第161話

文字数 188文字

 父が退院した。(現実)
 良くなってはいないが、嬉しそうだ。

 母がソファをベッドのようにととのえておいた。そこに父は腰かけて部屋を見回し、それから横になり、毛布をかけて、紅茶が飲みたい、と言うので私が淹れると、喜んで、白と藍の小さな湯呑みに二杯飲む。

「不思議だね。体からは、何もかも削ぎとられて、いいことは一つもないのに、どうしてこんなに幸せなんだろう」
と言って、目を閉じた。

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