(………
希少な
白変種で………しかもオッドアイだって………?)
毛並みの
良い
白いたてがみが、いっそう
威圧感をかもしだしている。
雄々しいライオンの
背中には、
不自然にも
巨大な
鷲の
翼が
生えていた。
それはあきらかに
異様な
姿だった。
あんな
生き
物が
店の
外につながれているだけで、
営業妨害もはなはだしいものがある。
店員の
狼狽ぶりはもっともなことであった。
しかし
飼い
主はなれたもので、
不遜な
態度のまま
言い
分をゆずらない。
これまでも
権力を
盾にして
横暴なふるまいを
通してきたのだろう。
「
支配人を
呼べっ!」
貴族の
怒鳴り
声が
響き、
店員があわてて
厨房の
奥へとすっとんでいった。
「
従業員も
気の
毒に。
最近、
富裕層の
一風変わったお
遊びで、
猛獣飼いならすのがはやってるらしいけど、
俺は
感心しないね」
旺盛な
食事の
手をわざわざ
休め、
軽蔑しきった
冷めた
口調でラグシードが
言った。
「まったくその
通りさ。
僕もラグの
意見に
同意するよ。それに………」
「
貴族連中は
自分勝手にやりたい
放題でたまらねえなぁ」
「
金が
余って
余ってしょうがないんだったら、
俺たちにまわしてくれってんだ」
近隣の
席から、
貴族に
対する
不平不満の
声がもれ
聞こえてくる。
「………たしかに、まったくその
通りだよね」
ロジオンは
侮蔑するような
一瞥を
貴族にくれてやりながらも、なにやらすっきりしないような
表情で
物思いに
沈んでいった。
ラグシードがすごいスピードで
皿を
平らげていくのを
横目で
見ながら、
彼は
目の
前にある
料理に
黙々と
手をつけていった。
しばらくして、
彼らは
店内のかなり
奥まった
座席で
食事をしていたのだが………
入口に
背を
向けているロジオンに
対し、ラグシードはなにかに
気づいたようだった。
「おい、
飼い
主はまったく
気づいてないようだが、なんかヤバそうだぜ」
やむなく
食事を
中断して
背後を
見ると、
鎖につながれた
合成獣が、
牙をむき
出しにして
低くうめいている。
殺気立っているのは、
彼らの
目にもあきらかだった。
「
話し
合いに
夢中で
誰も
気がついてないようだね………このままだとマズイかも」
その
時、
酔っぱらった
客が
店を
出ようとして、
玄関脇のテーブルの
上に
倒れこみ、
皿の
割れるけたたましい
音が
店中に
響きわたった。
──それが
合図だった。
騒音に
刺激されたのか、
合成獣は
頑丈な
鎖を
引きちぎり
店内に
躍り
出た。
あちらこちらでわき
起こる
悲鳴、
叫び。
あたりは
騒然となった。
あわてて
店の
外へ
逃げ
出す
者、
腰を
抜かして
仲間に
引きずられて
運ばれていく
者もいる。
野性をむき
出しにした
猛獣が、
鋭い
爪をふりかざした。
早くも
負傷して
血を
流している
人もいる。
「
悪い
予感が
的中だ………」
うんざりしたようにロジオンはつぶやくと、
迷わず
背中のロッドに
手を
伸ばした。
ラグシードも
腰のさやから、すでに
剣を
抜き
放っている。
「ぐるるるるるるるるっ!!」
白いたてがみを
逆立てて、ライオンと
大鷲が
合成された
肉食獣が、
距離を
縮めて
二人ににじり
寄ってくる。
その
眼光は
獲物を
発見したよろこびで、
鋭く
光っていた──