「ヒーローここに?」白鳥からす

文字数 674文字

 小さなころからヒーロー番組から見ていた俺は、今でもヒーローに憧れていた。時折カッコいいヒーローを妄想しては、同じくヒーロー好きの同僚に熱っぽく語るのが常となっていた。


「紹介しよう! 私は戦隊ヒーロー○○マン! 沢を颯爽と駆け抜けるこの脚に、岩も砕くこの拳! 町に蔓延る悪達を、今宵も私は叩き切る!!!」

 

「っていうのはどうだろう」

「全体的にダサいっす」

 俺は同僚にバッサリと切り捨てられ、がっくりと肩を落とした。


 そんな時だった。突然女性の悲鳴が辺りに響いた。

 振り向くとそこには、転んだ女性の姿と、女性ものの鞄をもってこちらに走ってくる男の姿だった。

「ひったくりよー!」女性の甲高い声が響く。

 俺は瞬時に今こそヒーローになるときだ、と理解した。ひったくり犯を捕まえようと、俺は向かっていった。

 しかし。

「どけ!!!」

 犯人は持っていた鞄を、俺に向かって大きく振り回してきた。まずい。俺は避けようとするもバランスを崩し、転んでしまった。

 しかし、犯人もその反動でよろけた。その隙を狙い、同僚は犯人の腕を掴み大きく投げ飛ばした。

「まったく。危ないことしちゃダメっすよー」

 同僚は涼しい顔で犯人に言ってみせた。


 どうやら俺がヒーローになるにはまだまだらしい。

2019/03/03 08:30

CHIHIRO_F

おいしいところを同僚にもっていかれてしまう主人公、応援したくなりますね。いつかきっと、活躍できる日がやってくるはず…その日を夢見て、沢を駆け抜け、岩を砕いて鍛えてほしい!
とても短い作品ですが、きっちりと起承転結の構成になっているのがいいですね。これからもたくさん作品を書いていってくださいね!


2019/05/07 12:54

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