第89話 ニーベングの指輪
文字数 2,562文字
ポピリンの歓迎会の最中に、トッピーの処刑が決定してしまった。
確かにトッピーの悪戯やセクハラは、度を過ぎた物があったが、殺されるとなると同情してしまうポピリンである。
「なんとか殺すのは、止めて欲しいでござる」
ポピリンがパッション屋島に頼んでみるが。
「太古の昔から魔法界では、お客様に失礼な態度を取った妖精は処刑するのが慣わしです。トッピーだけ特別扱いする訳にはいきませんよ」
と、はっきり断わらてしまった。
「そこを何とか、ならないでござるか」
「いくらポピリンさんの頼みでも、こればっかりは。あれ、ポピリンさん、そのブレスレットは?」
「これは、ボルデ本山が付けていたブレスレットでござる」
「そのブレスレットは、魔法界を造ったと言われる最初の魔法使い『サンシャイン長谷川』が封じ込められている『サンシャインの腕輪』ではないですか!」
パッション屋島が、ブレスレットにえらく喰い付いて来た。
「違うでござる」
よく分かっていないが、面倒くさいので、とりあえずポピリンは否定した。
「なんだ違うのか」
意外と、あっさり諦めるパッション屋島。
「それで、どうしてサンシャイン長谷川は、封じ込められたんでござるか?」
ポピリンは、魔法界を造った魔法使いが封じ込められた事に疑問を感じた。
「魔法界の功労者であるサンシャイン長谷川ですが、晩年に闇落ちしてしまい、初代闇の帝王になってしまったんです」
「なんだか複雑な話でござるな」
「そうですね。そして当時、正義の魔法使い『ダンブル松本』と対決してブレスレットに封印されたのです。しかし、そのブレスレットは『サンシャインの腕輪』に似てますな」
パッション屋島は、マジマジとポピリンのブレスレットを見ている。
「似てても違うでござる」
再度、ポピリンは否定する。
「なんだ違うのか」
またもや、あっさり諦めるパッション屋島。
そこに、ハリセン・ポッターがやって来た。
「ポピリンさん、お願いがあるのですが」
「何でござるか?」
「もうしばらく魔法界に居て欲しいのです」
ハリセン・ポッターは、魔法界に留まるよう頼んで来た。
「でも、もう帰らないと、仲間が心配するでござる」
そう言われてみて、ポピリンは急にDSPの事が気になって来た。
ーートッピーのことより、DSPの方が心配でござるーー
「そうですね、ポピリンさんには、お仲間がいらっしゃりますもんね」
「アホばっかしなので、拙者が居ないと困っていると思うでござる」
「アホばっかしなのですか、それなら仕方ありませんね」
ハリセン・ポッターは、ポピリンに留まってもらう事を諦めた。
「ポピリンさん、お帰りになられるのでしたら、妖精に駅まで送らせましようか?」
パッション屋島が親切に言ってくれたが
「僕が送って行くよ」
と、ハリセン・ポッターが送ってくれる事になった。
「お嬢様〜。もう少し私めの命乞いをして下さいませ」
突然、目の前にトッピーが現れて、ポピリンの足にしがみついた。
妖精の魔力は意外と強く、瞬間移動ぐらいは簡単にこなせるのである。
「諦めろトッピー。もう、お前は豚の餌になることが決まってるんだ。だが安心しろ、苦しまないようにギロチンで首を落としてやるから」
パッション屋島は、ポピリンから無理やりトッピーを引き剥がす。
「どなたか、哀れな私めを助けて下さいませ〜」
力なく叫ぶトッピー。
「なんだか可哀想でござる」
さすがにポピリンは、トッピーに同情している。
「トッピーを助ける方法が、1つありますよ」
そんなポピリンを見て、ハリセン・ポッターが提案して来た。
「どんな方法でござるか?」
「ポピリンさんが持っている、その『ニーベングの指輪』を大臣に渡せば、喜んでトッピーを解放してくれるハズですよ」
「なるほど、指輪1つでトッピーの命が助かるなら、安いもんでござるな」
「そうですよ、命には変えられませんかからね」
「だが、断る」
ポピリンは、キッパリと断った。
「ええっ!断るんですか」
驚くハリセン・ポッター
「断る」
ポピリンは、もう一度キッパリと言いきった。
「どうしたんですか、トッピーの命が助かるんですよ」
意外な展開に動揺するハリセン・ポッター。
「よく考えたら、アイツはこの世に居ない方が良いでござる」
確かにトッピーは、迷惑な妖精である。
「しかし、どんな者でも命は平等に尊いのでは」
「それは違うでござる。拙者の命の値段が1000万ドルだとしたら、トッピーの命は、道路に落ちている軍手ぐらいの価値でござる」
ーーなっ何と非情な。ポピリンさんが、こんな恐ろしい人であったとはーー
「ならば仕方ありません、力ずくでもその指輪を頂きます」
ハリセン・ポッターは、ビスタチオの杖をポピリンに向けた。
「拙者と魔法で勝負するつもりでござるか」
「その指輪でトッピーの命を救うためです」
ハリセン・ポッターは命を賭けて、ポピリンと戦うつもりだ。
「あいかわらず甘い男でござる。だが、甘さでは拙者の方が上でござる」
「なんですと!」
「拙者の甘さは、焼き肉のタレ甘口並みでござる」
ーータレ甘口って、全然、大した事ねえ!この勝負もらったーー
その時、ハリセン・ポッターに一瞬、気の緩みが生じた。
「僕の甘さは、ゴーヤチャンプル並みだ!」
と、言ってしまってからハリセン・ポッターは、ゴーヤチャンプルが全く甘くない事に気が付いた。というか、むしろ苦いぐらいであった。
「拙者の勝ちでござるな」
あきらかにポピリンの勝利であった。
「ぼっ、僕の負けだぁ」
バタッ
ハリセン・ポッターは血を吐いて倒れ、ビスタチオの杖は砕け散った。
ポピリンは、しばらく、その様子を見ていたが
「負けたとはいえ、拙者に挑むとは見上げた少年でござる。この指輪はお主に託すでござる」
倒れているハリセン・ポッターに指輪を渡すと、立ち去って行った。
ーーありがとうございますポピリンさん、これでトッピーを救えますーー
倒れながらもハリセン・ポッターは、魔法セーラー戦士ポピリンに感謝するのであった。
そんな様子を陰ながら見ていた、ハリセン・ポッターの親友であるポン・ウェズリーは
ーーよく頑張ったなハリセン。しかし、今のは全然、魔法対決じゃないぞーー
と、決して話しかけたり、手を貸したりはしないが、暖かい目で見守り続けるのである。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)