三題噺のお部屋
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「うちの財産はすべて、神託銀行さんに任せようと思うの」
洗濯物を干しているときに唐突に送られてきたLINEの表示を見て、「お母さんったらまた誤変換して……」と思った私だが、母の変換は間違っていなかった。最近急に仲良くなったという陶芸仲間の藤井さんの強い勧めにより、実家の土地建物、母が若いころにちょこちょこと買っていた別荘地などは、すべて「白き聖なる光神託銀行」に預けられてしまった。財産一式をすっかり託した母は、銀行の運営団体「白き聖なる光の園」の共同住宅に入り、携帯電話やパソコンを没収されて、私たち家族との連絡は途絶えた。
だいたい、神託銀行ってなんなのか。ネット上に情報は少なかったが、どうやら「頭取」と呼ばれる団体代表が、新月の夜に「神」のつぶやきを受信し、その内容に沿って顧客から預かった資金の運用を決定するシステムの銀行らしい。神の意図を忖度した結果、現在おおよその預金や積立金は、団体の土地や建物の購入に使われているとか。設立10年くらいの新しい団体だが、すでに被害者の会も出来ているようだ。
ようするに、よくある新興宗教の類だと確信してから、私は姉と妹に連絡を取り、三人で練馬区にある「白き聖なる光神託銀行」の本店に向かった。
さてここで問題です。この後の展開はどうなるでしょう。
1、姉妹で力を合わせて本店の頭取室まで突破し(ラスボスは陶芸仲間の藤井さん)、母を救い出す。奪われた財産を取り戻すため、決戦の舞台は法廷へ……
2、実は母は、あやしい新興宗教にハマった陶芸仲間の藤井さんを奪還するため、騙されたふりをして神託銀行の内部に潜入していたのだった。母カッコイイ!
3、白き聖なる光神託銀行はとても先進的な素晴らしい団体であり、母と私たち姉妹は生命を含めたすべての持ち物を銀行に預託し、白き光の繭に抱かれてきっと幸せな生涯を送ることでしょう。
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