三題噺のお部屋
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文字数 893文字
平日は会社で虚無の労働に追われ、その疲れをいやすべく金曜日の夜に倒れるまで飲んだ結果、土曜日はスーパー・ストロング・デトックス・マシンと化して一日じゅう部屋の隅に転がっている私のようなどうもならん作家志望者にとって、日曜日はじっくりと執筆に取り組める貴重な日である。
で、朝からパソコンの前に座っている。座ってはいるんだけど。
makoto_akinaga
Kindle読み放題に入っている昔のまんがを延々と読んでいるだけで午前中が終わってしまった。ネットで見かけるネタ画像で断片的に知ってはいたけれど、ちゃんと通して読んだことはない作品ってありませんか。
Kindleのリーダーを閉じ、インスタグラムを開く。
私もよくアップするようなごはんやら猫やらの画像に混じって、白いダッフルコートが椅子の背にかけられている画像があらわれた。少し毛玉がついていて、冬のあいだ着倒されたことがわかる。それだけの写真だ。
なのに、どうして目が離せないんだろう。
名前を見なくても、誰が撮ったのか、どうしてわかるんだろう。
スマホでメッセージを送った。
〈コート見たよ。相変わらずかっこよく撮るね〉
森島章子の返事はだいたい遅い。期待はしてなかったけど、すぐに着信のお知らせが来た。
〈ありがとうございます。クリーニングに出す前に、ふと撮りたくなって〉
〈スマホで撮ったの?〉
この回答が二、三日後に来ることもある。
〈はい。まだ慣れませんけど、沙織さんが勧めてくれたことですから、これからもときどき撮ります〉
私の友だちは、徹底的にマイペースで、まだ無名だけど写真の才能がとてもあって、たぶん、私に対して特にやさしい。なぜかはわからない。
〈また飲もうね〉
そう送ったけど、今度は返信がなかった。
何か気になる被写体が見つかって、そっちに集中しているのかもしれない。
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このSSは、小説サイト「カクヨム」に載せた短篇「森島章子は人を撮らない」の後日談です。よかったらこちらもご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884742431
アップロード可能なファイルは5MまでのPNG、JPEGです。
縦幅は、画像の縦横比率を保持して自動調整されます。
スマホでの表示は、大・中・小のどれを選択しても、一律で320pxに設定されます。
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