榎本レン

文字数 3,261文字

榎本レン
2018/01/04 13:17

rsesaf_rsesaf

(私はなんて臆病なのだろう……奥手であることをこんなにも後悔したのは初めてだ)
2018/01/04 13:20
(私が彼、犬沢キョウと出会ったのは高校2年生の頃だ。

転校したばかりでクラスの皆とあまり馴染めず、1人でいた時に彼は話しかけてきたのだ。)

2018/01/04 13:26
水瀬さんって、読書好きなの?
2018/01/04 13:49
(彼は、私——水瀬由美の持っている本に関して言っているようだ)

あ、はいそうです……

2018/01/04 13:59
俺もこの作者、好きだよ

叙述トリックとか小説ならではって感じで


クラスの中であまりこういう話をする機会がないからさ 珍しくて水瀬さんと話してみたくてさ

2018/01/04 14:19
(私は話がわかる人がいてつい嬉しくなってしまって……)

そう!主人公が実は犯人だったとか、ミステリーに限らずキャラクターが実は人間じゃなかったとか、映像では難しい小説ならではの表現ですよね! ——ぁ、すみません。急に大きな声を出してしまって……

2018/01/04 14:35
いいよ 俺も話ができる人がいて楽しいし

——それに水瀬さんずっと暗い顔してたから、楽しく話せて良かった

 俺、学級委員だからさ、クラスで大変なこととかがあれば相談してね。

2018/01/04 14:49
(私はそのとき、気づいたのだ。さっきの会話はクラスに馴染めない私を気遣っての行動だと……

——そんなどこにでもあるようなことが、私には凄く嬉しかった。


 それは転校してから何度か、彼のクラスの皆への気遣いをみていたからだろう。たぶん、彼は私でなくても同じように接したはずだ。

 

 そう、私にはそんな彼がとても眩しくみえたのだ。)

2018/01/04 15:11
(それから何度か彼と話す機会があり、私は好きなお話について夢中で話した。)
2018/01/04 15:40
この小説の人間ではない主人公が人間の社会で人を学んでいく姿とか凄くいいなって思ってて——
2018/01/04 16:06
——ふふっ
2018/01/04 16:17
どうしたんですか? 急に笑って……?
2018/01/04 16:25
ごめんごめん、何でもないから気にしないで
2018/01/04 16:26
気になりますよー!


(今思えば、私は以前より明るく振る舞えるようになった気がする。 クラスの皆とも普通に話すようになった。)


2018/01/04 16:28
(それからあっという間に時間が経ち、新年を迎えた。神社でおみくじを引いたとき私は背筋に嫌な感覚が走った。

結果は案の定……)


凶だ……


2018/01/04 16:34
別れ、我慢の年、か……

(おみくじの内容は普段はあまり信じないのだが、このときだけは、不思議と頭の中に引っかかった……


そしてそれは、最悪の形で叶うことになる。後悔とともに……)

2018/01/04 16:43
ねえ、聞いた?犬沢君、アメリカに留学するんだって! ほら犬沢君、テニスやってるでしょ かなり実力があるから海外の技術を学んだ方がいいって色々なところから言われてて——
2018/01/04 17:14
えー、いいなー、ハワイとか近いじゃん!
2018/01/04 17:18
馬鹿ねー、テニスやってるんだからそんな時間ないでしょー それにアメリカのカリフォルニア?だっけそこからでも結構距離あるわよ
2018/01/04 17:21
……
2018/01/04 17:26
(その日、彼は学校に来なかった。試合の疲れを取る為らしい。学校を終え、帰宅した私はベッドに倒れ込んだ。)
2018/01/04 17:38
(今年で高校生活は終わり、話によると留学から彼はアメリカの大学へそのまま進学するらしい。 つまり、高校を卒業したら会えなくてなってしまう。連絡先は知っているが、テニスで忙しいからとあまり携帯で連絡も取らなかった。


何故、こんなに胸が苦しいのだろう。

わからない……いや、わからないふりをしていただけだ。

彼と話す時間が楽しくて、気づかいに満ちたあの笑顔にいつも安心していた。好きだった。

……否、最初に話す前から、テニスも人一倍努力しているのに、他者に対して優しい、彼の姿に目を奪われていた。


 ——けれど、私は自身のことで精一杯で、誰にでも優しい彼に頼ってばかりで、彼に返せるものが何もなかった。否、否、事実ではあるが、それは好きだと彼に言えなかった理由ではない……単に今の時間が終わってしまうかもしれないのが嫌だっただけなのだ。——どこまでも臆病な私。泣いた。ただ泣き続けた。




 ——ああ、でも、今まで告白しなかったことを凄く後悔しているけれど、今はそれ以上に怖いものがある——

 ——きっと私は彼が留学して離れたらもうこの気持ちを伝えられない……!—— 


 皮肉なものだ。離れることを意識したら、こんなにも簡単に勇気が出るなんて。これも彼がくれたものだ。)


2018/01/04 18:05
*****************
2018/01/04 19:11

rsesaf_rsesaf

留学か……散々、悩んで決めた事だけど……
2018/01/04 19:24
(その前にやらないといけないことがある……)
2018/01/04 19:33
(彼女——水瀬由美をみかけたのは彼女が転校してくる少し前だ。

俺はテニスの息抜きに近くの図書館にいた。目当ての本を探していると、小学生ぐらいの男の子に本を手渡している彼女がいた。)

2018/01/04 19:36
わー、これ!これ!お姉ちゃんありがとー!
2018/01/04 19:48
ごめんなさいねぇ、この図書館の人間でもないのに、子供達のために本を探してくれて
2018/01/04 19:50
探している本の近くであの本をみかけただけですよ!だから、そんなお礼なんて……
2018/01/04 19:58
って言ってるけど、由美ちゃん、昨日初めてきたのにもう昨日と合わせて5人の子の本を探してるでしょ

最初にあなたが本を借りにきたときに話したときなんてあたふたしてたのに

2018/01/04 20:03
なんて……いうか……小さな子って無邪気であまり距離感を感じないっていうか、緊張しなくて話しやすいんです
2018/01/04 20:09
由美ちゃん、保育士さんとかに向いてるかもしれないわね
2018/01/04 20:11
あはは……それはやってみないことにはわからないです
2018/01/04 20:18
(——そのときの彼女の笑顔をよく覚えている。子供に優しい人なんだなと今考えるとあのときにはもう好意のようなものを持っていたのかもしれない。


だから、彼女が転校してきたときは驚いたし クラスに馴染めていなかった暗い顔している彼女をみて、学級委員だった俺はどうにかしなきゃいけないと思った。いや、違うな。俺は単に彼女の雪が似合いそうなあの笑顔が曇ってるのが嫌だったんだ。実際に話してみて凄く話が合ったし、時折、笑顔で話すその姿をみてこっちまで笑ってしまうときもあった。

 テニスの試合で勝てなかったときも、彼女の顔をみているだけで、楽しくてしょうがなくて頭の切り替えができたり疲れを忘れられた。)

2018/01/04 20:21
(まあ、ときどき、彼女のことを考えすぎて、テニスの練習に身が入らなくなったのは置いといて——この感情が好きなんだっていうのに気づいたのは、少し前だ。思えばテニスにひたすらに打ち込んでいて、恋愛なんて考える余裕がなかった。たまに息抜きで読む本とかで知ってはいた。しかし読むのと実際に経験するのは違う。いや俺が鈍感なだけなのか?  


 この気持ちを自覚した頃には留学の時期が決まっていた。小さい頃からの夢であるプロテニスプレイヤーには絶対になると決めていた。だから留学のことも迷わなかった。けれど、今は胸に棘が刺さっているように苦しい。 )

2018/01/04 21:16
だけど、テニスも一つ一つ課題をクリアして色々経験したからここまで強くなれた。だったら恋愛も逃げてちゃダメだよな……

よし!

2018/01/04 21:42
*****************
2018/01/04 21:48

rsesaf_rsesaf


2018/01/04 21:58
 
2018/01/04 22:12
私と彼は向かいあっていた。
2018/01/04 22:13

rsesaf_rsesaf

(今まであんなに普通に話せていたのに……まるで、みえない壁があるみたい。)
2018/01/04 22:16
(けれど、勇気を出すと決めたのだ。ここで、言わなければ一生後悔するから。

彼が眩しかったのは彼を通して自分の理想をみていたからだ。何があっても努力し、突き進む。

そして、それと同じぐらい、他人を気づかうことが出来る。 そんな彼に少しでも近づきたい。臆病な自分を変えたい、そんな彼が好きだ。

だから——)

2018/01/04 22:17
好きです!付きあってください!
2018/01/04 22:27
俺は君が好きだ!付き合ってくれ!
2018/01/04 22:32
それはほぼ、同時だった。

私が一瞬固まったように、彼も目を白黒させて驚いて固まっていた。

2018/01/04 22:33

rsesaf_rsesaf

え……本当に?
2018/01/04 22:36
え、ホント?
2018/01/04 22:38
ぷっふふ……あははは!
2018/01/04 22:41
なんで笑ってるんですかー!
2018/01/04 22:43
ごめんこめん、また同時だったのがなんか面白くてさ……
2018/01/04 22:44
でも、OKしてくれましたけど、留学があって大変なんじゃ……?
2018/01/04 22:45
問題ないよ、離れることにはなるだろうけど、なんとか時間を作って連絡は取ろう

それに——それでも、好きだって言いたかったのは十分伝わったから


必ず、帰るからさ

それまで待っていて欲しい

2018/01/04 22:49
(その言葉、笑顔だけで嬉しかった。)


ええ、待ってます!

2018/01/04 22:53
君のその笑顔が——
2018/01/04 22:57
貴方のその笑顔が——
2018/01/04 22:59
ずっと好きだった。
2018/01/04 23:00

rsesaf_rsesaf

おしまい。
2018/01/04 23:01

rsesaf_rsesaf

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)
※これは自由参加コラボです。誰でも書き込むことができます。

※コラボに参加するためにはログインが必要です。ログイン後にセリフを投稿できます。

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色