第65話

文字数 752文字

 夢でサラの、『眠れぬ騎士』というタイトルのチラシを作っている。
 ミヤザキさんも私も甲冑を着ている。
 
 光沢のある横置きの紙で、夕景らしい濃い色の写真に、タイトルの『眠れぬ騎士』が縦書き白抜き明朝体。
 たしかスペインのどこかにある、白い崖を直接彫って作った町。そこが野ぶどうのような黒紫に暮れていく写真。美しい。
 
 でもお話は、コメディの人形劇ミュージカルらしかった。
 
 チラシを作っていたはずなのに、すでにお客さまが会場にいっぱい入っている。
 ふつうのホールではない。ヨーロッパの古いお城というか邸宅というか、よく保存されて、美術館に改装されているような建物。
 前にもそういう所でサラの公演をする夢を見た。同じ建物。たぶん今日が三度めくらい。
 
 正夢になるといいのにな。
 ステージはなくて、平台を置いて赤い幕を引いて、照明だって地明かりだし、音の反響もよくない。
 それでもお客さまがぎっしりで、ほとんど立ち見。
 
 前に夢で同じ建物で公演したときは、私が
「じゃあ次の場面に移動します」
 って叫んで、みんなでぞろぞろ次の部屋に行って、そこで続きをやった。本当に美術館みたいだった。
 
 そういうの、本気で、ありかもしれない?
 固定のステージに固定の観客席じゃない、やりかた。昔のヨーロッパで、クリスマス劇をやったというやりかた。
 
 建物の中にソノさんの描いた背景を順番に立てていって、屋台をいくつも作る。ミヤザキさんと私がその前に立って、一場面終わったら、お客さまといっしょに次の場面に移動する。
 音楽は、どうしよう。フブキくんにトイピアノを弾いてもらうとか、カナメちゃんに鍵盤ハーモニカを吹いてもらうとか。台車に乗せて動かせるちっちゃいオルガンを使うとか。いずれにせよ、彼らもいっしょに館内を移動するのだ。

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