第159話

文字数 513文字

 その前に見ていた夢。

 石の低いアーチがたくさんあって美しい建物、神田の文化学院のような。
 柔らかな暖色の光が満ちている。
 ここに私は、一人で住んでいるらしい。

 祖母と母が私の暮らしぶりを見に来ているらしい。

 二人のうちどちらかが、私の洗濯機をのぞきこんでいる。洗濯機は二槽式。
 まだ朝食もすまないうちに、もう二人は帰りはじめる。
 二人ともロシア女性のような濃い花柄のスカーフをかむっている。

 表へ出ると、母がすでに自転車で去っていくところで、残された祖母がとほうにくれているから私も驚いて、お母さん何してるのと声をかぎりに叫ぶけれども、小さな声しか出ない。

 母は知ってか知らずか、建物の前のまるい広場をすいすいと自転車で何周もして、
 ふいに戻ってきて、顔をしかめる。

 母と祖母はまた室内に戻っていく。
 私も日の光を背にして戻ると、二人とも、六畳の和室(つまりきゅうに実家)に置かれた座卓の上にかがみこむようにしてせっせと何かしている。何かはわからない。
 カーテンを閉めきっているから、私はあきれて、
 開ければいいじゃない、
 と言ってカーテンを引くと、思ったとおり外はひどく明るくて、

 それで、黒犬がいるさっきの夢につながる。

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