第36話 決着でござる
文字数 3,195文字
前回から引き続き、岩法師と狂四郎は、ライアンとマーゴットを相手に戦っていたのだが
「岩法師先生。こいつら何かおかしくないですか?」
ライアンたちの戦い方に対して、狂四郎は疑問を感じた。
「確かに。まったく殺気が感じられん」
岩法師も同じように、違和感を持っていたようである。
どうやら、ライアンとマーゴットは、本気で戦ってはいない。
ーーそろそろ、手を抜いている事がバレたかな?だが、リンゼイ老師の個人的な動機で、俺たちまで本気で殺し合う義理は無いからなーー
ライアンとマーゴットは、リンゼイ老師への対面上、戦っているフリをしていたのであった。
「死ねジジイ!」
毒入りクロワッサンを持って、チアガール戦士ピチョリンはブラフマーに向かって行く。
「お前ごときに創造主である、ワシに傷1つ付ける事は出来んわ」
「ごたくは良いから、このクロワッサンを食べるでござる」
ピチョリンは、ブラフマーにクロワッサンを食べさせようとする。
「どうせ、また毒入りじゃろ。くらえ『悪鬼滅殺波』」
ブラフマーは、口から多量の浄化エネルギーを出した。
「ビチョー」
『悪鬼滅殺波』を、まともに受けたピチョリンは、吹っ飛んで道路沿いの喫茶店に突っ込んでいく。
「おや、姉さん。今日は良く会いますね」
喫茶店では、小太郎が相変わらずコーヒーを飲みながら、くつろいでいる。
「あのジジイ。切り刻んで、南港の魚の餌のしてやるでござる」
チアガール戦士ピチョリンは立ち上がると、すぐに走り去って行った。
「えらい、ぶっそうでんなぁ。おばちゃんコーヒーもう一杯おくれ」
喫茶店のウエイトレスは、まだ20代なのに、おばちゃん呼わばりされてしまい不機嫌そうにコーヒーのおかわりを持って来た。
「ここのコーヒーは、美味いでんなぁ。このゆで玉子は有馬温泉で作ったんでっか?」
「ウチの鍋で作ったのよ」
ウエイトレスは、うざそうに答える。
「おばちゃん、良く見と可愛い顔してんなぁ。今度、俺とデートせえへんか?綺麗な夜景が見える心霊スポット知ってんねんけど」
「そんな、不気味なとこ行かないわよ!」
小太郎がウエイトレスを口説いている頃、チアガール戦士ピチョリンはブラフマーと死闘を続けていた。
「もう、いい加減に諦めろ。創造主であるワシには勝てん」
ブラフマーは、またしても、両手から神気を放つ。
ブシャー!
「ビチョー」
またしても、ピチョリンは喫茶店まで吹っ飛ばされた。
「おばちゃん、一緒に通天閣に登れへんか?噂ではビリケンさんが居るらしいで」
喫茶店では、まだ、しつこく小太郎がウエイトレスを口説いている。
「小太郎!こっちに来るでござる」
ピチョリンは小太郎の髪を掴むと、小瓶に入っている毒を髪にブッかけた。
「うわっ!なにするんや姉さん」
無理やり店の外に引っ張り出して、ブラフマー目掛けて小太郎を高速で投げつけた。
「毒入り小太郎を、喰らうでござる!」
ガチーン!!
ブラフマーの顔面に、小太郎が頭から直撃した。
「ぐわっ。なんじゃこりゃ!」
ブラフマーは、小太郎の髪にかけていた毒が口に入ってしまい苦しみ出した。
「これも食うでござる」
ピチョリンは、無理やり毒入りクロワッサンをブラフマーの口に突っ込む。
「やめろ小娘っ」
「秘技三枚おろし!」
ズバッ!ズバッ!!
さらに、ブラフマーはピチョリンの手刀で三枚におろされた。が、しかし、3つに別れたブラフマーは、それぞれが再生すると3体のブラフマーへと変化して復活してしまった。
「愚か者が、こんな技はワシには効かぬわ」
3人のブラフマーは、同時に攻撃を仕掛けて来る。
攻撃を避けながら、チアガール戦士ピチョリンは
「ジジイが3人に増えたなら、拙者も分身の術で、3人になるでござる」
と、呪文を唱え始める。
すると、虎之助は3人へと分身して行った。
しかし、なぜか、増えた分の2人はプレアデス星人であった。
「ちよっと待て!なんで分身の術でプレアデス星人が出て来るんじゃ!普通は、お前が3人になるんだろ!」
驚いたブラフマーは、怒って抗議する。
「老いぼれの戯言は、聞かぬでござる。問答無用。プレアデス星人、あのジジイを殺すでござる」
2人のプレアデス星人が、殺人ビームをブラフマーに向けて放つ。
「クフッ」
3体のブラフマーのうち、2体が殺人ビームの直撃を受けて消え去り、一体のみとなった。
「これで残るは、お主だけでござる。プレアデス星人、とどめを刺すでござる」
「おのれ小娘が」
ブラフマーは凄まじい神気を放ったが、2体のプレアデス星人も同時に殺人ビームを放つ。
双方が互角の威力であった。
ブラフマーとプレアデス星人の中間地点でお互いのエネルギーがぶつかり合って、パワーが相殺されており、どちらも攻撃を続けたままの硬直状態となっている。
ーー今でござるーー
「火遁の術」
そのスキを付いて、ピチョリンは右手から炎を出して、ブラフマーを攻撃する。
プレアデス星人に集中しており、無防備になっていたブラフマーは勢いよく燃え出した。
「ぐわっ。まさか、このワシがこんな小娘に」
炎が全身にまわり、苦しむブラフマー。断末魔と共に、ついにブラフマーは燃え尽きた。
「やっと、ジジイをブッ殺せたでござる」
ピチョリンはプレアデス星人の側に行くと
「ご協力ありがとうでござる。お礼に、これをあげるでござる」
と、2人のプレアデス星人に、柿ピーを2袋わたした。
「ピッピッピッピッ、ピーナッツ」
と、歌いながらプレアデス星人は、宇宙に飛び去って行った。
「サヨナラでござる。クフッ」
プレアデス星人に手を振っていたピチョリンは、激しい戦いの疲労があふれ出て来て、その場でパタリと倒れ込んでしまった。
「ちよっと、ライアン。リンゼイ老師が殺られたわよ」
岩法師と戦いながら、マーゴットがライアンに伝える。
「マジかよ!まさかリンゼイ老師が負けるとはな。そうなると、ここに居る理由は無い。マーゴット、退散するぞ」
ライアンはマーゴットを連れて、急いで去って行く。
「なんじゃ、あいつらは?」
不思議そうに、岩法師が呟く。
「どうやら、やつらのボスがAカップ娘に倒されたようですね」
「なるほど、そういう事か」
ピチョリンが倒れている近くの地中から、2センチ程の小さなブラフマーが這い出てきた。
「ワシは、まだ死んでおらん。今はエネルギー不足でこんなに縮んでしまったが、復活して必ずや、あの小娘を殺してやる」
なんと、ブラフマーは生きていた。元の大きさに戻れば虎之助に復讐するつもりである。
「ううっ、なんでか知らんが頭が痛い、なにが起こったのか記憶がない」
失神していた小太郎が意識を取り戻すと、目の前に小さな生き物がいた、ブラフマーである。
「なんやこれは、食えるんかな?」
小太郎は、その生き物を摘んで口に入れると、ポリポリと食べてしまった。
「意外に歯ごたえがあって美味いな。食ったら、なぜか元気が出て来たぞ」
ブラフマーは小太郎に消化吸収され、この世から完全に消滅してしまった。
「なんか、姉さんが軽く感じるわ」
小太郎は、倒れていたピチョリンを背負って、岩法師と狂四郎と一緒に宿舎へ帰るところである。
「そいつは、もともと軽いだろ」
狂四郎は冷めている。
「いや、ちゃうねん。なんかこうパワーが付いた気がするねん」
「むにゃむにゃ、拙者は42キロでござる」
ピチョリンの寝言が聞こえた。
「やっぱり、軽いじゃねえか」
「それが、3キロぐらいに感じるんや」
「そんな訳ねえだろ」
「お前ら、虎之助は敵のボスと戦って怪我もしてるんだから、もう少し静かに運んでやれ」
虎之助の奮闘でブラフマーを倒せたことを、岩法師は理解している。
ーー創造主であるブラフマーを倒したのだ、よほど疲れたであろうーー
DSPの4人は、なんとか国際電器保安協会との死闘に勝利して、宿舎へ帰って行くのであった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)