第124話 ゲス星
文字数 1,886文字
「みんな喜ぶぞ」
安倍康晴が、一人の男を連れてDSPの宿舎にやって来た。
「こんにちは、安倍さん。そちらの方は、どなたですか?」
玄関まで、岩法師が出迎えた。
「ほら、この前に言ってた、顧問の代理をしてくれる人だよ。果心居士さんだ」
ーーそういえば、以前に安倍さん、そんな事を言ってたな。夜叉や羅刹の件ですっかり忘れていたーー
「岩法師です、よろしく」
とりあえず挨拶したが、続けて
「それが、加藤さんが戻って来たんですよ」
と、バツが悪そうに言った。
「なんだって!」
ーー加藤さんが消息を断ったと聞いて、急いで京都から果心さんを連れて来たが、遅かったか。いや、しかし人員は多いほうが良いはずだーー
安倍は気を取り直すと
「とりあえず、中で話をしましょう」
果心居士を、リビングまで案内していく。
リビングでは、狂四郎と左近がくつろいでいた。
「やあ、君たち。この方は果心居士さんだ」
「はあ、よろしく」
2人は、よく事情がわからずに返事をする。
「他のメンバーは、どこに居るんだ?」
安倍が岩法師に尋ねた。
「加藤さんが皆んなを引き連れて、羅刹という鬼神を探しに行ってるんです」
「なにっ。今、羅刹と言ったか!」
果心が初めて口を開いた。
「はい、言いましたが」
「奴が大阪に来ているのか?」
「ウチのメンバーの一人が、昨日、羅刹に襲われたらしいんです」
岩法師が説明する。
「加藤は、何人連れて行ったんだ?」
「ええと、虎之助に小太郎、武蔵の3人です」
「武蔵というと、あの宮本武蔵か。だが、武蔵がいるといっても、そんな少人数では、羅刹には勝てんぞ」
果心は自信を持って断言する。
「あと、DSPのメンバーでは無いのですが、ボルデ本山という魔法使いも助っ人として同行しています」
「なんじゃ、その怪しい奴は」
果心は、呆れた様子で岩法師を見つめた。
「ここで、羅刹が襲って来たでござる」
虎之助たちは、加藤に連れられてアメリカ村まで来ていた。
いつもの、ライアンたちの溜まり場である。
「なるほど、臭うな」
加藤の鼻には、何か臭いがするようだ。
「それは、このタコ焼きの臭いではござる」
虎之助は、ライアンが食べているタコ焼きを指さした。
「なんだ、タコ焼きの臭いか」
ガッカリする加藤。
「姉ちゃん、俺とキツネ狩りに行けへんか」
いつの間にか、小太郎がマーゴットをデートに誘っている。
「行かないわよ。キツネが可哀想でしょう!」
いつも通りマーゴットに断わられた。
「また、お前か。マーゴットが嫌がってるじゃないか、いい加減に諦めろ」
ライアンにも咎められた。
「うるせい!俺は彼女が欲しいんや!」
小太郎がキレた。
「お前はアホだから無理だ」
ライアンにアホと言われてしまった。
「なんやと、このアメリカンサイコ野郎」
言い返す小太郎。
「お前だってジャパニーズ狂人だろ」
「おいおい、こんな所で喧嘩はやめろよ」
2人の様子を見かねたアンドロポプが止めに入った。
「テメエは黙っとけや。ロシアン・キング・オブ・ゲス人間が!」
アンドロポプにも暴言を吐く小太郎。
「なんだと!この、彼女いない歴イコール年齢の、童貞クズ日本人のクセに」
グサッ!
「くふっ」
アンドロポプの言葉が、小太郎の胸に深く突き刺さる。
ゴフッ!
小太郎は血を吐いて倒れた。
「おい、虎之助。小太郎と喧嘩してるアイツらは何者だ?」
加藤は、ライアンたちの素性が気になるようだ。
「拙者の舎弟でござる」
虎之助が答える。
「アイツらに小太郎が、再起不能にされてるぞ」
倒れている小太郎を見て、さすがに加藤は心配している。
「あっ、ホントでござる。小太郎、大丈夫でござるか」
虎之助は小太郎を抱き起こそうとした。
「ううっ、姉さん。俺はもうアカン。このさい、清水の舞台から飛び降りるつもりで、思いきり妥協しますわ。姉さん、アホで貧乳でも我慢しますので、セクシーな彼女が出来るまでの間だけ、俺の彼女になって下さい」
と、ありえない程の失礼な恋の告白をした。
「なる訳ないだろ!死ね、ギャラクティカ・アッパー」
バキッ!
「うへ〜」
虎之助の凄まじいアッパーカットで、小太郎は天高く吹っ飛ばされて行く。
キラッ
あまりにも高く飛ばされ過ぎて、小太郎は星になった。
その頃、宿舎では。
「岩法師のおじちゃん。昼間なのに、お星さまが見えるよ」
庭にいた左近が、空に輝く星を見つけた。
「ああ、あれは、とんでもないゲスな行為をした男が星になった『ゲス星』だな。我々、正義の味方であるDSPには縁のない者だ。それより、もうすぐ昼飯だ、中に入ろう」
「はーい」
左近は素直に、岩法師とリビングへ向うのであった。
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