タマネギ【学生作品】

文字数 893文字

 ピピピッと、脇に挟めた体温計が鳴る。39℃ジャスト……。いや、高熱すぎでしょ。


「具合は良くなったかい?」


 言いながらお母さんが新しい冷えピタとお茶を持って来てくれる。


「ありがとうお母さん。ごめんね、母の日なのに迷惑かけて」


「迷惑なんて今に始まったことじゃないでしょ。さっさと風邪治しなさいよ」


 私の冷えピタを付け替えて、お母さんは部屋を後にする。毒がありながらも私のことをちゃんと心配してくれるお母さんほんと好き。マジ大好き。


 とかそんなこと考えてる場合じゃない。今日は母の日。お母さんに日頃の感謝を伝える日なのに、この体たらくは何なの? バカじゃないの?


 まあ、とりあえずそれは置いといて、母の日といえばカーネーションを送るのが定番。私も当日に買ってお母さんに渡そうと思ってたのに、これじゃあお母さん私のこと外に出してくれないよね。いや、風邪なんだから大人しくしてろって意見が大半だろうけどそれはそれ。問題はどうやって外に行くかってこと。


 外に出るための作戦を考えていると、またお母さんが部屋に入ってくる。


「私これから買い物に行ってくるから、大人しく寝てなさいよ」


「わかった~」


 チャンス! お母さんが買い物に行ってる隙に買いに行って、お母さんが帰ってくる前に家に戻る。完璧な作戦だ。


 お母さんが家を出たのを見計らって、早速行動する。とりあえず風邪のせいで寒気が尋常じゃないから、何か羽織るものが欲しいと思いクローゼットを漁るが、見事に何も無い。そういえば昨日全部洗濯してたんだった。捜索場所をクローゼットからタンスに切り替えると、高校の学祭で使った着ぐるみが出てきた。あーもうこれで良いや。ピ○チュウの着ぐるみとかメチャクチャ目立つと思うけどもうこれで良いや。


 着ぐるみをパジャマの上から着て、財布を持って部屋を出る。


「ただいまー」


 いや早すぎるよ! 何で今日に限ってこんな早いの⁉︎


「ちょっとあんた何してるの! その格好は何⁉︎  熱で頭おかしくなってんのかい⁉︎」


 結局、私はカーネーションを買いに行けず、部屋で療養することになった。


タマネギ

2018/05/09 09:19

tamanegi

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