第82話 ハリセン・ポッターと死の魔神
文字数 2,231文字
「いてッ。何さらすねん、このクソ餓鬼!」
ハリセンで頭を叩かれて怒った小太郎は、ハリセン・ポッターの胸ぐらを、つかんで殴り掛かろうとした。
「助けて!スネイプ先生」
ハリセン・ポッターは大きな声で助けを呼ぶが、特に誰も来なかった。
「おい、子供相手にムキになるなよ」
狂四郎が止めに入るが
「俺は、女子供でも容赦せえへんのや」
と、ハリセン・ポッターを離そうとしない。
「助けて!マルフォイ」
再びハリセン・ポッターは助けを呼ぶが、やはり誰も来なかった。
「可哀想だろ、離してやれ」
横で見ていた岩法師が見かねて、ハリセン・ポッターから小太郎を引き離す。
「でも、岩法師先生。コイツは何かムカつくんや」
まだ小太郎の怒りは、おさまっていない。
「大丈夫か坊主」
岩法師がハリセン・ポッターに優しく声をかけたが
「うるせー!坊主はテメエだろ、気安く喋りかけんじゃねえよ!」
と、口汚く罵られてしまった。
「なんじゃと、この餓鬼」
怒った岩法師が、ハリセン・ポッターの胸ぐらを掴む。
「助けて!ポンちゃん〜」
と、ハリセン・ポッターは叫ぶが、ポンちゃんは助けに来なかった。
「誰もやねん、ポンちゃんって。しばくぞ眼鏡小僧」
小太郎がハリセン・ポッターの頭を軽く小突く。
「さわるな!この汚れた血の貧乏人が」
またしても、ハリセン・ポッターに口汚く罵られてしまった。
「やっぱりムッチャむかつく。岩法師先生、コイツ殺ってまいましょう」
「いや、殺るのは、ちょっとダメだが、これぼどムカつく餓鬼は珍しいな」
ハリセン・ポッターの対応に、困惑する岩法師と小太郎であった。
小太郎たちがハリセン・ポッターとモメている、すぐ隣では、スヴェンヴォィトが死の魔神と対決していた。
スヴェンヴォィトが、死の魔神めがけて右手から破壊光線を発射する。
スゥー
だが、破壊光線は死の魔神に全て吸収されてしまい、ダメージを与えられない。
「ほう、少しは出来るようだな」
スヴェンヴォィトは、刀を取り出すと死の魔神に斬りかかった。
その時、死の魔神の口が大きく開き、スヴェンヴォィトに向かって何かを吸い込み出した。
「うぉ、やめろ!」
思わずスヴェンヴォィトが叫ぶ
ーーこれは、マズい。魂が吸い取られているーー
側にいたラスプーチンが、慌ててスヴェンヴォィトを、死の魔神から離そうと後方に引っ張るが
「うおおっ」
少しづつスヴェンヴォィトの魂が死の魔神に吸い取られて行く。
ーーダメだ、死の魔神の吸引力が強すぎるーー
ラスプーチンは必死に引き離そうとするが、物凄い力でスヴェンヴォィトの魂が吸われていく。
バタッ
そして、ついにスヴェンヴォィトは倒れて動かなくなってしまった。
「くそっ」
ラスプーチンは倒れているスヴェンヴォィトの瞳孔や心音を確認するが、すでに息絶えていた。
「まさか、ロマノフ議員が殺られるとは」
アンドロポプも側に来ていたようだ。
「もはやこれまでだ。ずらかるぞ」
ーー魂を完全に吸われてしまっては、もう助からんーー
スヴェンヴォィトのことは諦めて、ラスプーチンはアンドロポプに撤退を指示した。
「あの魔神は、放っておくのですか?」
「死の魔神を倒せる者など、この世にいない。この場に居れば俺たちもヤバいぞ」
アンドロポプもスヴェンヴォィトを倒す程の化物に挑む勇気はない。
「わかりました、ここは一旦引きましょう」
ラスプーチンとアンドロポプは、待たせていた車に乗リ込んで去って行った。
敵が全員いなってしまうと、鬼一の死の悲しみが虎之助を襲ってきた。
「鬼一」
虎之助は鬼一の胸に顔を埋めて泣き続けている。
そのすぐ隣では、他のメンバーが死の魔神とハリセン・ポッターの扱いに困っていた。
死の魔神が、ゆっくりとコチラに向かって来る。
「ヤバい、魔神がコッチに来るぞ」
狂四郎が、みんなに伝える。
「なんや、ごっつい強そうな奴やで」
小太郎、狂四郎、岩法師の3人は、死の魔神の不気味なオーラに押されて後さずりして行く。
しかし、死の魔神は倒れている鬼一を確認すると、納得したかの様に、ゆっくりと去って行った。
「あれっ、どっか行ってもうたで」
「おそらく、目的を果たし終えたのであろう」
そう小太郎と岩法師が話していると
「助けて!ポンちゃん」
突然、ハリセン・ポッターが大声で助けを呼んだ。
「いきなり何やねん。何度呼んでもポンちゃんは来ないで。って、ポンちゃんて誰やねん」
小太郎が、またハリセン・ポッターを小突く。
「おい、小太郎。お前が召喚したんだから、もうコイツには帰ってもらえ」
岩法師は小太郎に促した。
虎之助は泣き続けており、狂四郎は先程から倒れている鬼一の側で座り込んでしまっている。
そんな様子を見て小太郎は
「そうでんな。もう、お前は帰って良いで」
と、ハリセン・ポッターに帰るように言った。
「うるせえ、僕に指図するな!この負け組クソ人間が」
しかし、あいかわらず上から目線で罵ってくるハリセン・ポッター
「やっぱりムカつくから、コイツはシバく」
小太郎が怒ってハリセン・ポッターを殴ろうとした時
「僕、もう魔法学校に帰る」
と、急にハリセン・ポッターは歩き出した。
「お前、魔法学校に通ってたんか。それにしては、ぜんぜん魔法を使わんかったな」
小太郎は帰って行くハリセン・ポッターを見送りながら、ボソッと呟やく。
「ええと、大阪駅の7分の4番ホームは、どこだろう?」
ブツブツ言いながら、帰って行くハリセン・ポッターであった。
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