【改造人間たちの日常】
英国にて、秘密裏に研究・開発されていた〝改造人間〟と呼ばれる人の領域を超えた力を持った超人集団は「力だけではなく、知能すらもヒトより上回ろう」というチームリーダーの思想のもと、今日も今日とて軍施設にあるミーティングルームを占領し、議論を繰り広げていた。
「リーダー、今日の議題は何ですか!」
「先週みたいに〝英国☆ワーストフード傑作選!〟とかいうふざけた議題あげたら許さねぇからな」
「ふふふふ……安心してくれ、リース君。私は同じ轍は踏まないのさ。オットー君もやる気満々なようだし、早速議題を上げさせてもらおうか」
集団のリーダーであるネオは、ホワイトボードに指先からレーザーを射出して文字を書く。リースは頭を抱え、オットーは興奮気味に拍手した。
「今回の議題はずばり――〝世界滅亡〟についてだ」
「「おっも!!」」
あまりに大きすぎる先週とのテーマの落差に、二人は同時に驚きの声を上げた。そんな二人の様子などお構いなしに、ネオは誇らしげに微笑みながら、オットーの方を指差した。
「ではまずオットーくんから!」
「えぇー僕!? えーっと、えっとねぇ……世界滅亡、うーん……!!」
何か閃いたのか、オットーは勢いよく立ち上がり、右手を上げる。
「宣誓! 僕はWHOの世界平和宣言に乗っ取って、世界を滅亡させることを誓います!」
「良い心がけだ!」
「どこがだ!? 滅亡させんなら平和もクソもねぇだろうが! つーか全く議論になってねぇし!」
「じゃあ次はリース君!」
「話くらいちゃんと聞けや! 目の前にいるのに見えない壁作ってんじゃねぇぞ!」
リースは踵部分に取り付けられたブースターで一気に加速した蹴りをネオに放った。が、ネオは持ち前の強化された動体視力により、危なげなくそれを回避してみせた。
「相変わらずいい蹴りだねリース君!」
「チッ、やっぱ無駄に性能だけは一人前かよ……はぁ、もう俺は部屋に戻る」
「えー待ってよリース! ちょっと連れ戻してくる!」
へそを曲げたリースはミーティングルームから出ていき、オットーもリースを連れ戻しに出て行ってしまった。
一人残されたネオは、カップに注がれたオイルを飲みながら、ホワイトボードに刻んだ文字を改めて眺める。
「……確かに、きっと私たちのような存在が破滅を生んでしまうんだろうな……」
憂いを帯びた表情でぽつりと呟いたその言葉を、聞く者はまだいない。