第117話 白鬼の怒り
文字数 2,089文字
ポセイドンは、三叉の槍で白鬼の腹部を貫いた。
「死ね、クロノス」
だが、突き刺したハズの槍に手応えが無い。
「ふっ、相変わらず愚かな男だ」
ニヤリと笑う白鬼。
「ポセイドン。奴は自分の身体の時空を歪めているのよ、気を付けなさい」
ヘスティアがポセイドンに注意する。
「ならば、時空ごと砕いてやる」
拳に神力を込めて、ポセイドンは白鬼に殴りかかった。
ドゴッ!
しかし、逆に白鬼に殴り倒されてしまった。
「おのれ、俺が冥界に送ってやる」
ハーデースが白鬼に向けて『冥界波』を放つ。
すかさず、白鬼は倒れているポセイドンの首を掴むと、高速で向かって来る『冥界波』に投げつけた。
バチバチバチ
激しい音と共に冥界に落ちていくポセイドン。
「ヤバい、ポセイドンを冥界に送ってしまった」
ズブッ!
焦るハーデースに、白鬼は漆黒の短刀を投げつけた。
ズブっ!
短刀がハーデースの額に刺さる。
バタ!
ハーデースは、そのまま倒れ込んでしまう。
「それは『死滅の短剣』だ。神であろうと死は免れん」
低い声で白鬼が呟く。
倒れているハーデースは、動かない。
「あれっ、2人とも秒速で殺られちゃった」
こんなハズでは、といった顔をしているヘスティア。
「言ったハズだ、我は過去の我ではないと」
ゆっくりと、ヘスティアに近づいて来る白鬼。
「調子に乗るな、バカ鬼」
ズボッ!
いつの間にか、背後に居た玄武の刀が白鬼の腹部を後ろから貫く。
「油断したな白鬼。玄武は、調子にのった者を殺す事が大好きなのだ」
加藤が説明する。
「くっ」
「玄武の前で調子に乗ったのがオノレの敗因よ。言った通り、今日がお前の命日だ」
加藤は、懐から菊の花を1輪取り出すと、パキッと折った。
と、同時に白鬼の首がボトリと落ちる。
「『菊斬首』の術。終わりだ白鬼」
ブシュー
勢いよく白鬼の胴体から血が吹き出す。
「てめえも調子にのるな」
玄武は袖から大量に飛ぶ亀を出して、加藤を襲わせた。
「しまった、玄武の前で調子に乗ってしまった」
慌てて逃げ出す加藤。
「お前ら、皆殺しだ」
玄武は、亀を出し続けている。
「ちょっと待ってよ」
亀を嫌がって、ヘスティアも加藤に続いて逃げだした。
加藤とヘスティアが屋敷から出ると、庭に犬を連れた女性が立っていた。
「何をしているのですかアホの加藤。白鬼にトドメは刺したのでしょうね?」
女性は西王母であった。
「あれっ、西王母さん。アンタは貧血で倒れてたのでは?」
驚く加藤とヘスティア。
「あのぐらいの出血は、どおって事ないです。レッドブルを飲んだら、すぐに治りました」
西王母は自慢げに、レッドブルの空き缶を加藤に見せる。
「とりあえず、白鬼には重症を負わせたのですが、式神の玄武が暴走したので退避して来たのです」
現状を報告する加藤。
「自分の式神もコントロール出来ないとは、とんだヘボピッチャーですね」
「いや、ワシはピッチャーでは無いですよ」
「アナタみたいなポンコツ術者が、玄武の様な高度な式神を操れる訳ないでしょ」
「でも、相手が鬼神ですので、最強の式神を出さないと」
「言い訳は聞きません。私が白鬼にトドメを刺して来ます」
と、西王母が屋敷に入ろうとした時
「よくも、やってくれたな加藤」
血まみれの白鬼が屋敷から現れた。
首は元通りに付いており、恐るべき回復力である。
「キャッ!ちょっと、ビックリするじゃない、いきなり血まみれで現れたら、柴咲コウが恐がるでしょう」
西王母は、柴犬の柴咲コウを庇いながら怒っている。
「お前は西王母。そうか、コイツらは、お前の差しがねだったのか、妙な組み合わせだと思っていたが」
白鬼は、なぜヘスティアたちが加藤と一緒にやって来たのかを理解した。
「そうよ、それが何か?」
柴犬を撫でながら返事をする西王母。
「お前ら皆殺しだ。生きては返さん!」
白鬼はブチキレている。
「もとより、最初からアホの加藤は、生きて帰るつもりは無いわよ!」
言い返す西王母。
「いや、ワシは一応、生きて帰るつもりなんですけど」
西王母の言葉を訂正する加藤。
「何ぬるいこと言ってんのアホの加藤、アンタは死ぬ気でやりなさい!」
何故か加藤は西王母に怒られた。
DPSの宿舎では、夜叉を倒した件を小太郎が自慢していた。
「という訳で、俺の空手チョップが、鬼神の首の骨をブチ折ったんや」
「なんか、初めに聞いた時と倒し方が変わってないか?」
狂四郎が疑問に思って尋ねた。
「間違えた。俺のウエスタン・ラリアットでヘシ折ったんやった」
小太郎は、言い直した。
「それはプロレス技だろ」
突っ込む狂四郎。
「もう一人の鬼神も殺すでござる」
その横で虎之助が、きつねうどんを食べている。
虎之助は白鬼も殺すつもりのようだ。
「お嬢ちゃん。この前は、たまたま勝てたけど、鬼神の強さは半端じゃないスヨ」
と、虎之助と一緒に、うどんを食べていた武蔵は弱気であるが
「一人殺るのも、二人殺るのも同じでござる」
虎之助は、不敵な笑みを浮かべた。
ーーこのお嬢ちゃん。台詞が殺人犯みたいで、怖いッスーー
日本一の剣豪である武蔵であるが、虎之助には少し引いてしまうのであった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)