第118話 ヘスティアVS白鬼
文字数 2,116文字
「アホの加藤、この男を殺っておしまい」
西王母が、白鬼を指さしながら加藤に命令した。
「ワシ一人で殺るんですか?西王母さんとヘスティアさんも手伝って下さいよ」
首を落としても死なない白鬼に対して、加藤は弱気になっている。
「もちろん、私は協力しますよ。レッドブルを飲んで元気が有り余ってますからね。ヘスティアさんもお願いしますよ」
「そうねえ、私もそろそろ本気を出そうかしら」
ヘスティアは魔術で一本の杖を造りだすと、白鬼に向かって歩き出した。
「なんだ、ヘスティアか。お前ごときでは我を倒せんぞ」
白鬼が恐ろしい形相で迫って来る。
「神の裁きを受けよクロノス!」
ヘスティアの杖から、強力なエネルギー波が白鬼に向かって行く。
「死ぬのはお前だ」
白鬼は大きく口を広げて、大量の瘴気を吐き出した。
バチバチバチ!
エネルギー波と瘴気がぶつかり合い、大量の煙と共に大きな音がして、2人の姿は白煙の中に消えた。
ーー凄まじい両者の攻撃だ。これほどのエネルギー同士がぶつかれば、恐らく勝負は決まるであろうーー
「どっちが勝つんだ」
息を呑み見つめる加藤。
「お前は可愛いなぁ」
2人の対決を無視して、柴犬の柴咲コウを撫でる西王母。
しばらくすると、音が止み白煙が薄れて来た。
薄っすらと人影が見える。
「あっ、あのシルエットは」
人影を凝視する加藤。
「お前は、お利口さんだから、生ハムをあげましょう」
生ハムを柴咲コウに食べさせる西王母。
「西王母さん、生ハムは塩分が多いから、あんまり犬に食べさしたらダメですって、いや、それより2人の決着がついたようですよ」
「2人の決着って?」
「ヘスティアさんと白鬼の対決ですよ」
「ああ、あの2人ね。まあ、そんな話より犬に生ハムあげちゃ駄目なの?」
「少しなら大丈夫と思いますが。あっ、姿が見えました。あれはっ」
白煙が消え去り、中から現れたのは白鬼であった。
「くそっ、やはり白鬼か。それにしてもヘスティアさんの姿が見えないな、何処にいったんだ。負けたとしても消えた訳じゃないだろうに」
加藤が不思議に思っていると。
「あの女は、自分の敗色が濃厚になると『アラビン・ドビン・ハゲマッチョ』と言いながら空間移動して逃げた。今ごろは、ギリシャまで帰っているだろう」
不満そうに白鬼が言った。
ーーヘスティアさんは逃げたのか。これでワシと西王母さんだけになってしまったなーー
「調子に乗るなって言ってんだろ」
またしても、白鬼の背後から玄武が斬りかかって来た。
ーー玄武、生きていたのかーー
しかし、白鬼は素早く剣をかわすと、再び口から瘴気を出した。
「ぐわっ」
瘴気をまともに浴びて玄武は倒れた。
「同じ手にのる我ではないわ。それに、今は調子に乗って無かったぞ」
白鬼は、玄武を睨みつける。
「調子に乗って無かったのか。俺とした事が、しくじった」
と言いながら、玄武は元の御札に戻ってしまった。
「むっ、玄武まで殺られたか」
加藤は覚悟を決めて刀を構える。
「ヒヨっ子は、どいてなさい」
そんな加藤を、西王母が右手で制して前に出た。
「西王母さん…」
ーー一人で殺る気か。白鬼は想像以上に強い、あっという間に玄武も含めると4人がやられたんだぞーー
「わかっています。アナタは、そこで柴咲コウをみていて下さい」
珍しく真面目な表情をした西王母が、白鬼に向かって行く。
ーーこんな西王母さんは初めて見た。ついに実力が見れるのかーー
その頃、モスクワ空港では
「なんでか知らんが身体中に力がみなぎって来た。今なら出来そうな気がする」
「なにが出来そうなんですか」
川島が鬼塚に尋ねた。
「空間移動の術や。何度、練習してもアカンかってんけど、今なら出来そうや」
ーーもしや、鬼塚社長。夜叉さんの魂を受け継いで覚醒したのかーー
「やってみましょう」
「そうやな。とりあえず大阪に通じる空間を造るで」
鬼塚は両手からエネルギーを出して、何もない空間に穴を開け始めた。
「凄い。出来そうですよ社長」
穴が広がり、人が通れる程の大きさになって来た。
「よし。これで大阪に帰れるハズや」
「では、行ってみましょう」
2人は空間に開けた穴の中に入って行った。
大阪DSPの宿舎では、まだ小太郎が鬼神を倒した事を自慢していた。
「そこで俺の右ストレートが、鬼神の顎をとらえたんや」
嬉しそうに話す小太郎。
「最初と話が変わってるぞ。なんか、ボクシングみたいになってるし」
「おい、小太郎。真面目に話せ」
狂四郎や岩法師は、うんざりしている。
「お嬢ちゃん、なにしてるんスカ?」
キッチンで何か作っている虎之助に、武蔵が聞いて来た。
「お饅頭を作っているでござる」
なにやら美味しそうな饅頭が、1ダースほど出来上がっている。
「まさか、その饅頭は」
「そうでござる。後でこの饅頭に毒を入れて、鬼神に食わすでござる」
「お嬢ちゃん。鬼神を侮ったら駄目ッスよ、次も勝てるとは限らないッス」
と、武蔵は慎重であるが
「一人殺るのも、10人殺るのも同じでござる」
虎之助は、不敵な笑みを浮かべた。
ーーこのお嬢ちゃん。台詞が大量殺人犯みたいで、怖いッスーー
日本一の剣豪である武蔵だが、虎之助には、大きく引いてしまうのであった。
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