第137話
文字数 1,137文字
また体育館に集合させられている。また、と言うのは、この体育館には見覚えがあり、たぶん何度も来ているからだ。もちろん夢の中で。
今回は体育館の中が二つに分けられていて、私の入っているグループと、もう一つの団体が使っている。
合宿らしく、私が朝寝坊してのろのろ行くと、私のグループはまだ誰も来ていない。みんなまだ部屋で寝ているのだ。それはいいとして、私たちは演劇の稽古をしに来ているのに、稽古場である体育館にふとんが脱ぎ散らかしてある。最初に来てしまった私は、それを端へ寄せることから始めなくてはならず、悪戦苦闘する。
考えたら、ふとんだから畳めばいいはずなのに、なぜかモップで寄せようとしていた。
向こうのチームはバスケ部らしく、すでにはつらつと練習していて、こちらのことがさぞばかに見えるだろうと思うといたたまれないのだけれども、よく見ると彼らもふとんを敷き詰めた上で練習している。
避難所なのか。
そのときベルが鳴って、稽古再開だと言うので、私はいそいで外に出る。
体育館にいたはずが、時代劇のセットがしっかり組まれていて、外は土の地面で細い用水路まで掘られている。その小川をまたいで草の生えているほうを歩き出すと、仲間の一人が駆けよってきてせかすので、いそいで行く。
小走りにもう一度用水路を飛び越えて市中に戻るときに、みんな着替えまにあうのかな、と、その仲間(誰)に言って、
そのとたん、私自身が着替えの途中で、下半身がタイトスカートにハイヒールであることに気づいてがくぜんとする。
どこか物陰で着替えないといけない。
手近な建物に飛びこむと、それが最初にいた体育館で、ふとんは片づけられて長机が出ている。誰かが片づけてくれたのだ、と、ほっとする反面、うしろめたい。
そこへ網乾左母二郎 のような素浪人に扮した男が出てきて、私にいろいろからむ。
どうやらこれが私の敵役らしく、私もいつのまにか若侍の格好に着替え終わっている。
私は無実の罪でつかまって、いまから火あぶりになるらしい。だったら犬川額蔵だ。私は長机に手をついて、それが私の台詞らしく、
すべて許す、
と言うと、後ろにいた町人の野次馬夫婦が驚いている。
私はもう白装束で、いよいよ体育館の中央へ出ていこうとしているけれども、まわりのいでたちが八犬伝なのだか聖人の受難劇なのだかわからなくなってきた。
私自身はもとよりあっぱれ侍でもないし、まして聖人でもなく、芝居の稽古のつもりだから、ここで仲間が助けに来てくれるはずだと知っていて、待っているわけなのだけど、はなはだ心もとない。その心細さじたい、私自身のものなのか、演技の一端なのかわからない。
バスケのゴールのある体育館の中央に、火刑用の薪が積まれてある。
今回は体育館の中が二つに分けられていて、私の入っているグループと、もう一つの団体が使っている。
合宿らしく、私が朝寝坊してのろのろ行くと、私のグループはまだ誰も来ていない。みんなまだ部屋で寝ているのだ。それはいいとして、私たちは演劇の稽古をしに来ているのに、稽古場である体育館にふとんが脱ぎ散らかしてある。最初に来てしまった私は、それを端へ寄せることから始めなくてはならず、悪戦苦闘する。
考えたら、ふとんだから畳めばいいはずなのに、なぜかモップで寄せようとしていた。
向こうのチームはバスケ部らしく、すでにはつらつと練習していて、こちらのことがさぞばかに見えるだろうと思うといたたまれないのだけれども、よく見ると彼らもふとんを敷き詰めた上で練習している。
避難所なのか。
そのときベルが鳴って、稽古再開だと言うので、私はいそいで外に出る。
体育館にいたはずが、時代劇のセットがしっかり組まれていて、外は土の地面で細い用水路まで掘られている。その小川をまたいで草の生えているほうを歩き出すと、仲間の一人が駆けよってきてせかすので、いそいで行く。
小走りにもう一度用水路を飛び越えて市中に戻るときに、みんな着替えまにあうのかな、と、その仲間(誰)に言って、
そのとたん、私自身が着替えの途中で、下半身がタイトスカートにハイヒールであることに気づいてがくぜんとする。
どこか物陰で着替えないといけない。
手近な建物に飛びこむと、それが最初にいた体育館で、ふとんは片づけられて長机が出ている。誰かが片づけてくれたのだ、と、ほっとする反面、うしろめたい。
そこへ
どうやらこれが私の敵役らしく、私もいつのまにか若侍の格好に着替え終わっている。
私は無実の罪でつかまって、いまから火あぶりになるらしい。だったら犬川額蔵だ。私は長机に手をついて、それが私の台詞らしく、
すべて許す、
と言うと、後ろにいた町人の野次馬夫婦が驚いている。
私はもう白装束で、いよいよ体育館の中央へ出ていこうとしているけれども、まわりのいでたちが八犬伝なのだか聖人の受難劇なのだかわからなくなってきた。
私自身はもとよりあっぱれ侍でもないし、まして聖人でもなく、芝居の稽古のつもりだから、ここで仲間が助けに来てくれるはずだと知っていて、待っているわけなのだけど、はなはだ心もとない。その心細さじたい、私自身のものなのか、演技の一端なのかわからない。
バスケのゴールのある体育館の中央に、火刑用の薪が積まれてある。