第81話 闇の死闘パート5
文字数 2,212文字
「無駄だ。その男は死んだ」
虎之助を見下ろしながら、ロマノフが冷淡に言った。
「鬼一!早く起きるでござる」
ロマノフの言葉を無視して、虎之助は鬼一に心臓マッサージを続けている。
「無駄だと言っているだろう。その男は私が殺したのだから」
「お主は誰でござるか」
やっと虎之助はロマノフの顔を見た。
「私は国際電気保安協会のロマノフだ」
「あっ、このオッチャン知ってるで、アメリカ村で会った事がある。鬼一さんをやったのはオッチャンか?」
「だとしたら、どうするんだ」
「鬼一さんの仇や、死んでもらうで」
小太郎は刀を抜き、ロマノフに斬りかかる。
ガシッ
ロマノフは軽々と小太郎の刀を素手で受け止め
バキバキ
と、握り潰す。
「こんな物で私は斬れんぞ」
ロマノフは余裕の表情で小太郎に向かって行くが、突如、凄まじい殺気に襲われた。
ーーなんだと、これぼどの殺気は経験したことが無い、白鬼からのものか?ーー
しかし、先程までコチラの様子を伺っていた白鬼の姿が見えない。
ーー白鬼め、どこに行ったーー
白鬼どころか、いつの間にか他の鬼たちの姿も消えているではないか。
「お前を殺すでござる」
さっきまで鬼一を介抱していた少女が、ロマノフを睨んでいる。どうやら鬼一が死んだ事を、ようやく理解したようである。
「君のような小娘が、この私を殺すだと」
ロマノフは失笑しようとしたが、その瞬間、先程の凄まじい殺気が襲って来た。
「この殺気は君だったのか」
と、ロマノフは言った直後に
ズバッ!
少女の手刀で首を切り落とされた。
白鬼と鬼たちは、すでに闇の結界から出て京都に向かっていた。
「白鬼様、よろしいのですか。スヴェントヴィトを殺すのが今回の目的だったはずでは」
鬼の一人が白鬼に聞いた。
「目的は達成した。もはや我らが、あの場所にいる必要なし」
ーー達成したと言うが、どういう事だろう?スヴェントヴィトは、ほぼ無傷だしーー
鬼たちは、白鬼の考えが全く理解できないままである。
虎之助に首を切り落とされたスヴェントヴィトは、そのまま倒れるかと思いきや、自分で首を拾いあげて元の位置に戻してしまった。
「単純で直線的な攻撃だ、君では私を倒すことはできないな」
スヴェンヴォィトは、虎之助を含めDSPのメンバーごときに自分が負けることは無いという自信を持っている。
唯一の危険な相手であった、白鬼の居ないこの場に自分と対等に戦える者は存在しないはずであるから。
「虎之助、なにか奴はヤバいぞ」
ーーロボットでも無いのに首を斬り落とされ、平然と拾い上げるような奴は初めて見た。あの男は、ただ者ではないーー
狂四郎が虎之助に忠告する。
しかし、鬼一を殺されて逆上している虎之助には聞こえていない。
「お前は、死ぬでござる」
虎之助がスヴェンヴォィトめがけて突進する。
「愚か者が」
スヴェンヴォィトは右手から破壊光線を発射した。
「危ない!」
岩法師が虎之助を突き飛ばし、破壊光線から避けさせた。
「虎之助、ムチャするな、死ぬところだったぞ」
よろめきながら、立ち上がった虎之助は
「死んでもアイツを殺すでござる」
と、またスヴェンヴォィトに向かって行こうとする。
「やみくもに突進して行ってもダメだ。冷静になって術を使え!」
岩法師が虎之助を諌める。
そう言われた虎之助は、立ち止まって冷静に考えてみた。
「そうでござった。では召喚術を使うでござる」
虎之助は両手で印を結び呪文を唱え出した。
チーン!
すると鈴のような音が流れ、何処からともなく黒いコート羽織った細身の男が現れた。
「なぜか知らない人が出て来たけど。とりあえず、あの男を殺すでござる」
想像と違う者が現れたが、とりあえず虎之助は黒いコートの男に、スヴェンヴォィトを殺すように指示する。
「なんだコイツは?何者だ」
不用心にスヴェンヴォィトは男に近付いて行く。
ーーあの黒いコートの男、知っているぞ。奴は伝説の死神『死の魔神』だ『死光剣』の呪術と小娘の術が混じり合い、最悪の死神を呼び出してしまったんだーー
ラスプーチンは恐怖した。
「あれは死の魔神です!戦ってはダメです」
黒いコートの男の正体を知っているラスプーチンは、必死にスヴェンヴォィトを止めるが
「死の魔神だと。面白い、このスヴェンヴォィトが殺してやろうではないか」
制止を振り切り、スヴェンヴォィトは死の魔神に向かって行く。
「姉さん、えらい強そうな奴を召喚しはりましたなぁ。よし、俺も召喚してみよう」
「小太郎。お前、召喚術なんか出来たっけ?」
小太郎が召喚術を使おうとしているので、狂四郎が不思議がって尋ねて来た。
「ちょっとずつやけど、姉さんに教えてもらってたんや」
と言って、呪文を唱え出した。
すると、黒いマントを着た眼鏡の少年が現れた。右手には大きなハリセンを持っている。
「やった!出たぞ最強の魔神や」
大喜びしている小太郎であるが
「子供だし、持ってる武器がハリセンだぞ。強そうには見えないけど大丈夫か?」
狂四郎は不安そうな顔をしている。
ーーあっ、あれはハリセン・ポッターだ。あのハリセンで頭を叩かれると、物凄く良い音が出ると言い伝えられている、少年少女に大人気の伝説の妖精だーー
ラスプーチンはハリセン・ポッターの事も知っていた。
ハリセン・ポッターは小太郎の前に立つと、思いっきりハリセンで小太郎の頭を叩いた。
スッパーン!
素晴らしく良い音が、近隣まで鳴り響いた。
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