて、店員は不機嫌そうに小太郎を追っ払っている。
そんな小太郎を眺めながら
「武蔵は、彼女は居るのでござるか」
と、虎之助が尋ねた。
「僕は京都に5人、大阪に2人いるッス」
軽く武蔵は答える。
「アホでござるね」
「アホじゃ無くて、僕はモテるんッスよ」
「彼女が7人も居る奴は、正常では無いでござる。お主は異常者ではござる」
「そんな大袈裟なことじゃ無くて、だたモテるだけッスよ。そう言うお嬢ちゃんは彼氏は居るんスか」
「恋人でござるか」
ーー恋人などは考えた事も無かったでござる。この前は、左近から結婚してくれって言われたけど、左近はまだ小学生だしなぁ。若林は交際してくれって、しつこいでござるな。黒瀬は、いつも奢ってくれるからーー
などと虎之助が考えていると
「待っておくんなはれ、誤解でんねん。ちょっとオバハンの手を握りたかっただけやねん」
小太郎の大きな声がする
あんまりしつこく店員を口説いていたので、店長らしき男と警備員に店から摘み出されているところであった。
ーーあの男を彼氏にするのが、一番ダメでござるなーー
と、思う虎之助であった。
国際電器保安協会ギリシャ本部に、ラスプーチンがやって来た。
「アポロンは、どこだ?教えろ、エロい人」
幹部のハルバトスに対し、聖剣エクスカリバーを喉元に当てて脅している。
「だから、アポロンは病院に入院してるって言ってるだろ」
「どこの病院だ、エロい人?」
「国立病院だ。それより、エロい人って言うな!」
2人が口論をしていると
「ラスプーチン君。本部の人に迷惑をかけては、いけませんよ」
と、背後から注意された。
「誰だ、俺様に意見する奴は」
ラスプーチンが振り向いてみると、優しげな感じの紳士が、微笑んでいる。
「あっ、アンタはロマノフ議員。どうしてココに居るんです?」
「ゼウスが倒されたと聞いて、確かめに来たんだが、どうやら本当のようですね」
「奴は俺を利用してスーパーゼウス人になったのですが、日本の鬼に殺されました」
ラスプーチンにしては丁寧に説明する。
「では、ココに居ても仕方が無い、帰りますよ。ラスプーチン、アナタも付いて来なさい」
「はい、わかりました」
意外にも素直に、ラスプーチンはロマノフ議員に連れられてロシアに帰国するのであった。
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