第144話 本物の鬼神
文字数 1,997文字
「あっ、あの姿は!」
虎之助と武蔵は、変化し終えた士会鬼の姿を見て驚いている。
「夜叉が変化した姿に似てるっす」
「そっくりでござる」
驚くのは無理もなく、漆黒の大きな翼を持ち、巨大な牙を生やした悪魔そのものであった。
「そっくりなのは当たり前じゃ。夜叉や白鬼は、ワシが自分に似せて造ったのじゃ」
士会鬼は宙に浮きながら言った。
「パソコン工房で作ったのでござるか?拙者も造りたでござる」
虎之助は、自分も造りたくなって尋ねた。
「そんな所で作れる訳ないじゃろ!それに、お前では絶対に無理じゃ」
しかし、士会鬼に全否定されてしまった。
「じゃ、お主は、誰に造られたのでござるか」
「ワシは誰かに造られたのでは無い。ワシこそが唯一無二の本物の鬼神であり悪魔なのである」
その言葉を聞いて、士会鬼に向かっていた暗黒兵団は、自ら出て来た地面の裂け目へもどり、地獄へと帰って行った。
「せっかく出した暗黒兵団たちが、帰って行くでござる」
虎之助は残念がっているが、他のDSPのメンバーは少しホッとした。
「当然じゃ。奴らは誰が自分たちを造ったのかを、知っておるからの」
士会鬼は恐ろしい顔で、不気味な笑みを浮かべている。
「お主の笑顔は、気持ち悪いから止めるでござる」
不快に感じた虎之助が言った。
「なんかムカつく小娘じゃな。まあ良い、まとめて全員殺してやるわ」
そう言うと、士会鬼は口から青白い炎を吐き出した。
「あの炎は、ヤバいでござる。加藤も何か口から出すでござる」
慌てて、虎之助は加藤の口を、こじ開けた。
「何も出るか!」
しかし、加藤の口からは何も出なかった。
「あちちっ」
「熱いでござる」
士会鬼の炎から、逃げまどうDSPのメンバーたち。
「おのれ!忍法『冷気滅却』」
加藤の周りから、冷気が士会鬼に向かって行く。
「その程度の冷気では、ワシの炎は防げんぞ」
士会鬼は、さらに大量の炎を出し始めた。
スパッ!
「熱いでござる!」
あまりにも熱いので、怒った虎之助が士会鬼の首を切り落とした。
「おおっ、殺ったか!」
首を切られた士会鬼を見て、加藤が身を乗り出す。
しかし
ニューッ
すぐに首が再生されてしまった。
「この姿になったワシの首を、いとも簡単に切り落とすとは、さすが闇の西王母じゃのう」
士会鬼は関心しているが、ダメージは全く無いようだ。
スパッ!
しかし、またすぐに虎之助に首を切り落とされてしまった。
ニューッ
また再生する士会鬼の首。
スパッ!
また、切り落とす虎之助。
ニューッ
再生する士会鬼の首。
ニューッ
再生する首。
「面白いでござる〜」
何度切っても、すぐに首が生えて来るので、虎之助は面白がって喜んでいる。
「面白くないわ!いい加減にしろ、バカ者」
ドカッ!
士会鬼の怒りの鉄拳が、虎之助の顔面にヒットした。
「うひゃー」
と、虎之助は派手に吹っ飛んで行く。
「よく飛んだッスね」
「そうだな、500ヤードは行ったな」
武蔵と加藤が、飛ばされた虎之助を眺めていると。
「おい、2人とも。仲間がヤラれたのに、なに関心してんだ!」
と、岩法師に怒られてしまった。
「あっ、そうだった。吹っ飛ばされたアホ娘を見てる場合じゃない」
加藤は気を取り直して
「死ね、士会鬼!」
刀を構えて、士会鬼に斬りかかる。
「ウザい雑魚が」
士会鬼は、加藤に向けて両手から大量の暗黒闘気を出した。
「うぎゃ!」
暗黒闘気が加藤を包み込んで行く。
「ヤバい、加藤さんが殺られる」
急いで岩法師が手をかざし、法力で中和しようとするが、あまりにも大量で濃密な暗黒闘気であり、加藤はドス黒く変色して行く。
「クソっ、加藤さんが死んでしまう」
焦る岩法師に
「大変だ、俺も手伝う」
狂四郎は、加藤の腹部に手を当てると、仙道で気を送り込んだ。
しかし、2人がかりでも暗黒闘気は止められず、加藤の身体を蝕んでいく。
「無駄じゃ、その男はもはや助からん」
士会鬼の冷酷な声がDSPのメンバーに突き刺さった。
「おのれっ、加藤さんの仇ッス!」
武蔵は、二刀流で士会鬼に向かって行く。
「貴様も死ね」
士会鬼は、武蔵にも暗黒闘気を浴びせる。
「なんの、二刀流『旋風斬り』ッス」
『旋風斬り』とは、2本の刀を凄まじく早く回転させ真空状態を作り、かまいたちの様に攻撃する技である。
「お前の方が死ぬッス」
ズバッ!
武蔵の技は、暗黒闘気を吹き飛ばし、同時に士会鬼も攻撃した。
「小賢しい餓鬼じゃ」
士会鬼は、術で右手に小型の槍を出現させると、超高速で武蔵に投げつける。
ブスッ
「うぐっ」
あまりにも速いスピードである為、かわす事ができず、槍は深々と武蔵の腹部に突き刺さった。
「武蔵!」
岩法師が叫ぶが、武蔵は倒れて返事がない。
「これはマズいぞ」
狂四郎は武蔵に駆け寄って行き、仙道での治療を試みるが、武蔵の反応がない。
「武蔵、しっかりしろ」
大声で狂四郎が声をかけるが
「………」
返事は無かった。
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