第93話 川島VSモットプール
文字数 2,371文字
鬼塚が倒れた後も、虎之助と川島は戦い続けていた。
「拙者を相手に、ここまで粘るとは、お主ただ者じゃないでござるな」
虎之助は、川島が並の鬼武者で無いことに気づいた。
「ふん、私はこれでも鬼神候補だからな」
川島は、眼鏡の位置を直しながら言った。
「お主は鬼神になるのでござるか?」
「そうだ。だが私が鬼神になる為には、そこに転がっている鬼塚社長を先に鬼神に育てあげねばならん」
虎之助は気を失っている鬼塚を見た。
「このオッサンに鬼神は無理でござる。ただのアホでござる」
「そんな事は、とっくにわかってる。だが、それが私の使命だ」
「それでは、お主も一生、鬼神には成れないでござる」
「いいや、不可能を可能にする者だけが鬼神になれるのだ」
川島が念を込めると、右手に剣が現れた。
「これは通常は鬼神だけが使える魔剣だ。だが、私にも使える」
川島が魔剣を振りかざすと、触れてもいない虎之助のジャンバーがスパッと切れた。
「やるでござるな。だが鬼神の技が使えるのは、お主だけでは無いでござる」
「なんだと、まさか君も使えると言うのか!」
驚く川島。
「鬼神の技など、いくらでも使えるでござる」
そう言うと、虎之助は呪文を唱え出した。
すると、何も無かった空間から、体の半分が機械のサイボーグが現れた。
「いや待て、鬼神はこんなサイボーグを召喚したりしないぞ」
「異次元戦士モットプールよ、その男を殺すでござる」
虎之助は川島を無視して、モットプールに命令する。
モットプールは口から破壊光線を川島に向けて発射した。
とっさに横に跳んで、かろうじて逃れる川島。
「いい加減にしたまえ、鬼神が異次元戦士なんか呼ぶわけ無いだろう!」
川島が抗議した。
「ごちゃごちゃ、うるさいでござる。お主は黙って殺されれば良いのでござる」
ウザそうに虎之助が答える。
「黙って殺されてたまるか!『魔剣十字斬り』」
川島が魔剣を十字に振りきる。
ズバッ!ズバッ!
モットプールは、あっけなく十字に切り裂かれて倒れた。
「なんだコイツは、大した事ないな。次は君だ」
川島は虎之助に魔剣を向ける。
「甘いでござる。モットプールは、その程度では死なないでござる、無敵の異次元戦士でござる」
自信ありげに虎之助はモットプールを指さした。
「なんだと」
川島が倒れているモットプールを確認すると、確かに死んでいる様に見える。
「やっぱり死んでるぞ」
「そんなはず無いでござる」
虎之助がモットプールに駆けよって調べてみると、やはり死んでるいる。
「本当に死んでるでござる。この人殺し!」
川島に向かって虎之助が叫んだ。
「いや、人殺しって言われても、君の方こそ私たちを殺すって言ってたじゃないか」
急に人殺し呼ばわりされて、川島は焦った。
「言い訳は聞かないでござる。警察に付き出して、島流しの刑にしてもらうでござる」
「待てまて、君の言ってる事はムチャクチャだぞ。そもそも、モットプールは人じゃないじゃないか」
モットプールは、どう見てもサイボーグである。
「モットプールを差別するのか、このレイシストめ!とんでもない差別主義者でござる」
ーーくそっ、なんてやり難い相手だ。もともと鬼塚社長のお守りだけでも面倒なのに、俺はツイていないーー
川島がヘコんでいると。
「人殺し大いに結構、けっこう毛だらけワシゃ前科だらけ」
と言いながら、変な男がやって来た。
「誰だ」
川島が声のする方を向くと、ラスプーチンであった。
「お前はラスプーチン。なにしに来た」
「ちょっと、その娘を借りたくてな」
と、真っ直ぐに虎之助の方に向かって行く。
「ダメだ。その娘には、私も用があるんだ」
慌てて、川島が制止する。
「じゃまだ。俺様は、その娘が必要なんだよ」
かまわず虎之助に近づいて行くラスプーチン。
「なんで必要なんだ?」
ーーラスプーチンが小娘を必要としている理由は何だ?まったく想像できないんだがーー
川島は好奇心から聞いてみた。
「ロシアで千年前に封じ込められていた怪物が復活したんだよ、退治するには、その娘の力がいるんだ」
「確か、お前ら国際電気保安協会と転生者は敵同士だろ、なんで敵の力を借りるんだよ」
「ロマノフ議員が死んだんで国際電気保安協会ロシア支部は潰れたんだ。俺も失業してしまって、今はロシア政府に雇われてる。だから、もうこの娘と敵対はしていない」
ラスプーチンは、しょうがない、といった顔をしている。
「そのロマノフ議員を殺したのは、この娘だぞ」
「知ってるさ、俺はこの目で見てたんだから。でも、この娘をロシアに連れて帰って怪物を倒すと、俺は政府の要職に就けるんだ」
「自分の出世のためか。とにかく、その娘を連れて行くのは私が先だ」
「そんなこと言っても、お前には、この娘を連れて行く力は無いだろう」
ラスプーチンは冷たく言い放った。
「なんだと、私は今から連れて行くところだったんだ。お前こそ、その娘より弱いクセに」
ムカついて、言い返す川島。
「誰が力ずくで連れて行くと言った。こっちは正当な報酬を出すんだよ」
「ええっ、報酬を出すの?」
「そうだよ。俺様は紳士だから、無理じいはしないんだ」
「お前のような乱暴な男の、どこが紳士なんだ!」
などと、川島とラスプーチンが言い争っていると
「やっと直ったでござる」
と、虎之助がモットプールを修理し終えたところであった。
モットプールは立ち上がると、再び川島に襲いかかって来た。
「うわっ、おとなしくしてると思ったら、修理してたのか君は!」
川島は慌てて魔剣で応戦する。
だが、そのスキに
「お嬢ちゃん、報酬は、はずむから俺とロシアに行こう」
ラスプーチンが虎之助の手を引いて、連れて行こうとしている。
ーーくそっ、このままでは、小娘がロシアに連れて行かれるーー
川島は、思ってもいなかったピンチを迎えるのであった。
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