第116話

文字数 568文字

 やたらに暑くて苦しい。私が発熱しているのか。

 例によってふしぎな建物にいる。古い洋館を改装してギャラリーにしたような。
 それでいて骨格や間取りは実家のそれだ。

 展示を見てまわろうとすると、黒い巻き毛のやせた男性がそばに来て、早口で説明しながら、展示されたドライフラワーにリボンをかけてはその場で切る。どうも彼が作者で、そういうインスタレーションらしい。
 ちょっと感心してみせると、ますます熱心に説明が続く。

 次の間の、金色のマントルピースのある居間に来ると、やせた女の人がいて、私のことを「毛糸を見ていた方ですよね」などとしつこく確認する。
 こんなひょろひょろの男のことで妬くのか。
 迷惑なのでてきとうにいなす。

 その後、彼女をふくめた女の人たちがいろいろダンスをした(シンデレラの話らしい)けれども、こみいりすぎていてもう書けない。
 
 居間に戻ると、母が古い雑誌や美術館カタログなどをしばって捨てている。私も捨てなくちゃと思うけれど、最初に手にした1冊のカタログをもうもてあまして、こっそりその辺に差し込んで終わりにする。
 背表紙が割れているものもある。

 外へ出ると、建物は丘の上に、灯台のように建っていて、まわりには麦畑がはてしなく広がっている。
 なにとはなしに、逃れがたさを感じる。


※最後の一行、起きてすぐ書いたメモのままです。

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