第43話 火星戦記パート2
文字数 2,663文字
「いらっしゃいませ」
今日も、アキレスと虎之助は屋台で元気にタピオカミルクティーを売っていた。
「意外と客が来るけど、いったい何処から来るんだろう?」
アキレスが不思議がっていると
「お主のような、末端の新入りは余計な事を考えないで、黙って働いていれば良いんでござる」
虎之助に注意された。
「お前だって新入りだろ」
「拙者は昨日、主任に任命されたので、お主の上司になったでござる」
「お前が俺の上司だと!あれっ、そのスカート、もしかしてブランド品じゃねえか?」
良く見ると、虎之助は高級ブランドで全身をコーディネートしている。
「ブラウスとスカートがプラダで、腕時計はローレックス、スニーカーがオニツカタイガーでござる」
「ええっ!」
「さらに、バックはルイビトンで、お化粧品は全てシャネルでござる」
「なんで、そんなに金持ってんだ?しかも、化粧なんか全然してないクセに」
「初日に助清社長から貰ったダイヤを換金して、大金持ちになったでござる。お化粧は、これから練習するでござる」
「火星にダイヤを換金してくれる所があるのか?」
「街に宝石商があったでござる。四井菱友銀行火星支店もあったので、100億円貯金したでござる」
「銀行もあったの?」
「あったでござる。拙者は、もうセレブでござる」
などと、2人が話していると、屋台に銅鬼とパクチーがやって来た。
「あなた達は誰ですかぁ?お父タマは?」
見知らぬ2人が、屋台の店番をしているので、パクチーが尋ねて来た。
「拙者は虎之助でござる、コイツはアホのアキレス。2人とも助清社長に雇われているでござる。それで、お父タマって誰でござるか?」
「その助清っていうのが、私のお父タマよぉ」
「助清社長のお嬢様でござるか。社長は強そうな部下を探しに街に行ったでござる。アトゥムという奴を倒す為に、闇の軍団を作るって言ってたでござる」
「お父タマったら、まだ、アトゥムを倒すことを諦めて無かったのぉ」
パクチーはガッカリした。せっかく親子で、平穏に暮らせると思っていたのに。
「拙者と、このアホのアキレスも、闇の軍団に入ったでござる」
「俺は、お前と違って殴られて無理ヤリ入れられたんだ」
誤解されないように、言い訳をするアキレス。
「もう、お父タマったら!闇の軍団なんて、今すぐ解散よ!」
パクチーは、怒っている。
「解散という事は、拙者のお給金も無しでござるか?」
「そんなの、無しよぉ」
「じゃ、もう、拙者は家に帰るでござる。ただ働きは、しないでござる」
「俺も帰ろう。って、どうやって地球に帰るんだ?」
アキレスは、地球に帰ろうとしている虎之助に、方法を聞いてみた。
「街の空港に、関西国際空港行きの便があったので、それに乗って帰るでござる」
「火星に、そんなのがあったのか」
「あったのでござる」
「俺も、その便に乗るぞ」
「お主は、お金を持って無いから乗れないでござる」
「地球に帰ったら返すから、貸してくれよ」
「貸しても良いけど、拙者の利息は高いでござるよ」
「お前、意外とケチだな。セレブのくせに」
「ちょっと、お嬢ちゃん。聞きたい事があるんですが?」
虎之助たちの会話を聞いていた銅鬼は、思わず尋ねてしまった。
「何でござるか」
「さっきの話は、本当ですか?」
「本当でござる。拙者の利息は、法律スレスレまで高く設定しているので、計画性が無い人は、ご利用をお勧めしないでござる」
「いや、その話ではなくて、地球に行く便があるって話ですよ」
「お主は、何者でござる?タコでは無いし、もしかして地球人でござるか」
「コイツは地球の鬼だ!俺には、コイツから闇のオーラが見える」
銅鬼はアキレスに、身元を的確に言い当てられた。
「実は、そうなんです。鬼ロボっていう奴に、火星まで飛ばされて来たんです」
「鬼ロボは、拙者が倒したでござる」
「鬼ロボを倒した。まさか君はDSP[デビルスペシャルポリス]の転生者で、金鬼と銀鬼を倒した娘さんでは?」
「金鬼も銀鬼も、拙者が倒したでござる」
ーーこんな所で、兄たちの仇と出会うとはーー
「それで、本当に地球に帰る便があるんですか?」
「街の空港に、関西国際空港行きの便があるでござる」
ーーそれが聞けたら、もう遠慮することは無い。兄たちの仇を討たせてもらうーー
「俺は、金鬼と銀鬼の弟である銅鬼だ。勝負してもらうぞ小娘!」
銅鬼は、虎之助に向けて剣を構えた。
「なにしてるの、ダメよ銅鬼。こんな可愛らしい女の子に剣を向けるなんてぇ」
パクチーが、慌てて止に入る。
「しかし、パクチーさん。この娘は兄たちの仇なんです」
「仇というと、お兄様たちは殺されたんですかぁ?」
「いえ、この娘との戦いに敗れて、今は岡山県で元気に暮らしています」
「じゃ、別に仇と言うほどでは無いですぅ」
「そう言われれば、そうなんですが。どうしても、この小娘とは決着を付けたいのです」
銅鬼の訴えに押されてパクチーは
「銅鬼が、こう言ってますが、どうしますぅ?」
と、虎之助の意見を聞いて来た。
「別に良いでござるよ。このアキレスに勝てたら、拙者の相手をしてやるでござる」
虎之助はアキレスを、銅鬼の前に突き出す。
「えっ、なんで俺が?」
アキレスは、訳がわからないという顔をして、戸惑っている。
「ごちゃごちゃ言ってないで、この鬼を倒すでござる」
「まあ、鬼を倒すのが俺の仕事だから良いんだけど。なんで俺が、お前より格下扱いになってるんだ?」
「お主が、拙者より格下だからでござる」
「そんな訳ねえだろ!俺の方が上だろ」
アキレスはキレかけている。
「お主は、格下のザコ助でござる」
「なんだと、このチビ助!」
「拙者はチビじゃないでござる!チビって言う奴がチビでござる!」
「俺もチビじゃねぇよ!っていうか、お前の言ってる事は根本的に変だぞ」
「ちょっと、お前ら!俺は、その小娘と戦いたいって言ってんだろ!」
虎之助とアキレスが言い争っている間に、銅鬼が割って入ったが
「テメエはすっこんでろ!」
「お主は鬼臭がキツいから、あっちに行ってて欲しいでござる」
と、2人にボロカスに言われてしまった。
「俺に鬼臭なんかあるか!ブッ殺してやる!!」
ブチキレた銅鬼が殴りかかって来る。
バキッ!
が、反対にアキレスに殴られて、倒れてしまった。
「俺のアキレスパンチは無敵だ」
しかし、勝ち誇っているアキレスに対して、パクチーが睨みつけている。
「よくも、私の友達を殴ったわねぇ」
ーーヤバい!太陽系暗黒大魔王の娘の友人を殴ったのはマズかったかーー
銅鬼を介抱しているパクチーを見て、焦るアキレスであった。
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