『終わり始まり』
イギリスの議会で本日、世界を揺るがす政策が可決されてしまった。議長が議員たちを見渡して言う。
「改めて思い知らせてやろう。世界を統べるのは、我々大英帝国だと」
世界では今、侵略のための戦争は禁止されている。しかし、イギリスがその不文律を破り、世界制覇に乗り出そうとしている。
「秘密裏に開発した兵器の数々。これで脅すだけでも、小国は我々の手に下るだろう。そして、戦争になったとしても、我が軍には改造した兵士たちがいる。負けることなどありえない」
イギリスは裏で、非人道的な実験を行い、兵士たちを痛みを感じず、感情もない人間に改造してしまった。さらに、身体能力も増強させている。
「行くぞ、皆のもの! 大英帝国万歳!」
その議会から、わずか2週間後。すでに、欧州の小国はイギリスの手に落ちた。世界では当然、それがニュースとなり、各国首脳が集まり、対策を練っているが、イギリスのあまりにも強力な兵器や、改造兵士の強さで、八方ふさがりになってしまっている。あのアメリカまでもが太刀打ちできないほどだ。
「いったいどうすればいいんだ。我々は核という牽制の手段を持っていない。このままでは日本もイギリスに飲み込まれてしまう」
日本の軍事力では、イギリスの足元にも及ばない。その事実が日本人たちを絶望させていた。
「このままではどうあがいても飲み込まれてしまいます。ならもう仕方ないです。イギリスごと道ずれにしましょう。イギリスがこんな手段で統一したところで、世界が崩壊するだけです。なら少し、終わりを早めましょう。また始めるために」
各国首脳は、その日本の提案した突拍子もない案に、賛成せざるを得なかった。
その手段はシンプルかつ大胆なものだ。核シェルターに、各国の人間たちと、植物の種や動物を持ち込む。そして、核保有国すべてが持っている限りの核を、世界中に無差別に打ち込み、世界を崩壊させる。もちろんイギリスを中心に狙ってだ。
「崩壊した世界で、また一から始めましょう。我々の先祖もやってきたんです。必ずできますよ」
世界は滅びた。積み重ねた文明も、シェルターに入れなかった生き物も、当然イギリスという国そのものも。残った人たちで、世界を繁栄させる。今度はもう間違えないように、それぞれの国で手を取り合えるように。
「今回のシミュレーションでも滅びたか。でも、少しずつ文明のレベルは上がっている。中々いいデータを取らせてもらったよ。地球人の皆さん」
モニターで地球を見つめながらつぶやく謎の声の正体。それは今はまだ誰にもわからない。