第138話 2人の魔人VS西王母
文字数 2,233文字
「千代!お前も転生したのでござるか?」
虎之助は、目の前に、自分にそっくりな女性が現れた為、妹の千代だと思い込んでいる。
「この人は、お前にそっくりだが別人である。西王母という方だ」
加藤が虎之助に説明する。
「そうです。白鬼が数百年に渡り唐沢家に特殊な血統を混じり合わせて誕生した忍術の天才である唐沢虎之助に、妹の千代の姿で転生させて暗黒の力を与えたのがアナタなのです。白鬼は私に似た闇の西王母を造りあげたのです」
西王母が虎之助の転生について、衝撃的な事実を語った。
「なんだ、千代じゃ無いのでござるか」
しかし、妹では無いと分かると、急に興味が無くなったようで、虎之助はポリポリとお菓子を食べ始めた。
「ちょっと、自分の正体を聞いて何とも思わないの?」
驚いて尋ねる西王母。
「そんな事は、どうでも良いでござる」
虎之助は美味しそうに、お菓子を食べ続けている。
「そのお菓子、私にも食べさせなさい」
あんまり美味しそうに食べるので、西王母も少し欲しくなった。
「嫌でござる」
きっぱりと断る虎之助。
「アンタは私の偽物なんだかから、少しぐらい、くれても良いでしょ!」
西王母がキレ出した。
「まあまあ、西王母様、落ちついて下さい。お菓子ぐらい後で買って来ますから」
慌てて加藤が、なだめに入る。
「じゃ、ルマンドとアルフォートは買ってよね」
「そのぐらいは買ってあげますけど。西王母様は、どうしてココへ?我らの加勢に来てくれたのですか?」
加藤が尋ねた。
「あっそーだ、忘れてた。2人のヤバい魔人が居たんだった」
西王母は、大事なことを思い出した。
「2人の魔人って、鬼神の羅刹と燕鬼の事ですか」
「違うわよ、鬼神なんてどうでも良いのよ。コールド猫座右衛門とフレイム豚の助よ」
「えっ。でも、その2人は今、鬼神と戦ってくれてるんですが」
「そんなの関係ないわ。あの2人を放っておくと、人類が滅亡するのよ」
「ええっ!そんなにヤバい奴らだったのですか」
驚いている加藤をよそに、西王母はスタスタと歩いて行き
「ちょっとアンタ」
と、コールド猫座右衛門に声をかける。
「なんだニャ」
「今すぐに、お家に帰りなさい」
「今は忙しいから駄目だニャ」
コールド猫座右衛門は、くつろいでビールを飲んでいる。
「ちょっと、お嬢ちゃん!コールド猫座右衛門を帰したら困るッスよ」
近くにいた武蔵が、西王母を止めに入った。
「いや、武蔵。この方は虎之助じゃなくて西王母という偉い御方なんだ」
加藤は、今までの経緯を武蔵に説明した。
話を聞き終えると武蔵は
「事情は分かったッスが、コールド猫座右衛門とフレイム豚の助が居なくなると、こっちは、僕とお嬢ちゃんと加藤さんだけになって、鬼神と3対2で戦うことになるッスよ」
と、もっともな事を言った。
「じゃ、1人こっちが多くて良いじゃない。コールド猫座右衛門には帰ってもらうわ」
しかし、西王母は聞き入れない。
「良くないッスよ、絶対に勝てないッス」
「我がまま言うな。西王母チョップ!」
西王母が、武蔵の脳天にチョップを繰り出した。
ガシッ
しかし、コールド猫座右衛門が西王母の手を掴んで止める。
「やめるニャ、武蔵はビールを買ってくれた友達だニャ」
「むっ、私のチョップを止めるとは、さすがに恐怖の大王ことコールド猫座右衛門ね」
「まあまあ、仲間同士での争い事は良くないニャ。心配しなくても、ビールも飲んだ事だし、もう帰るニャ」
コールド猫座右衛門は、意外にも大人の対応を見せて、素直に帰ろうとしている。
「待てい!俺との決着がついてないぞ」
だが、今まで戦っていた燕鬼は納得していない。
「じゃ、君も一緒に僕の家に連れて帰るニャ」
コールド猫座右衛門は燕鬼の腕を掴むと、空に飛び上がった。
「わっ、ちょっと待て。お前の家ってどこだ?」
連れ去られそうになり、燕鬼が焦って聞いた。
「僕の家は太陽にあるニャ」
「太陽って、やめろバカ!焼け死ぬじゃないか」
「大丈夫だニャ、僕の家は比較的、涼しい場所にあるから平均気温は7000度しかないニャ」
コールド猫座右衛門は燕鬼を掴んだまま、太陽に向かって飛んで行く。
「7000度だと!イヤだ。助けてくれ〜」
燕鬼の叫び声が遠のいて行った。
「帰って行ったわね」
西王母は、帰って行くコールド猫座右衛門を見届けると、今度はフレイム豚の助に
「アナタも早く家に帰りなさい」
と、命令口調で言った。
「でも、まだ敵を倒してないですよ」
フレイム豚の助は、羅刹と激しい戦いの真っ最中である。急に、会った事もない娘に帰れと言われて、困った顔をしている
「どうしても戦いたいなら、この鬼を自分の家に連れて帰って、続きをしなさいよ」
「ダメです。僕の家には高価なフィギュアが、たくさん有るので、他人は入れないようにしてるんです」
フレイム豚の助は、決して自分の家に他人を入れない主義であった。
「お前は、オタクか!」
キレかけている西王母。
「オタクじゃありません、フィギュアマニアです」
「それはオタクと、どう違うの?」
「全然、違いますよ。僕は美少女のフィギュアを、異常なぐらい愛するマニアなんです。ただのオタクと一緒にしないで下さい」
「よけい気持ち悪いわ!サッサと帰れ、この豚男」
ボコッ!
西王母のミドルキックが、フレイム豚の助の腹部にヒットした。
「痛いなぁ、暴力は止めて下さいよ。分かりました、もう帰りますよ」
フレイム豚の助は、蹴られたお腹を擦りながら、しぶしぶ帰って行くのであった。
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