第109話 川島VSラスプーチン
文字数 2,097文字
加藤はヘスティアたちと京都に来ており、白鬼の情報を集めていた。
「西王母に始末しろと言われたが、白鬼の目的は何なんだ?」
加藤がヘスティアに尋ねた。
「アホの加藤が知らないのも無理はないですが。太古の昔、白鬼は世界の支配者でした。おそらく闇の西王母と共に、支配者に返り咲こうとしているのです」
と、ヘスティアが加藤に説明する。
「あの白鬼が?」
加藤は、信じられないという顔をした。
「彼の本当の名はクロノスです」
「クロノスって、あのギリシャ神話に出て来る奴か?」
「そうです。一度は私たちとゼウスで倒したのですが、死んでいなかった様なのです」
ーーコイツらの言ってる事は、空想なのか現実なのか良くわからんが、とにかく白鬼を倒せば良いんだーー
「ここ京都には、ワシの知り合いの転生者が居るので、ちょっと行って情報をもらって来る。もしかしたら白鬼の居場所がわかるかもしれん」
加藤は、京都DSPの知人の所に行って、情報を聞き出そうと思った。
「その転生者の所に、俺たちも一緒に連れて行ってもらおうか」
愛想なくハーデースが言った。
「ダメだ。君ら国際電器保安協会は転生者と敵対してるだろ」
と、加藤は断った。
「敵対はしていたが、今は、そうも言っておられん。俺たちも会わせてくれよ」
大男のポセイドンも頼んで来た。
「私からも、お願いします。アホの加藤」
さらに、ヘスティアにも頼まれてしまった。
「しょうがないな、絶対にモメ事は起こさないでくれよ」
しぶしぶ、加藤は承知した。
「わかっている。クロノスさえ倒せれば、俺たちは大人しくギリシャに帰るから」
ポセイドンとハーデースが、口を揃えて言った。
その頃、ロシアでは国家戦略室の室長室まで川島が来ていた。
「久しぶりだな、ラスプーチン」
「お前は鬼塚の部下じゃねえか、俺様になんの用だ」
ラスプーチンは葉巻をくわえながら、偉そうにディスクでくつろいでいる。
「鬼塚社長を裏切ったお前を、始末しに来た」
川島は堂々と本当の目的を答えた。
「なんだと、この下っ端が!お前ごときに、なにが出来るというんだ」
と言いながらも、ラスプーチンはディスクの下にある非常ボタンを押す。
このボタンを押せば、たちまち武装した警備の者たちが、ラスプーチンの警護に来ることになっている。
「そんなボタン押しても誰も来ないぞ。お前の部下は全員、眠ってもらった」
冷めた口調で川島は言った。
「おっ、お前。ふっ、不死身の俺様を、殺せると思っているのか」
警備の者が全員、倒されたと知ったラスプーチンは焦りだす。
「殺せるとは思ってないが、永遠に封じ込める事はできる」
川島は上着のポケットから小さい壺を取り出すと、呪文を唱え始めた。
「うわっ、それは止めろや!そんな事したらアカンやろ君、しかし」
慌てて、少し関西弁が出てしまうラスプーチン。
「じゃあな、ラスプーチン」
「くそっ、ワイは封印なんかされへんで!」
ラスプーチンはディスクにしがみつき抵抗するが、川島の術の力は強大であり、壺に吸い込まれてしまった。
虎之助は小太郎、ニャン平太、武蔵を引き連れて、いつもお菓子を買っている商店街に来ていた。
「今日は、みんなで行動するでござる」
虎之助が先頭を歩いている。
「お嬢ちゃん、僕は猫缶を買って欲しいニャン」
ニャン平太は、猫缶が食べたいみたいだ。
「僕は、お菓子にあんまり興味ないかも〜」
武蔵は特に、お菓子は欲しくないようだ。
「なんや、ほんだら、お前なにしに来たんや?」
不思議がる小太郎。
「お嬢ちゃんに無理やり連れて来られたッス」
「じゃ、僕と一緒に猫缶を買って食べようニャン」
武蔵はニャン平太に誘われたが
「いや、それは遠慮しとくッス」
と、きっぱり断った。
「武蔵は付き合いが悪いんだニャン」
ニャン平太は残念そうにしている。
「あれっ、姉さん。そこ曲がっても何もないでっせ」
虎之助が路地に向かって行くのを、不審がった小太郎が聞いた。
「こっちで合ってるでござる」
なにか目的があるようで、かまわず虎之助は、路地に向かって歩いて行く。
他の3人も仕方なく着いていくと、路地の奥から強烈な冷気が流れ込んで来た。
「なんか姉さん、ここ寒いでっせ」
小太郎が寒さを訴えていると、前方に男が現れた。上品な中年紳士である。
「ここに居れば来ると思っていたよ」
男は虎之助が来ることが、わかっていたようだ。
ーーこの男は鬼じゃん。しかも、今までの鬼より桁違いに強い。このメンバーでは、とてもじゃないが勝ち目は無い。戦えば確実に全員、殺られるッスーー
「お嬢ちゃん、この男はヤバいッスよ」
武蔵は男の正体がわかったようで、虎之助の手を引っ張る。
男は夜叉であった。鬼塚がロシアから戻って来ないので、自ら虎之助の捕獲に乗りだして来たのである。
「この男は鬼神だニャン!」
ニャン平太も夜叉の正体に気が付いたようだ。
「コイツが鬼神か。飛んで火にいる夏の虫とは、この事や。俺たちの前に、のこのこと現れよって、俺がサッと殺って来ますわ」
小太郎は、いかにも、やられ雑魚キャラが言いそうな台詞を吐きながら、不用意に夜叉に近づいて行った。
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