おまけ25 あとで死ぬほど後悔するバッドエンド

文字数 2,181文字

はは、相変わらずやらかしちゃってるなわたし。と前回の『バッドエンド集』を読み返して、やや反省したりもしてました。

まあ、()りずにその続きなのですが──

今回はラグシードとリーム、それぞれのお話。前よりはだいぶマイルドな仕上がりに。

しかし、やはり悪趣味な企画だと思うし、さすがにもうネタがないので、今回で終了です。

51話『潜入!グロリオーザの巣窟~案内人は白百合の修道女』の冒頭の分岐になります。

        ☆

ロジオンはこれから『黒い蛇』の巣窟に乗りこむようだ。準備のほうは万端だった。でも、正直なところ俺はまだ迷っていた──

A それでも一緒に行く 
B 死ぬのはごめんだ

──Bを選択

運命のサイコロをふらなきゃいけないっていう瞬間が、人生の局面ではたびたび訪れる──

普通に生きてたってそうなのに、冒険者ともなればなおさらのこと。数限りない選択をくりかえして、今の俺がある。

だから『今』がまさにその瞬間なのだと、俺には感じられた。

「やっぱり、行くのか………?」

これから出発するっていうタイミングで出鼻をくじかれて、あいつは困惑しているようだった。何をいまさら……と不安そうな表情をうかべて聞いてくる。

「迷ってる?」

「………まあ、な。さすがの俺も今回ばかりは敵が巨大すぎて、先行きが見えないっていうか。それでもいつもは考えなしに突っ走ってきたんだが………」

そう弱音をこぼしてから、さすがにロジオンを直視できずに俺は視線を落とした。

「ついてこなくったって、いいんだよ……。僕は……覚悟はできてる。君には選ぶ権利がある。無理強いはしない。僕は暴君にはなりたくないからね」

そう言ってあいつは、無理矢理笑った。

「おまえのその仇討ちってヤツは、命を懸けてでもやりとげなきゃいけないことなのか………?」

俺はながらく疑問に思っていたが、とうとう口に出せずにいた問いをロジオンにぶつけた。

そうすることで引きとめられるんじゃないかって思ったんだけど、ムダだった。

「ほんとうは僕もわからなくなってるんだ」

「じゃあ──!」

俺は浮き足立ったが、あいつの意志は想像以上に固かった。

「でも、これだけは言える。僕は兄さんと義母さんをあんな目に遭わせた連中をゆるせない。阻止できる力が僕にあるのなら──立ち向かってみようと思う」

まっすぐな瞳だった。

そのときのロジオンはまぶしすぎて、俺なんかには目がくらみそうだった。

「………おまえは強いよ。俺はいざというとき、案外臆病なのかもな」

傾きかけた陽射しが容赦なく俺を照らす。
足元から伸びた自分の影が、こんなにも頼りなく感じられたことはなかった。

「心配しなくてもラグは僕よりタフだよ。そういうところに救われてきたしね。それにくらべて僕は今まで逃げつづけてきたから、最後くらいは……ね」

「決心はゆるがない、か」

「これは僕の運命だから。君には君の人生がある」

そんな風な言葉を幾度か交わして──
最後はわらって別れた。

あいつはすがすがしいほどに笑顔で、俺は不思議だった。

奇妙にふっきれていて。
それはまるで、死地におもむく旅人みたいに──

急になんだか胸騒ぎがした。
ここで追いかけないやつは、人じゃないとすら思った。

だけど──

遠ざかるあいつの背中を見送りながらも、俺の足は根が生えたようにびくともしなかった。まるで長くその土地に自生している植物のように。

あたり前だろ?
ついてったら、おそらく死ぬ。

勝敗がわかりきった勝負で、自ら負けを引きに行くなんて。そんな愚かな行為を誰がする?

誰だって命は惜しいんだ。

誰かのために命をささげるなんて、口で言うほどかんたんな訳じゃない。

主君と護衛の道は断たれて──
そして(さい)は投げられた。

もう後戻りはできない。
あいつはふり返らないし、俺も追いすがったりしない。

死ぬほど後悔するかもしれないな、という思いが心の隅をかすめたりしたが。それでも、お互い前に進むしかないことはわかりきっていた。

こうやって、人は大人になっていくのかな。
まちがっていると頭ではわかっていながら、正しい道をえらび損ねたりして。

卑怯に、たくましく。
誰かを見殺しにして──

        ☆

そもそも元ネタが小さいメモ一枚しかなく。自分的にはピンチ!って感じでした。

この短い文章を物語として、どうやって膨らませればいいんだろう?と書く前から悩んでしまった。

が、書き出してみれば思いのほか、予想外に転がってくれたような気がしています。

もとの文章とはまるっきりちがう方向にいきましたが、それでいいのでしょう。

やっぱり即興で書かないと動いてくれないんだな、この人は。

さわやかに後味がわるい話を書きたくて、こんな感じになりました。そんな芸当ほかのキャラにはできそうもないので……。

人生は博打!っていう生き方が、わたしには到底できそうもないけど。彼にならできるんでしょう。

本編とくらべると薄情な性格になっちゃってますが、バッドエンドに対応した性格?ということで大目に見てください。

        ☆

ほんとうはこの次に、リームの話がくるはずだったんですけど、ちょっと間に合わなくて……。

完成しているラグシードの話だけでもと、先に投稿させてもらいました。

後日、この章に付け加えるかたちで、リームの話を追加します。

☆ 追記 ☆

長すぎるので、新しく『おまけ27』のほうにリームの話を投稿しました!



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