第147話 南港での決戦
文字数 1,772文字
加藤が、虎之助が開けた空間の裂け目を調べていると。
「アイツら、別次元に行っちゃったけど大丈夫ですかね」
岩法師が心配そうに聞いてきた。
「相手は士会鬼だ、大丈夫じゃないだろう」
返事をしながらも、加藤は裂け目を見ている。
しばらく裂け目を眺めていたが
「この裂け目だが、少しづつ閉じ始めている。我らも行ってみよう」
と、加藤は決断した。
「別次元なんかに行って帰って来れますか」
狂四郎が心配そうに尋ねたので
「お前には恋人の桜田刑事がいるからな、無理しなくて良いぞ」
岩法師が気を使って言ったが
「僕は彼女が7人いるけど行くッスよ」
そう言うと、武蔵は迷わず裂けめに入って行った。
「武蔵が行くなら俺も行く」
狂四郎も決心した。
結局、残った者は全員、空間の裂けめに入って行くのであった。
虎之助と小太郎に、カッパ星人だと決めつけられた士会鬼は、当然の事ながら怒って否定している。
「なんかアイツ、違う言って怒ってまっせ」
小太郎が不思議そうな顔をするので
「カッパ星人は、正体がバレるとブチ切れるのでござる」
虎之助がカッパ星人の説明をするが、信憑性は薄かった。
「なるほど、それで怒ってるんやな」
アホなので小太郎は、すぐに納得する。
「カッパ星人は、自分の正体を知った者は殺すでござる」
「じゃ、俺らは殺されますやん」
「殺られる前に殺るでござる」
虎之助が右手を高く上げると、黒い木刀が現れた。
「これは邪馬台国で作られた、邪悪な者を退治する木剣でござる。これで、あのカッパ星人を殺すでござる」
虎之助は木刀を構えて、士会鬼に斬りかかっていく。
「そんなに木刀が、ワシに通用するとでも思っているのか」
士会鬼は鋭い爪を伸して反撃する。
スパッスパッ!
木刀は、士会鬼の爪で細かく切り刻まれてしまった。
「ありゃ、やっぱり木製じゃダメですやん」
「駄目でござるね」
「姉さん。そのの木刀、ホンマに邪馬台国で作られたんでっか?」
小太郎は疑っている。
「実は昨日、拙者が拾って来た木で作ったでござる」
虎之助は照れくさそうに答えた。
「アホですやん」
小太郎も、さすがに呆れている。
「拙者は、アホなのでござる」
さらに虎之助は、自分でも呆れていた。
2人が呆れていると、士会鬼が虎之助の首を狙って攻撃して来た。
「死ね、小娘」
ズバッ!
何かが斬られた音がして、小太郎の顔に大量の血が飛び散った。
「ねっ、姉さん」
ーー目に血が入って何も見えへん。まさか、姉さんが殺られたんじゃ。でも、まあ死んだのなら仕方あらへん、世の中から悪魔が1人減って平和になったっちゅうこっちゃーー
などと、小太郎は勝手な想像をしながら、顔にかかった血を拭って、なんとか目を開けて見た。
すると意外な光景が目に入った。
士会鬼の首が虎之助の手刀で切り落とされており、加藤が刀で士会鬼の心臓を貫いている。
ズボッ!
さらに武蔵が、首の無い士会鬼の身体を、縦に真っ二つに切り裂いているところであった。
だが、士会鬼の回復能力も凄まじく、すぐに再生して来ている。
「とどめでござる」
虎之助の両手から、大量の暗黒闘気が士会鬼に向かって放たれた。
暗黒闘気に身体を包み込まれ、士会鬼は黒く変色して行く。
「うぐっ」
さすがに士会鬼もダメージが大きいようで、動きが止まった。
ーー殺られたのは士会鬼の方かいな。さすがに姉さんは、しぶといなーー
「小太郎、大丈夫か?」
岩法師が目の前に来ていた。
「大丈夫やけど、皆んな来てたんや」
岩法師の後ろに狂四郎もいる。
どうやら、空間の裂けめを通って、全員が南港に着いたようだ。
「ああ、だが油断するな」
加藤は士会鬼に刀を向けたままである。
「奴は数万年前から、闇の世界を支配している化物ッス。暗黒闘気ぐらいでは倒せないッスよ」
武蔵も戦闘態勢を解かない。
「意外と、もう死んでるんじゃないかな」
うかつにも狂四郎が、士会鬼に近づいて行くので
「狂四郎、下がれ!」
加藤が下がるように言った。
「いや、もう死んでるって」
狂四郎はアホなので、全く警戒していない。
「いいから下がってろ!」
加藤が怒鳴る。
「ちょっと触ってみよう」
狂四郎は、動かなくなった士会鬼に触れてみた。
「やっぱり死んでるよ」
振り向いて笑顔で報告する狂四郎。
その瞬間。突然、士会鬼が動き出し、狂四郎に襲いかかった。
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