第73話 羅漢鬼VS武蔵
文字数 2,345文字
「転生者どもは何やってんだ、戦う気があるのか?」
羅漢鬼が、虎之助たちを呆れながら眺めているので
「奴らは、元々チームワークが皆無ですからね」
地元の鬼が、大阪DSP[デビルスペシャルポリス]の内情を説明した。
「ちよっと、虎之助、武蔵。喧嘩してないで敵をやっつけなさいよ!」
桜田刑事が怒りながら、2人を止めに入った。
「そうだ、お嬢ちゃん、一旦休戦して鬼をやるッスよ」
武蔵は休戦を提案するが
「貴様を殺すのが先でござる」
虎之助は刀を、武蔵に向けたままである。
「僕は、鬼を先に殺すッス」
武蔵は、そんな虎之助を無視して、羅漢鬼に向かって走って行った。
「そうは、させるか。唐沢家忍術『大魔王召喚』」
虎之助が呪文を唱えると、巨大な悪魔が現れる。はずであったが、なぜかチワワの式神が現れた。
「あれっ?おかしいな。大魔王が出ないでござる」
不思議がっている虎之助に
「大魔王は忙しいので、代わりに来たんだワン」
と、チワワが説明する。
「そうなんだ。とりあえず、あの鬼を殺すでござる」
「僕、一人じゃ無理だワン」
確かに、チワワだけでは、羅漢鬼を倒すことは難しそうである。
「じゃ、タヌキも呼ぶでござる」
虎之助は御札を取り出して、タヌキの式神も呼び出したが
「僕とタヌキは、同じ追跡が得意なタイプだから、戦闘には向かないんだワン」
と、チワワに諭されてしまった。
「そこを、なんとか、お願いするでござる」
真剣にチワワとタヌキを説得している虎之助を見て。
ーー虎之助は、やっぱりバカで使えんーー
と、冷ややかな目で見る、桜田刑事であったーー
「おい、小太郎。この合体はどうやったら解除できるんだ?」
「初めてやから、俺にも分からんわ」
ヤモリ程の大きさになってしまった小太郎と狂四郎は、自販機の影に退避しながら、合体を解く方法を思案している。
しばらくは、戦力になりそうも無い。
「二天一流『咆哮残斬』」
武蔵が羅漢鬼に強烈な一撃を喰らわす。
ドヅッ!
鈍い音がして、羅漢鬼の右半身が吹っ飛んだ。
「これで終わりッス」
武蔵は両手に一本づつ刀を持ち、得意の二刀流で羅漢鬼の首を狙う。
ガキーン!
しかし、金属音とともに、武蔵の刀は弾かれてしまった。
羅漢鬼は一瞬で失った右半分を再生し、左手に装備していた合金製の防具で刀を弾いたのである。
ーーこの再生スピード。こいつ、とてつもなく強いッスーー
ドガッ!
驚いている武蔵の顔面に、強烈な羅漢鬼のパンチがヒットした。
「ぐふっ」
武蔵は2〜3メートル吹っ飛ばされて倒れ込む。
そこに、やっと酔から復活した鬼一がやって来た。
「くらえっ!京八流『真一文字斬り』」
ズバズバッ!
鬼一の刀が羅漢鬼の頭部から足元まで、真っ二つに斬り倒すと、羅漢鬼は左右2つに別れて倒れ込む、と思いきや、切られた部分が瞬時に引っ付き治癒されて、何事も無かったように立っている。
凄まじい再生能力である。
「なんて奴だ」
鬼一は刀を構えたまま驚いた。
「なんだ、大阪DSPってのは、この程度か。ガッカリだ」
羅漢鬼は、ゆっくりと鬼一に向かって来る。
「二天一流『咆哮残斬』」
ドスッ!
復活して来た武蔵が、後ろから羅漢鬼の胸部を吹っ飛ばした。
「なんだ小僧、生きていたのか」
武蔵は再び剣を羅漢鬼に向ける。
「こう見えても、僕はこの国で一番の剣豪なんスよ」
しかし、胸に大きな穴を開けられながらも、羅漢鬼は平然と鬼一に向かって歩いている。
「それにしては、ヌルい剣だな」
羅漢鬼の胸の穴が、徐々に塞がって来ている。
「武蔵。コイツは首を斬らないとダメだ」
そう言いながら、鬼一は羅漢鬼の首を狙って、刀を水平に振り切った。
が、羅漢鬼は右手で鬼一の刀を掴むと、ベキッっと握り潰してしまった。
「脆い剣を使っているな」
そう言いながら羅漢鬼が、左手で鬼一を殴りつけてきた。
とっさに鬼一は、両手をクロスして防御の体勢をとる。
ーー防御しても、コイツの攻撃を喰らったらヤバいーー
ズバッ!
間一髪で、武蔵が羅漢鬼の左手を切り落とした。
羅漢鬼は振り向きながら
「またお前か、こざかしい奴だな。消えろ」
と、武蔵に向かって大量の炎を吐き出した。
「これはマズいッス」
武蔵は跳躍して斜め後方へと退避する。
「カリカリベーコンをあげるので、あの鬼を退治して欲しいでござる」
武蔵が退避した近くでは、まだ虎之助が式神のチワワとタヌキと交渉中であった。
「ベーコンは欲しいけど、僕では、あの鬼には勝てないんだワン」
チワワとの交渉は、難航している様だ。
「ちょっと取り込み中に悪いんスけど、お嬢ちゃん、手を貸してくれないッスかね」
形勢が不利になってきた武蔵は、虎之助に頼んで来た。
「チワワじゃ無くて、拙者にでござるか?」
「そうッス。そのチワワじゃ、あの鬼は無理ッスよ」
「チワワでは無理でござるか?」
虎之助は不思議そうにしている。
「あの鬼は、そうとう強いッス。再生能力がハンパないッス」
「じゃ、合体して戦うでござる」
虎之助は武蔵の背中に登ろうとした。
「駄目ッスよ、肩車して勝てる相手じゃ無いッス」
「じゃ、拙者が一人で殺るから、代わりに、お主がチワワとタヌキの交渉をするでござる」
「いや、チワワとタヌキじゃ奴に勝てないっスよ」
と言った武蔵の返事も聞かずに、虎之助は羅漢鬼に向かって走って行く。
鬼一が羅漢鬼を相手に、一人で苦戦していたところに虎之助がやって来た。
『破魔毒手裏剣』
プスプス
虎之助が放った手裏剣が、狙い通り羅漢鬼の額と心臓に刺さった。
「猛毒を塗った手裏剣でござる。これで奴はもう死んでいる」
虎之助は余裕の表情で、早くも羅漢鬼に背を向けてチワワの所に戻ろうとしている。
が、しかし
「待て、虎之助。奴には効いてないぞ」
と、鬼一の声がした。
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