第102話 拙者が破壊神でござる
文字数 2,150文字
鬼塚は、チェルノボーグの仲間になったダークエルフを見ながら
「おい、ポリヤコフ。お前の能力のせいで、こっちが不利になってへんか?」
と、ポリヤコフに聞いた。
「おかしいなぁ、俺の能力は自分に最も有利な異世界に移動する事なんだけどな」
不思議がるポリヤコフを、悪魔とダークエルフが殺意を込めた視線で睨みつけていた。
「早くアイツらを殺すでござる」
ダークエルフがチェルノボーグを急かしている。
「いや、君が先に行けよ」
しかし、チェルノボーグはダークエルフの事を、ウザがっているようだ。
「拙者がリーダーだから、お主が先に行くでござる」
ダークエルフがムチャ振りをし出した。
「なんで、仲間になったばかりの君がリーダーなんだよ」
当然であるが、納得がいかないチェルノボーグ。
「お主がザコだからでござる」
ロシア最強の破壊神であるチェルノボーグは、生まれて初めてザコと言われた。
「言っておくが、俺は君より100倍は強いぞ」
チェルノボーグも言い返す。
「お主はキング・オブ・ザコでござる」
悪びれないダークエルフ。
「俺はロシア最強の破壊神だぞ」
「拙者の方がロシア最強の破壊神でござる!」
ムキになって、ムチャを言い出すダークエルフ。
「いや、君はロシア人でも破壊神でも無いだろう」
「もう、うるさい!行かないなら、お主を殺すでござる」
ガブッ!
ダークエルフがブチ切れて、チェルノボーグの内モモに噛み付いた。
「痛てっ!そんな所を噛むんじゃない」
「うるさい、死ね!」
さらに強く噛み付くダークエルフ。
「アイツら、揉めだしたぞ」
ダークエルフたちの様子を見ていたボルデ本山が言った。
「そうか、わかったぞ。あの娘を仲間にした方が不利になるんだ」
ポリヤコフは、なんとなく納得した。
「やめないか、コイツめ」
ボカッ!
チェルノボーグがダークエルフを、ぶっ飛ばした。
「痛いでござる」
痛がるダークエルフ。
「言っただろ、俺は君の100倍強いんだ」
「拙者より100倍強いのなら、母星から仲間を呼ぶでござる」
ダークエルフは腕時計型の通信機で、応援を呼ぼうとしている。
「母星って、君は地球人じゃなかったのか?」
「拙者たちダークエルフは、惑星スヴァルトの出身でござる」
「ウソだ。さっきまで、ロシアの破壊神って言ってたじゃないか」
「本当はスヴァルト星人でござる!応援を呼んだから、もうすぐ三日月型の巨大宇宙船で1000人のダークエルフが来るでござる」
ダークエルフは自慢げである。
「そんなに来るのかよ」
さすがのチェルノボーグも嫌そうな顔をした。
「さっそく来たでござる」
なんと、本当に空から宇宙船がやって来て、ダークエルフの側に着陸した。
しかし、三日月型の巨大宇宙船ではなく、自動車ほどの大きさのアダムスキー型UFOである。
ガチャ
UFOの扉が開き、中から2人の猿人が降りて来た。
「あれっ、呼んだのと違う人が出て来たでござる」
不思議がるダークエルフ。
どうやら、思っていたダークエルフが1000人ではなく、知らない猿人が2人だったようだ。
「人というより猿じゃん」
チェルノボーグが突っ込む。
「我々は、宇宙猿人ゴリラとマーだ。呼んだのは君か?要件はなんだ」
宇宙猿人がダークエルフに聞いてきた。
「コイツをやっつけて欲しいでござる」
ダークエルフは、チェルノボーグを指さしながら答える。
「なるほど、わかった。よしマーよ、行け!」
「了解しました、ゴリラ博士」
宇宙猿人マーはチェルノボーグにむかって、強烈なパンチを打ち込む。
ドスッ!
「ぐはっ」
かなり効いたようで、チェルノボーグは苦しんでいる。
「スキあり」
と、珍しく本当のスキを付いて、ダークエルフが槍をチェルノボーグの胸に突き刺した。
「ボゲっ」
口から血を吐くチェルノボーグ。
「とどめだ!」
マーの上段蹴りがチェルノボーグの後頭部を狙う。
「おのれら!」
しかし、チェルノボーグは蹴りを右手で受け止めると、両目から熱光線を出してマーに反撃した。
「アチい!」
熱光線が直撃したマーが、逃げ帰って来た。
「お前ら許さんぞ。俺は破壊神だ、ロシア全土を破壊しつくしてやる」
胸に刺さった槍を抜きながら、チェルノボーグは激怒している。
「ロシアを破壊するのは拙者でござる!」
ダークエルフがゴネ出した。
「俺がロシアを破壊するんだ、死ね小娘!」
ボゴッ!
チェルノボーグの怒りの鉄拳がダークエルフの腹部にヒットした。
「痛いでござる」
お腹を抑えて苦しむダークエルフ。
「もう許さないでござる、お主は魔界に送り返すござる」
ダークエルフが呪文を唱えだす。
すると、チェルノボーグの足元の地面がドス黒く変化して、チェルノボーグを飲み込んで行く。
「うおっ、なんだこれは。身体が地面に吸い込まれて行く」
「お主は魔界に帰るでござる。心配しなくてもロシアは拙者が破壊しといてやるでござる」
ダークエルフは高笑いしながら言った。
「おのれ、俺一人では行かんぞ。お前も道連れだ!」
チェルノボーグがダークエルフの足首を掴んだ。
「こらっ!離すでござる」
ダークエルフは抵抗するが、2人ともドス黒い地面に吸い込まれて行く。
「魔界は嫌でござる〜」
ダークエルフの叫び声が遠のいて行く。
そして2人の姿は、完全に地面の中に消えていった。
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