その日は高校の同級生四人で数年ぶりに集まってわあわあと騒いでいた。
そのうち一人が車の運転免許を最近取ったのだという話になり、そのままレンタカーを借りてどこかドライブにでも行こうという話になった。
特に目的地も決めず道を走り、途中コンビニに寄ったりしつつ走るうちに人家が減っていき、気が付けば鬱蒼と木々の生い茂る山の中のぐねぐねとカーブした道を登っていた。
どこだよここ、と誰かが言ったが、山だよ山、といういい加減な答えしか返らなかった。
しばらく登った先に車を数台止められるようなスペースと歩道と柵があり、これは景色を見るべき場所ではないかと車を降りてみることにした。
そこは見晴らしがよく、向かいの山が青々と見え、紅葉の時期などさぞ素晴らしい景観なのだろうと思われた。
柵の下を見下ろせば沢になっていて底を水が流れているのが見えた。
しばらくそこであそこに見える木はなんだ、熊が出たりはしないのかなどとくだらないことを話ながら景色を眺めていたが、急に冷たい風が吹いてきたかと思うと空が暗くなり、ゴロゴロという音が響いてきた。
これは雨か雷か、と慌てて空を見上げたがうす暗いばかりで雨の気配はない。
誰かが下だ、と叫んだ。
柵に掴まり下の沢を覗き込むと、さっきまでチョロチョロと水が流れるばかりだった谷川を、ゴロゴロと地響きを立てながら岩が転がっていた。一つや二つではなく、次々と列をなして並ぶかのように、大きな岩が転がり落ちてくる。
これは山崩の前触れか何かじゃないか、逃げた方が良いんじゃないのか、背筋に気味の悪さを感じ、皆慌てて車に乗り込み走り出した。
走りだしたがゴロゴロという音はいつまでもついてくる。
空はいつの間にか晴れて俺たちは汗びっしょりになっていた。
それでもゴロゴロという音は止まない。
後ろを向いてもただ山道がうねっているばかりで何もない。
ただ音だけがついてくる。
何なんだよと叫ぶ奴がいた。
音はまだ止まない。
山道はどこまでも続いている。