第79話 闇の死闘パート3
文字数 2,153文字
大鷲に乗った鬼一は、上空から鬼とロシア支部の戦いを偵察していた。
ーー鬼どもとロシア支部の2人が戦っているな。闇の結界を張った奴は、どこだろう。なんだ、あそこの時空が歪んでいるぞーー
鬼一は大鷲から降りると、こっそりと時空の歪みがある地点に近づいて行った。
そこには鬼神とロマノフの、常人では理解できない神々の高度な戦いが繰り広げられていた。
ーーこれは、マズい。強烈なエネルギー同士がぶつかり合って時空が破壊されている。DSPの仲間を呼んだのは良いが、コイツらは、あまりにも危険すぎる、みすみす部下を死なせる訳にはいかんーー
「こうなったら、自分がこの化物どもを始末するしかない」
鬼一は覚悟を決めた。
「誰か来るな」
白鬼と戦っていたロマノフは、近づいて来る鬼一に気づいた。
「DSPの転生者か?」
白鬼も気付いたようである。
「そんな事は知る必要は無い。お前たちは、ココで始末する」
両手を組んで、鬼一は何やら呪文を唱え始めた。
すると地面が盛り上がり大量の土砂が吹き出して、中から巨大な土の魔人が現れた。
「護悪霊嘸よ、あの2人を殺せ」
鬼一の指示に従い、土の魔人はドスンドスンと地響きを鳴らしながら、ロマノフと白鬼に向かって行く。
「なんだ、このデカ物は」
ロマノフは土の魔人を見上げた。10メートル以上ありそうな巨大な土砂の塊である。
「こんな物は、ただの子供だましだ」
白鬼が『時空魔導波』を放つ。
バシャッ!
『時空魔導波』が直撃し、土の魔人の上半身が粉ごなになって吹っ飛んだ。
「やはり、この程度か。こんな小物は捻り殺してやる」
白鬼は鬼一に向かって来る。
が、周囲の土砂が集まっていき、土の魔人の失った上半身を修復していく。
「なんだと」
驚く白鬼は、土の魔人の巨大な右手に捕まってしまった。
「そのまま握り潰すのだ、護悪霊嘸」
土の魔人は、拳に力を込めて握りしめる。
「うぐっ」
思わず、うめき声を洩らす白鬼
しかし、土の魔人を操る鬼一の額からは、大量の汗がって吹き出していた。
「桜田刑事、前方に誰かおるで」
現場に向う車の中で助手席の小太郎が、路上に立っている不審な男に気付いた。
「ホントだ、危ないわね」
男を避けようとハンドルをきる桜田刑事であったが、いきなり男が車に向かって飛びついて来た。
バン!
男はボンネットに飛び乗ると、フロントガラスに向かって拳を突出す。
バキッ!
「きゃあ」
フロントガラスを突き破り、男の腕が桜田刑事に向う。
スパッ
すかさず小太郎が男の腕を切り落とした。
「なんや、コイツは!」
と、小太郎が叫んだ瞬間
ガッシャン!
ボンネットに男がいる事で視界が奪われ、桜田刑事はハンドル操作を誤ってしまい、車は電柱にぶつかって停車した。
素早く虎之助と岩法師が車から降りて男を探すが、車中に斬られた腕を残したまま消えてしまっている。
「大丈夫ですか桜田さん」
狂四郎が運転席の桜田刑事に駆け寄る。
「ええ、大丈夫よ。でも、車を壊しちゃったわ、ごめんなさい」
とりあえず、桜田刑事に怪我は無さそうである。
「これは鬼の腕ですわ」
小太郎が切り落した腕を持って車から降りてきた。
虎之助は小太郎から、腕を受け取ると
「鬼の襲撃と闇の結界とは、無関係ではなさそうでござるな」
と、言いながら腕を調べている。
その時
「来るぞ」
周囲を調べていた岩法師が、虎之助と小太郎に合図をした。
離れた所から数体の黒い影が、こちらを見ていた。
その頃、日本テクノロジーコーポレーションの社長であり、大阪の鬼を束ねる男でもある鬼塚は、自宅の浴室でくつろいでいた。
「あ〜良い湯やな」
浴槽に浸かると、日頃の疲れがにじみ出て眠くなって来た。
ーー今日は、良く働いたから疲れたで。しかし、川島の奴がゼウスを始末するとは意外やったな。でも、なんでアイツは、あんなに強いんやろ?ヤバい薬でもやってんちゃうか?専務のクセに悪いやっちゃな、有罪になってテレビで謝罪会見でもやったら面白いのに、ほんで世間からバッシングされたら良いねんけどなぁーー
等と、考えながら呑気に寝てしまった。
闇の結界では、護悪霊嘸が白鬼を握り潰した所であった。
白鬼を倒した鬼一は、ロマノフに向かって行き
「次はお前だ、殺れ護悪霊嘸」
と指示を出す。
土の魔人は地響きを鳴らしながら、ロマノフに向かって、ゆっくりと歩いて行く。
「愚かな男だ、そんな玩具で鬼神を倒したと思っているのか」
ロマノフは冷めた口調である。
「なにっ」
そう言われ、鬼一が土の魔人を見ると、ボロボロと護悪霊嘸が崩れていく。
「まさか」
崩れ落ちた土砂の上に白鬼が立っていた。
「なかなか面白い術を使うな」
白鬼は、ほとんど無傷である。
ーー化物め、だが護悪霊嘸は気を引く為の囮よ。すでに、この近辺は俺の秘術『估毒霧』で充満しているはずだーー
鬼一は、術で毒を空気中に散布しており、自身は当然であるが解毒剤を服用している。
「京八流『斬鉄剣』」
鬼一は、鋼鉄さえも切り裂く必殺の剣技で白鬼に仕掛けに行った。
ーーもうそろ毒霧が効いて来るはずだーー
鬼一の思惑では、毒霧で弱ったところを、剣技で倒すつもりである。
しかし
「うぐっ」
白鬼に剣が届く前に血を吐いて倒れたのは、なぜか毒霧を撒いた方の鬼一であった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)