第141話 士会鬼
文字数 2,264文字
DSPのメンバーは、河原町に住む士会鬼を倒しに行くため、京阪電車に乗っていた。
ただし、左近だけは小学校に行っており、不参加である。
「なんでか最近は、電車移動が多いでんな」
小太郎は不服そうである。
「仕方ないでござる。加藤がDSPの予算をギャンブルに使い込んだから、もう、お金が無いのでござる」
虎之助が、大阪DSPの金銭事情を説明した。
「そりゃ、酷いでんな」
虎之助の話を信じている小太郎。
「あとは、岩法師が毎月のように、DSPのお金で裸祭りを開催するので、借金まみれなのでござる」
「そりゃ大変や。俺らの給料は、ちゃんと出るんやろか?」
バカなので、何でも信じる小太郎。
「今月の小太郎の給料は、うまい棒2本でござる」
「ええっ!うまい棒2本やったら、生活が、カツカツですわ」
「拙者も、ギリギリでござる」
などと、2人が話していると
「お前ら、いい加減にしろよ。デタラメばっかり言いやがって、ワシはギャンブルなんかしないぞ!」
「拙僧が、裸祭りを開催する訳ないだろ!」
と、加藤と岩法師に怒られてしまった。
「加藤さんも岩法師さんも、こんなバカどもは相手にしない方が良いですよ。バカが伝染ります」
冷めた口調で狂四郎が言った。
「なんやと!オノレこそ、歴史上の人物で一番バカのクセに」
バカにバカと言われて、小太郎が怒った。
「そうでござる。狂四郎こそ、人類で始めて誕生した本物のバカでござる」
虎之助も言い返す。
「お前らムチャクチャ言いやがって。もう許さん!」
狂四郎が切れた。
「コラ!お前ら、止めんか。電車には他のお客さんも乗っとるんだぞ!」
しかし、岩法師に怒られてしまった。
「すんまへん」
「すいません」
素直に謝る、小太郎と狂四郎であるが
「ほんとに、バカの相手は疲れるでござる」
全く悪びれていない虎之助。
ーークッ、こいつ一番バカのクセに。だが、電車内で暴れられたら困るーー
と思い、グッと我慢する岩法師であった。
一同が河原町に着くと
「加藤さん。僕たちが京都に来ることは、京都DSPの連中には知らせてるんスか?」
と、武蔵が心配そうに聞いてきた。
「一応は伝えてあるが、奴らの事だから、どう出るのか分からんな」
加藤も京都DSPの協力は必須だと思っているが、動いてくれるかどうかは分からない。
とりあえず、羅刹に聞いていた通りの道順を進んで行くと、一軒のやや大きな一戸建て住宅たどり着いた。
表札には堂々と『士会』と書いてある。
「ココのようだな」
加藤は玄関のインターホンを見つめている。
緊張して、ベルを押すのを、ためらっていると
ピンポーン
と、玄関のベルが鳴った。
いつの間にか虎之助がベルを押していた。
「こら、虎之助。勝手にベルを押すなよ」
「押さないと、誰も出て来ないでござる」
「甘いぞ、虎之助。奴のことだから、もう我々が来てる事など、とっくにバレとるわ」
「防犯カメラも付いて無いのに、バレる訳ないでござる」
「いや、バレてるって」
「バレないでござる!」
「うるさいぞ!お前らヒトの玄関先で、何やってんじゃ!」
加藤と虎之助が言い合いをしていると、玄関から士会鬼が出て来て、怒鳴りつけて来た。
「あっ、すいません。コイツが勝手にチャイムを鳴らすから」
急に怒鳴られたので、驚いて咄嗟に加藤が弁明する。
「お主が、さっさと押さないから、変なジジイに怒られたでござる」
虎之助は、加藤のせいにしている。
「おや、お前は見たことがある顔だな」
士会鬼は、加藤の顔をマジマジと見た。
「コイツは、お年寄りを騙してお金を巻き上げる、カルト教団の勧誘員でござる。千円の壺を100万円で売るでござる」
虎之助が、士会鬼に加藤の説明をする。
「こいつは、そんなに悪い奴なのか?」
士会鬼が聞いてきた。
「全国で指名手配されているので、見覚えがあったのでござる」
「そうじゃったのか」
士会鬼は納得している様だ。
「それで、お嬢ちゃんは、どなたかの?」
「拙者は、ビリでヤンキーだけど、一流大学を目指しているビリギャルでござる」
「なるほど、君がビリギャルか」
士会鬼は少し考えてから
「じゃが、本当はDSPの加藤とその部下じゃろ。お前らごときで、ワシを倒せるとでも思ったか!」
と、正体を見破られてしまった。というより、最初から分かっていた様であった。
「違うでござる。拙者たちは、この辺りに変なオジサンが出るとの通報を受けて、調査しているFBIの捜査官でござる」
まだ、正体を隠そうとする虎之助。
「FBIが変なオジサンの捜査で京都まで来るわけないじゃろ」
しかし、士会鬼に突っ込まれてしまった。
「もう、バレてるから諦めろ虎之助」
加藤が虎之助を諭す。
「バレてるのでござるか?」
「完全にバレとるぞ」
念押しする加藤。
「ならば、致し方ない。我らの正体を知った者は、死んでもらうでござる」
虎之助は刀を抜いて士会鬼に向けた。
「その悪者みたいな台詞は止めろ」
加藤が注意する。
「このジジイには、口封じのため、死んでもらうでござる」
「口封じって、何を封じるんだ。ワシらは何も悪い事してないぞ」
「お主の顔が、国家反逆罪でござる」
「ワシ顔は普通だバカ者」
「普通では無いでござる、その顔は違法でござる」
などと加藤と虎之助が言い合っていると
「加藤はん。さっきの爺さん、呆れて家に戻って行ったで」
「なんだと」
「ホントでござるか」
小太郎の言うとおり、士会鬼は玄関を締めて家の中に戻ってしまっていた。
戦う以前に締め出しをくらってしまい、早くもピンチを迎えるDSPのメンバーであった。
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