第63話 鬼神の訪問
文字数 2,510文字
「いやぁ、今日は良い事をしましたな」
「女性の敵が死んでくれて、平和になったでござる」
レムリアの屋敷から、虎之助と小太郎・武蔵の3人が出て来た。
「しかし、姉さんも、あの強姦魔の被害にあってたとは知りまへんでしたわ」
「拙者も知らなかったし、まったく身に覚えが無いでござるが、あの男はヤッてたのでござるな」
「さすが、姉さん、名推理でんなぁ」
2人は、ゲラゲラと笑い出した。
「ちょっと、お2人さーん、なにが可笑しいのか、さっぱり分からないけど。それって冤罪じゃん」
武蔵が突っ込んで来た。
「なに言うでござる。あの男は、絶対に強姦魔でござる。拙者の記憶に無くて、証拠も全然ないでござるが」
虎之助が反論する。
「ええっ、そんなムチャクチャな事を言い切るって、ある意味スゲぇじゃん」
「武蔵も、やっと姉さんの凄さが分かって来たようやな」
「逆にスゲー、と思ったッス」
3人は、よくわからない会話をしながら、去って行った。
そんな3人を、少し離れた所から密かに監視している者たちがいた。
アポロンとアキレス、ペガサス、アンドロポプの国際電器保安協会のエージェントである。
「あいつら行ったな。今がチャンスだ、中に入るぞ」
アポロンの指示で、4人は屋敷に忍び込んでいった。
中に入ってみると、かなり荒らされており、2人の男が死んでいる。
「あいつら、ムチャクチャしますね」
気が優しいペガサスは、2人の遺体を直視できない。
「今は死体よりも、ゼウス様を救出する為に必要な物を探すんだ」
「そうでしたね。誰か来る前に、急いで探しましょう」
「こっちの部屋に何かのマシーンが、いっぱい置いてあるぞ」
「そこに使える物があるかも」
アンドロポプが見つけた部屋に入ってみると、いろんな機械がたくさん置いてあり、ゼウスたちを火星に送った装置も見つかりそうだ。
「たぶん、これだと思います」
ペガサスが、万年筆タイプの器具を見つけた。
「ガニメデに送った機械は、それっぽいな。地球に戻す装置は無いのかな」
アポロンは熱心に探している。
「これで、わかるんじゃないか?」
アンドロポプが、ノートパソコンに入っていた機械類のリストを見つけた様だ。
「でかしたぞ、アンドロポプ。これで、ゼウス様たちを呼び戻せる」
「クロノスや鬼どもに、反撃できますね」
アポロンとペガサスは喜んでいるが、なぜかアキレスのテンションが低い。
「どうしたんだアキレス、元気ないじゃないか」
アキレスは下を向きながら。
「俺は、一度ギリシャに帰るよ」
と、ボソッと言った。
「どうしたんだ、今から反撃するところなのに」
アポロンは不思議がっている。
「火星に行ってから、なんだか自信を無くしたみたいで、ギリシャで修行の、やり直しをしてくるよ」
アキレスは、えらく深刻そうな顔をしている。
「そうですか、それでは仕方ないですね。気を付けて帰って下さいね」
ペガサスが、少し残念そうに言った。
「おい、ペガサス。勝手にアキレスを返すなよ。こいつには、まだ、やってもらいたい事があるんだ」
アポロンはアキレスの帰国に反対している。
「そんな事を言わずに、返してやれよ」
アンドロポプもアキレスに同情している様で、アキレスの帰国に賛成のようだ。
「クソっ、1対3か。仕方ない。アキレス、気を付けて帰るんだぞ」
アポロンは、しぶしぶではあるがアキレスの帰国を認める事にした。
「ありがとう、みんな。元気でな」
アキレスが去って行く。
「アンドロポプさんって、意外に優しい所があるんですね」
ペガサスは、アキレスを庇ったアンドロポプを、意外に思った。
「俺は、元もと優しいんだが、ロシア支部の上官である悪魔司令官ラスプーチンのせいで、部下の俺たちまで悪く思われがちなんだ」
「そうだったのですか。それにしても、悪そうな名前の上官ですね」
「まあな、あんな非道な奴は見た事ないからな。非道人間世界大会で8年連続優勝している恐ろしい男だ」
「そんな人が、実在するんですか」
そう言いながら、ロシア支部じゃなくて、ギリシャ本部所属で良かったと思うペガサスであった。
日本テクロノジーコーポレーションの社長室では、鬼塚がアイコスを吸ってくつろいでいた。
ガチャ
いきなりドアが開き、川島が入って来るなり
「社長、大変です。レムリアさんが殺されました」
と、慌てて、鬼塚に伝えた。
「レムリアさんって誰や?」
鬼塚は、レムリアの事を知らないようだ。
「白鬼さんの直属の部下で、主に関西で活動している魔界人ですよ」
「白鬼さんて、まさか、あの白鬼さんか?」
「そうですよ、鬼神の白鬼さんです」
「鬼神っていうたら、白鬼さんとは違うけど、夜叉さんっておるやろ」
「鬼神の一人に、そんな名前の方が居られますね」
「俺の嫁の父親やねん」
「ええっ、そうなんですか」
「そうやで。夜叉さんの32番目の娘が、俺の嫁や」
「そんなに子供がいるんですね。まるでアラブの王族ですな」
「いや、夜叉さんは恐ろしく長生きで、奥さんも今までに20人ぐらい居てるんや。ホンマかどうか知らんけど、今年で10万28歳らしい」
「なにか、悪魔が結成したロックバンドのような年齢ですね」
鬼塚は吸い終わったアイコスを、缶の吸殻入れに入れながら、深刻な顔をして
「実は、俺の嫁が鬼嫁でな」
と、ボソっと呟いた。
「そりゃ、鬼神の娘なんだから、鬼の嫁でしょ」
「鬼族やから鬼嫁になるとは限らんやろ」
「奥さんは、どんなふうに鬼嫁なんですか」
鬼塚の嫁に、川島は興味を持った。
「まず、料理が上手いやろ。ほんで、綺麗好きなんで掃除がいき届いてるやろ。俺に優しいし、子供の教育も、しっかりしてるからなぁ」
「ちょっと待って下さい。それの、どこが鬼嫁なんですか!」
川島が、キレ気味に突っ込んだ。
「いや、でも嫁は鬼やから」
「アホですか、アンタは!」
川島がキレた。
「俺がアホかどうかは、どうでも良いんじゃ!今は嫁の話をしてんねん」
鬼塚が逆ギレした。
「いいや、あんたはマジで絶望的なアホです」
川島も怒り返す。
珍しく2人が喧嘩をしていると、いきなり社長室の扉が開き、秘書が入って来るなり
「社長、夜叉という方がお見えです」
と、伝えた。
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