『やりすぎ注意』
「もう無理……。お腹すいたよ。早く買い物に行くか、外に食べに行こうよ」
空腹に耐えきれず、僕は同じ部屋にいる友人たちに声をかける。
そのうちの1人、卓也が言う。
「駄目だ。まだ時間には早いだろ。少しくらい我慢しろよ」
さっきからずっとこの調子だ。
「なんで⁈ もうけっこういい時間じゃん! 18時半だよ! なぜか冷蔵庫の中のものも保存食も全部消えてるし、外に食べに行こうよ」
僕は、わずかな力を振り絞り声を上げる。
「まあまあ、誓。落ち着けよ。もう少ししたら食べようぜ」
もう1人友人、修太が僕をなだめる。
「さっきから、ずっともう少しって……。冷蔵庫の中が消えてたから、昼も食べてないしほんとに限界だよ」
僕は今日昼過ぎに起きた。何かを食べようとしたら冷蔵庫の中も保存食のカップ麺も綺麗さっぱり消えていた。強盗でも入ったかと思い、警察に電話しようとしたら、こいつらが来たのだ。
「もう少し様子を見ようぜ」と2人が言い、警察には連絡しなかった。お金を取られてるわけではないが、やはり怖い。
そんな風に、昼間の事を考えていると、急に部屋の明かりがすべて消えた。
「!!停電? 少しブレーカー見てくるよ」
そう言うと、2人はまた僕を止めた。
「すぐに戻るさ。とりあえずここにいろ。暗い中動くのは危ないしな」
それもそうか、と思いしばらく待っていると、電気がついた。
「あ、ついた。よかったー、ってえーー!!?」
そこには、驚愕の光景があった。なんと、いつの間にか、僕の彼女の凛が部屋にいるのだ。しかも、テーブルには料理やケーキが並んでいる。
「「「誓! 誕生日おめでとう」」」
パンッとクラッカーの音が鳴る。
「ごめん。状況がわからないよ。そういえば、確かに今日は僕の誕生日だけどさ」
整理のつかない頭で、3人に尋ねる。
「誓君をおどらかせようと思って、2人に頼んでお願いしたの。誓君が寝てる間に、合いかぎでこっそり部屋に入って、食料を全部リュックに詰めて持ち出して、これくらいの時間に電気が消えるように、ブレーカーに細工しといたんだ」
出されたリュックの中には、確かにうちにあった食料が入っていた。あまり量はないけど。
「どう? おどろいた?」
僕が言いたいのは一言だけだ、サプライズは嬉しいがそれにしてもこれは……。
「お前ら、やりすぎ!」