三題噺のお部屋
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『最初の友達』 ヤドナシ
サバイバル生活四日目、おかしなものを見つけた。いつものごとく、虫か蛇でも捕まえてやろうと食料を探していたら、肉厚な獲物が細い獣道を横断していた。一見蛇のようだが、ずんぐりとした胴体で、とぐろを巻けるような長さもない。これぞまさしく…… 「ツチノコだな」 久々に言葉を発した。飛行機事故で海面に投げ出され、この島に流れ着いてから、種類の分からない虫や動物を山ほど見てきたが、それらとは明らかに異質な生物……伝説を見つけてしまったのだ。 こんな状況でなかったら、すぐさま写真を撮って世紀の発見を投稿するのに、あいにくスマホは水没していて使えない。 「捌き方は蛇と同じでいいんだろうか?」 悲しいかな。今は未知の生物と出会った証拠を残すより、食えるかどうかを真っ先に考える自分がいる。蛇は種類によって肉が硬すぎたり、骨が多すぎたりするが、見た目からして、こいつは可食部も多そうだし、肉も柔らかそうだ。 ずんぐりとした胴体だから、捕まえるとき噛まれる心配もないだろう。そう思って、特に警戒もせず、のっそりと進む生物に手を伸ばす。すると、そいつは驚くべき反応を示した。なんと、表面の鱗を波打つように動かして、虹色に反射させたのだ。 思わず、その美しさに見惚れてしまう。さっきまでヤマカガシとそんなに変わらない地味な体色でしかなかったのに、今は「これぞ未知の生物」と言うにふさわしい姿をしている。 考えてみれば、伝説のわりにツチノコのイメージはそこまで変わった姿形をしていない。蛇やトカゲの突然変異、あるいはナマコの見間違えと言われても納得できる程度の珍しさだ。しかし、今目の前で虹色の輝きを見せるこいつは、正真正銘「幻の生物」だ。 天敵を驚かせるためか、仲間に危険を知らせるためか分からないが、とにかく美しい。いつまでもいつまでも見ていたい。捌くのはよして、こいつを持って帰ることにしょう。食べられない蜘蛛や幼虫でもあげて、うちの相棒になってもらおう。 その日、この島で最初の友達ができた。
yomogi
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