七不思議
うちの学校にはちょっと変わった七不思議がある。よくある七不思議と違って、理科室や音楽室や家庭科室で、夜な夜な起きる怪異とかじゃない。場所は全部二年生と三年生のフロアを結ぶ階段で「何曜日に何の落とし物を拾ったら何が起こるか」という話。
月曜日にハンカチの落とし物を拾ったら、その持ち主が早退する。
火曜日に消しゴムの落とし物を拾ったら、その持ち主が転校する。
水曜日に帽子の落とし物を拾ったら、その持ち主が停学になる。
こんな感じで、いかにも誰かが作ったような七不思議。しかも、学校中の人が知っている。なぜなら本当に、毎日誰かの落とし物がこの階段で見つかるから。
私のハンカチが落ちていたことも、クラスメートの帽子が落ちていたこともある。最初は誰かの悪戯だとみんな思う。でも、自分の落とし物が拾われた人は決まって驚く。だって、その落とし物は何年も前に失くしたものだったり、ここに落ちているはずのないものだから。
二ヶ月前に拾われた私のハンカチも、小学校の頃、修学旅行で海に落としたハンカチだった。母の直筆で書かれた名前、滲んだインク、ほつれた糸……間違いなく、あのハンカチ。悪戯で誰かがここに落とすことなんてありえない。
その日、私のクラスで早退は出なかった。誰も拾わなかったからだ。二年生と三年生には暗黙のルールがあって、誰かの落とし物が見つかった日には拾わない。次の日になってから届けてあげる。そうすれば、七不思議どおりにはならないから。
もし禁忌を破れば、本当に持ち主が転校したり、クラスメートが早退したり、最悪、二度と会えなくなってしまう。七不思議は週末に近づけば近づくほど、不吉なものになっていく。
金曜日に鉛筆の落とし物を拾ったら、その持ち主が事故に遭う。
一昨日、噂の恐ろしさをよく分かってない一年生が、たまたま先輩の階へ行くとき、名前の入った鉛筆を拾ってしまった。私の友人のものだった。教室に行くと、その子の机に花束が置いてある。私もそっと、家から持ってきた花を重ねた。