ねむめがね
ある日、気が付いたら俺は病院のベッドの上にいた。
何が起きたのか把握できず、ただただ呆然としていたら、看護婦と思われる20代後半の女性と医者と思われる40代中頃の初老の男性が入ってきた。看護婦から今回の経緯を聞かされた。
俺はテーマパークで着ぐるみのアルバイトの最中、熱中症で倒れて救急搬送されたらしい。そういえば、あの日の気温は30度を超えるという予報がされていたようなされていないような。そんな気温の中で着ぐるみを着ていたら熱中症になるのも無理はないか。
あの日の事をぼんやりと思いだしていると、看護婦から熱を計ると言われ、体温計を渡された。俺は黙ってそれを受け取り、脇の下へと差し込んだ。30秒して、体温計から計測終了の音が流れた。俺は体温計を脇の下から取り出し、看護婦に手渡した。
看護婦と医者は体温計をの数値を確認すると医者から、「36.9でした。熱はもう無いですが、念のため後2日は入院しましょうか」と言われた。
「すみません……ご迷惑をおかけします」
「いえいえ、熱中症も立派な病気ですから」
そう言って、看護婦と医者は病室を後にした。
医者達が去った後、強烈な眠気に襲われて、俺は再び眠りについた。
眠りについてからおよそ3時間。俺は再び目を覚ました。
病室内を見まわしたが、特に変わりはない様に見えたが、窓の方を向いてみたら、窓の手前にカーネーションのドライフラワーと半分に折られた1枚の紙が置いてあった。
紙には俺の名前が書いてあった。僕は紙をゆっくりと開いた。
『熱中症で倒れたんだって?○○もまだまだだね。せっかくアタシがお見舞いに来てやったっていうのに○○はのんきに寝ちゃって。起こすのもかわいそうだから、行く途中に買ったカーネーションだけ置いてくね。最後に一言。退院したらアタシとデートするんだからね。だからしっかり休んで元気になって。君の可愛い可愛い彼女より』
読み終わった後、俺はゆっくりとその紙を閉じて、テーブルに戻した。
「しょうがないな……退院したらアイツの好きなもの買ってやんないとな」
俺は思わず笑みを浮かべた。それと同時に、風がカーネーションを優しく揺らした。