三題噺のお部屋
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その絵には、大きな苔むした岩と、青く抜けるような空と、大きな岩の影を映す群青色の沢というか池のようなものが描かれていた。
私は、隣にいる男にこう答えた。
「この絵です」と。
「それは、とても光栄です。この絵は、この展覧会のために、僕が描いた絵です」と男は、少し目を輝かせて言った。
「この絵に描かれている池というか、沢のようなものは、どこの風景でしょうか?」と、その絵について抱いた疑問点を口にする。
「これは、岩見沢にある風景です」
「どこなんでしょうか」
「それは、あえて言いません。ご想像にお任せします」
「あっ、そうですね」と私は恐縮しながら言う。
私は、質問を変えようとした。私は、いつも自分の見てきた絵について、五、七、五、七、七で、つまり短歌のようなものにまとめるようなことをしている。だから、自分の見てきた絵については、花の名前だとか、それが何なのかということについて、できるだけ正確なものをその作者から聞き出したいのである。そこで、
「ここに描かれているのは、池ですか、それとも沢ですか」と、私は尋ねた。
「沢です。ですが、池と思っていただいてもけっこうです。さっき、言いましたよね。絵は、その人が思ったように鑑賞すればいいのです」
私は、また恐縮してしまった。絵は、自分の感じた通りに見ればいいと改めて思った。
家に帰ってから、「池」と表現した。
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