第133話 3人の鬼神
文字数 2,099文字
「本山はんの仇は、俺がとる!」
立ち上がった小太郎は、呪文を唱えだした。
すると、全裸であった身体に和風の鎧がまとわれ、右手には日本刀が現れた。
「『完全武装の術』攻撃力と防御力を最強レベルにする必至の術や、今の俺は無敵やで」
小太郎は絶対的な自信を持って、山椒鬼に突っ込んで行った。
「なんだ、このアホそうな雑魚は」
山椒鬼は、小太郎を軽く叩く。
パチン
「るへ〜」
勢いよく、小太郎は吹っ飛んで行った。
「おのれ、よくも小太郎を」
加藤が山椒鬼に斬りかかる。
ガキッ
しかし、刀の方が折れてしまった。
「刀など、俺には通用しないぞ」
山椒鬼の手刀が加藤を襲う。
ガシッ
その手刀をケヴィンが受け止めた。
「お前は俺が殺す」
怒りに満ちた目で、ケヴィンは山椒鬼を睨みつけた。
ケヴィンと加藤が山椒鬼と戦っている間に、武蔵は燕鬼と死闘を繰り広げていた。
「この武蔵を舐めてもらっては困るッスよ」
武蔵の二刀流が燕鬼の首を狙うが
ガキッ
鋼のように硬い燕鬼の腕でガードされてしまった。
ーーさすがに鬼神を相手に、一人ではキツいッスね。お嬢ちゃんは何やってんスカーー
武蔵が、虎之助が変身したポピノヒーの姿を探すと
「おばあちゃんの口は、どうしてそんなに大きいの?」
「それはね。お前を食べるためだぁ」
ポピノヒーは金色夜叉が、思いのほか不評であったので、もっとポピュラーな『赤ずきんちゃん』の一人芝居を始めていた。
「お嬢ちゃん!加勢して欲しいッス」
大きな声で武蔵が頼んだ。
「ハッ!」
ーーまた誰も見てないでござるーー
ポピノヒーは、やっと自分の芝居を誰も見ていない事に気がついた。
「こうなったら、あの鬼神を半殺しにして、拙者の芝居を強制的に見せるでござる」
と、気持ちを切り替えて山椒鬼に向かって走り出した。
「お嬢ちゃん。そっちじゃなくて、こっちッス」
武蔵は、燕鬼では無く山椒鬼に向かって行くポピノヒーを呼び止めるが
「あの鬼神に、芝居を見せるでござる」
かまわず、ポピノヒーは山椒鬼に向かって行く。
「そっちじゃなくて、こっちを援護してくれッス!」
武蔵が叫ぶ。
「仕方ないでござるね」
ポピノヒーは呪文を唱えて、新たな魔人を召喚すると、武蔵の援護に向かわせた。
「加勢に来たニャ。あの鬼を倒せば良いのかニャ」
ポピノヒーに召喚された魔神が武蔵の元にやって来た。
「来てくれて助かるけど、あんたは何の魔人なんスカ?」
「僕は元々、炎の魔人だったけど、フレイム豚の助に代わってくれと頼まれて、氷の魔人になった『コールド猫座右衛門』ですニャ」
「そういえば猫みたいな顔してるッスね。氷の魔人なら冷気で鬼神をやっつけて欲しいッス」
「わかったニャ」
コールド猫座右衛門は、両手を突き出し冷気を出そうとしたが
「やっぱり冷気は出ないニャ」
冷気は出なかった。
「出ないじゃん」
武蔵は不満げである。
「でも炎なら、いくらでもだせるニャ」
コールド猫座右衛門の両手から、恐ろしいほどの炎が放出されて燕鬼を包みこんだ。
「暑い!こりゃたまらん」
鬼神である燕鬼も、さすがにダメージがあるようだ。
「お前ら、許さんぞ!」
怒った燕鬼の身体に無数の電流が走り、武蔵とコールド猫座右衛門に雷のような電撃で攻撃して来た。
バリバリバリ
「フギャー」
武蔵は、かろうじて避けたが、コールド猫座右衛門は電撃をまともに受けてしまった。
「大丈夫っすか?」
「ダメだニャ、もう死ぬニャ」
かなりのダメージが有るようだ。
「とどめだ!」
バリバリバリ
またしても、燕鬼の電撃がコールド猫座右衛門に直撃した。
「フギャー」
「大丈夫っすか?」
「ダメだニャ、もう死ぬニャ」
コールド猫座右衛門は、ふらつきながら、やっと立っている状態である。
「俺の電撃を2回も受けて、まだ立っているとはタフなヤツだ。だが、これで終わりだ」
バリバリバリ
「フギャー」
コールド猫座右衛門は、3度目の電撃を受けてしまった。
「大丈夫っすか?」
心配する武蔵。
「もうダメだニャ、死んでしまうニャ」
と言いながらも、なんとか立っているコールド猫座右衛門。
「なんだコイツは。俺の電撃を3度も受けて立っているとは、ほんとに人間か?いや、あの猫みたいな顔は人間じゃ無いな、たぶん猫人だ」
ーーこうなったら最大出力で、跡形も無く消し去ってやるーー
燕鬼はフルパワーで電撃を放つ。
バリバリバリ
「フギャー」
避けようともせず、またもや直撃するコールド猫座右衛門。
「どうせ、大丈夫ッスよね?」
いい加減に、心配するのに飽きて来た武蔵。
「大丈夫な訳ないニャ!」
と言いつつ、コールド猫座右衛門は、ポケットからアイコスを取り出して、平然と吸い始めた。
「何故だぁー!なぜコイツは死なないんだぁー!」
いくら攻撃してもコールド猫座右衛門が平気なので、頭を抱え出す燕鬼。
スパー
リラックスした表情でアイコスを吸いながら
「悪いが兄ちゃん、コーヒー買って来てニャ」
と、コールド猫座右衛門は、100円玉を武蔵に渡そうとしたが
「今は鬼神と戦闘中で、コーヒーなんか買いに行ってる場合じゃないッス」
当然、断わられてしまった。
「じゃ、肉まん買って来てニャ」
「嫌っス」
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