『色んな情報ペットボトル』
あれが知りたい、これが知りたい。強くそう願った時に現れる、不思議な自販機があるらしい。就活で自分のことを見失いかけている俺は、自分の事が知りたいと思った。
だから、探して探して……やっとその自販機を見つけた時は、ガッツポーズをして喜んだ。
それは、よく見かける自販機と、何も変わらなかった。売り物も、見たことがある商品だけど……一番上のはじっこで、『色んな情報』と書かれたラベルのペットボトルが、とんでもない違和感を放っている。透明なペットボトルに、白いラベル、黒い文字。値段は百六十円。色んな情報が入っている割には、かなり安いと思う。
さて、せっかく見つけたんだし、躊躇してないで買ってみよう。財布から百六十円を出して、自販機の中に投入する。件のペットボトルが一番高価だから、一番下から一番上まで、すべての商品が購入可能を示して光る。
もちろん、迷うことなく『色んな情報』を選ぶ。ガタゴトッと音を立てて、普通サイズの何の変哲もないペットボトルが落ちてきた。中には、透明な水のような液体が入っている。自分で買っておいてアレだけど、ちょっと気味が悪い。本当に、こんなもので色んな情報が手に入るのか……?
まぁ、飲んでみりゃわかるか。ウソだったとしても、取られたのは百六十円だけだし。あとでTwitterに感想でも書き込めばいいか。
覚悟を決めて、固いキャップを力づくで開けてみる。特に変なにおいはしない。味はどんなものだろう。
その液体が喉を通った瞬間、目の奥で火花が散ったような感覚に陥った。今まで俺が辿ってきた人生の映像が、頭の中に流れ込んでくる。幼稚園、小学校、中学、高校、大学……何も考えずぼんやりと生きてきた俺が、間抜けな顔で映っていた。次の映像の中で、俺は自販機の前で呑気に何か飲んでいた。しばらくすると、何かを探すようにペットボトルをまじまじと見て……顔を上げたところで、突然映像が途切れた。
なんだ、これからのことは分からないのか。どこに就職するとか見られると思ったのに。
意識が戻ってきて、ラベルに書かれているであろう成分表示をなんとなく探す。どうしてそこで映像が終わったのか気になったから。
『誰かの情報を覗き見て、エンドの表示が出る前に映像が途切れた場合』
『その方の人生はそこで終わりです』
たしか、さっきの映像に、エンドの表示は出ていなかった。
という事は、俺の人生は、ここで――