三題噺のお部屋
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小さなころからヒーロー番組から見ていた俺は、今でもヒーローに憧れていた。時折カッコいいヒーローを妄想しては、同じくヒーロー好きの同僚に熱っぽく語るのが常となっていた。
「紹介しよう! 私は戦隊ヒーロー○○マン! 沢を颯爽と駆け抜けるこの脚に、岩も砕くこの拳! 町に蔓延る悪達を、今宵も私は叩き切る!!!」
「っていうのはどうだろう」
「全体的にダサいっす」
俺は同僚にバッサリと切り捨てられ、がっくりと肩を落とした。
そんな時だった。突然女性の悲鳴が辺りに響いた。
振り向くとそこには、転んだ女性の姿と、女性ものの鞄をもってこちらに走ってくる男の姿だった。
「ひったくりよー!」女性の甲高い声が響く。
俺は瞬時に今こそヒーローになるときだ、と理解した。ひったくり犯を捕まえようと、俺は向かっていった。
しかし。
「どけ!!!」
犯人は持っていた鞄を、俺に向かって大きく振り回してきた。まずい。俺は避けようとするもバランスを崩し、転んでしまった。
しかし、犯人もその反動でよろけた。その隙を狙い、同僚は犯人の腕を掴み大きく投げ飛ばした。
「まったく。危ないことしちゃダメっすよー」
同僚は涼しい顔で犯人に言ってみせた。
どうやら俺がヒーローになるにはまだまだらしい。
CHIHIRO_F
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