「ねぇ、聡美、カレイドスコープって何か知ってる?」
さっきまでホルモンを口いっぱいに入れていた美香があたしに訊いてくる。
「カレイドスコープって万華鏡のことよ」
あたしは美香にそう教え、砂肝を口に入れる。ごりっとした触感がたまらない。
「さっすが聡美! 物知りだね~。カレイドスコープなんて、意味を知ってる人そうそういないんじゃない?」
「そうでもないと思うけど……。ゲームとかやってたら聞く言葉だし、知ってる人も多いと思うけど」
あたしはさらに砂肝を口に入れる。
「……砂肝って美味しいの? 私はちょっと苦手なんだよね……」
「美味しいわよ」
「断言するねぇ……。じゃ、あたしも食べてみよっと」
美香は箸で砂肝を挟み、口に入れる。しばらくモグモグしていた美香の顔が曇る。
「うえっ! うーんやっぱり苦手だなー。よく平気で食べられるね」
「吐き出さずに飲み込んだのは褒めてあげる」
美香は口直しにビールをグビっと飲む。あたしはビールが飲めないので少しだけ羨ましいと思う。そんなことを思いながらウーロン茶を飲む。
「ぷはーっ! ビールは楽しいもの辛いものすべてを混ぜ混ぜして、素敵な思い出に変えてくれるのさ!」
「何言ってんだか……あたしもホルモン食べよっと」
「あっ、思い出で万華鏡のこと思い出した!」
そういえばあたしは万華鏡で遊んだこと無いなと思いながら、美香の思い出話を聞くことにする。ホルモン美味し。
「あ~懐かしいな、おじいちゃんに貰った万華鏡。きらきらですっごい細かくて、不思議な図形で、とっても綺麗だったな~」
美香は一呼吸おいてから続ける。
「ホルモンと万華鏡って似ていると思うんだ~。噛めば噛むほど味わえるホルモン! 見るたびに姿を変える万華鏡! 長く楽しめるっていいよね~」
「なんだろう。すごく分かりにくい」
「そうかな~似ていると思うんだけどな~」
「で、その万華鏡ってまだ持ってるの?」
美香がまだ万華鏡を持っているのなら、今度見せてもらいたいなと思い訊いてみる。
「え……っと、捨てちゃったかなー、どうだったかなー。今度、実家に帰った時に探してみるね。もしあったら聡美にも見せてあげる。すっごい綺麗なんだから」
「ふふ、楽しみにしておくわ。ところで、さっきからホルモンしか食べてないけど、何か頼む? ジンギスカンとか」
「お、食べる食べる! ジンギスカン! ひ・つ・じ! ひ・つ・じ!」
羊コールが少しうるさい。その後、ベロベロに酔っぱらった美香をタクシーに詰め込んで、美香の部屋まで連れて行くのが飲み会のメニューである。