三題噺のお部屋
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私たち魔女は、成人すると家を出て一人で生きていかなくてはいけない。そういう掟なのだそう。
で、私は自分の部屋で荷作りの最中なわけなのだけど、全く進まない。正直、家を出て一人で生きていける自信がない。だってまだ十八歳だよ? まだ遊びたいお年頃だよ? それなのに、荷物をまとめて早く家を出なさいだなんてひどいと思う。まあ、反抗するのもダルいなと思っちゃう自分もいるわけで、文句も言わずに素直に家を出る準備をしている。
必要な物を魔法で小さくして、手提げの付いた小さな箱に詰めていく。全て箱に入れ終えて、部屋を見てああ私の部屋ってこんなに広かったんだなとふと思う。
まっさらな部屋の真ん中に、銀色に光る歯車が落ちている。
ああ、忘れてた。一番忘れちゃいけない物を忘れてた。これがないと私は魔法を使えない。魔女といえば杖を持っているイメージがあると思うけど、現代の魔女はそんな古い物は使わない。皆、自分のお気に入りの物を杖の代わりとしている。ちなみに私は歯車の魔女って呼ばれてたりする。カッコよくない?
あとは、そう。この子を連れて行かなきゃ。足元で寝ている猫を抱きかかえる。この子はメインクーンのいも。いも。あ、名前ね、この子の。ほら、メインクーンってメークイーンと似てるじゃない? だから、いも。我ながら私のセンスには戦慄せざるを得ないね。
てか、この子重いな。こんなにデブってたっけ?
まあいいや。荷作りも終わったし、家族と最後の食事をしてくるとしますか。
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