第12話 鬼ロボが現れたでござる
文字数 2,953文字
日本テクノロジーコーポレーションの所有するグランドでは、四天王の座をかけて牛鬼に銅鬼が、いどんでいた。
見とどけ人は黒瀬である。
銅鬼は2人の兄を虎之助に倒されてしまったので、鬼界では名門であった一族への風当たりが、急激に悪くなっていた。
一族の名誉を回復するために、どうしても四天王になる必要がある。
銅鬼は末弟であり、今までは兄たちを立てていたが、実力では自分が一番だと自負していたので、牛鬼などは、たやすく倒せると思っていたのだが、手合わせしてみると意外と強いではないか。
とくに自在に動く鋼鉄のような爪が厄介であり、スピードもパワーも想像以上である。
牛鬼の方も、最大の武器である爪での攻撃が銅鬼の硬い皮膚を、つらぬけず苦労していた。
金鬼の末弟ということで少しナメていたが、皮膚が硬いだけでなく攻撃力も半端ではない。
あの剛腕から、くり出される打撃を、まともに受けたら骨の一本や二本の骨折では、すまないだろう。
「双方ともに苦労しているな」
黒瀬からみても、ほぼ互角の試合である。
その時、バリバリッという音と共に、グランドの一角に小さな雷が落ちた。
「雨も降っていないのに、なぜ雷が?」
黒瀬が不思議がっていると、雷が落ちた場所に裸の男が膝を付いて、しゃがんでいる。
「なんだ、ありゃ?」
銅鬼と牛鬼も、その男に気づき、試合を中断して様子を伺っている。
「なぜ、裸なんだ?」
牛鬼は、なんだかこんなシーンを映画で見たことがある、確かヤバい展開になったような、と思い、警戒して後ろに下がった。
男は、ゆっくり立ち上がって周りを見わたすと、一番近くにいた銅鬼の方に歩いて来る。
「お前の服を、ヨコセ」
裸の男が銅鬼に言った。
「バカか、こいつは」
銅鬼が、あきれていると、裸の男が銅鬼の服を引っぱって脱がそうとして来る。
「なにしやがる、イカれてるのか!」
銅鬼は、おもいっきり裸の男を殴りつけた。
「いてッ!」
しかし、殴った銅鬼の方が痛がって、思わず拳をさすり出す。
裸の男は、両手で銅鬼の体を持つと、そのまま上空に放り投げる。
投げられた銅鬼は、そのまま大気圏を突破して火星まで飛んで行ってしまった。
「なに者だ?」
黒瀬が近づいて来た。
「ワレは鬼神より送ラレタ、鬼ロボである」
「鬼神からだと。ならば京都からか」
「大阪支部の責任者に会ワセロ」
「鬼神からの使者か、良いだろう会わせてやる。だが、その前に、とりあえず服を着ろ」
黒瀬は、グランドにあった適当なジャージを鬼ロボに渡しながら言った。
梅田の高層ビルの最上階では『大阪鬼連合会団体』の緊急カンファレンスが行われていた。
議長は、当然のことながら鬼塚である。
「紹介しよう、京都の鬼神より転送されて来た鬼ロボだ」
鬼神と聞いて、会議の参加メンバーに緊張が走った。
「大阪支部が、ふがいないノデ、鬼神が俺を、送り込ンデ来たのだ」
「最近はDSPの奴らに、やられっぱなしですからねえ」
年配のメンバーがボヤている。
「なんデモ、お前たちは、若い小娘に何人も倒されているソウジャナイカ」
「よく知ってますね」
若いメンバーが言った。
「鬼神の情報網を、ナメテはいけない」
「しかし、あの娘は強すぎます」
「大丈夫だ、ソノために、私が来た」
「じゃ、アンタがあの娘を殺ってくれるんか?」
鬼塚が鬼ロボに尋ねた
「まかせてオケ、私が、ソンナ小娘、秒殺シテヤル」
どうやら、鬼ロボは京都からの助っ人らしい。
「ほう、頼もしいやないかい」
嬉しそにする鬼塚。
「ところで、アンタはなぜ、裸で来たんだ?」
不思議に思っていた川島が尋ねた。
今は服を着ているが、転送された時には、鬼ロボは裸であった。
「京都から大阪への転送は、膨大なエネルギーを使うノデ、できるダケ、質量を減ラスため、裸にナッタノダ」
ーーそんなにもエネルギーを使うのなら、普通に電車で来ればいいのにーー
と、鬼ロボ以外のメンバーは思った。
「ええっと、鬼ロボには、女性型もいるのですか?」
若いメンバーが質問した。
「今は、居ナイガ、今後は、わかラン」
「お前、女の鬼ロボがおったら、どうするつもりなんや?」
鬼塚は疑問に思った。
「いえ、別に。ただ、私は女が転送してくる所を、見たいと思いまして」
「いや、見たらダメやろ」
「ダメって言われても、見たいモノは見たいんです」
「ダメなもんは、ダメや、このド助平が」
「いや、決して助平な気持ちではなく、男として本能的に見たいのです」
「世間では、そういうのを、助平と言うんや」
「いい加減にして下さい。そんなことより、鬼ロボがDSPの小娘を倒す計画を立てましょう」
バカらしい会話が続いたので、川島がキレ気味に提案してきた。
「それも、そうやな」
「じゃ、鬼ロボが銅鬼とやり合った時に、現場に居た黒瀬の意見を聞こうか」
川島が仕切り始める。
「そうですね。牛鬼と銅鬼は、ほぼ互角の試合をしていたのですが、銅鬼は割り込んで来た鬼ロボに、速攻で空高く放り投げられてしまいましたから、鬼ロボの強さは相当なモノだと思います」
と、黒瀬は証言した。
「放り投げられた銅鬼は、どこへ行ったんや?」
「おそらく、大気圏外まで飛ばされたと思われます」
見たとおり正直に答えたのだが、まわりからは、うさん臭い目で見られてしまった。
「俺の計算デハ、火星アタリまで、飛んだハズダ」
鬼ロボが冷静に言うと、会議のメンバーは皆、背筋が寒くなった。
「ごっつい力やなぁ、コイツならDSPの小娘もイチコロや」
一人、鬼塚だけが喜んでいる。
『大阪鬼連合団体』の会議は、もうしばらく続くのだが、今回はめずらしく意味ある会議であった。
焼肉屋では、虎之助と小太郎が、狂四郎の奢りで焼肉を食べていた。
「姉さん、やっぱり焼肉は美味いですねぇ」
「モグモグ、牛タンもカルビも美味しいでござるな」
「姉さん、ハラミもイケますよ」
「拙者にもハラミを、よこすでござる」
「ホルモンも、美味しいですよ」
「拙者にもホルモンを、よこすでござる」
「もうそろそろ、役に立つというのを教えろよ」
シビレを切らした狂四郎が虎之助に言った。
「ええっと、確か、仮想通貨で10万円を一億円にする方法だったでござるね」
面倒くさそうに、虎之助が答える。
「ちがうわ!」
狂四郎が突っ込む。
「では、拙者が紹介する未公開株で、儲ける話だったでござる、モグモグ」
ハラミを食べながら、虎之助が言った。
「違うって!なんで、お前が未公開株の情報なんか知ってるんだよ!」
「じゃ、必ず儲かる、元手保証の投資の話だったでござるね」
「そんな、あやしい儲け話じゃなくて、アヒルの話だよ」
「アヒルの話は、そこのカフェでタピオカミルクティーを飲んでから、するでござる」
「てめえ!いい加減にしろ!」
狂四郎がキレた。
「くらえ!新田家仙道透視術!」
狂四郎は、仙道の奥義を使って虎之助を見た。
「何してるのでござるか?」
虎之助は、不思議そうに尋ねた。
「今、透視術で、お前の下着を見ているのだが、お前のブラジャーってスポーツブラだし、Aカップしか無いじゃないか、見て損したぞ」
狂四郎は、残念がっている。
バキッ!
「くふぅ」
狂四郎は虎之助に、おもいっきり頭を殴られ、そのまま救急搬送されて、一週間ほど入院する事となった。
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