第102話

文字数 526文字

 起きたら、夢を見たことを忘れた。
 そして十五分して、ふいに思い出した。こんなことは初めて。

 ミヤザキさんとソノさんと私とで、早朝に出勤する(どこへ)。
 建物の壁も、廊下や部屋の仕切りも、クリーム色に塗られた鉄板で、なんとなくまにあわせのような雰囲気だ。

 教室に着くと(学校だったんだ)、まだ誰もいない。それどころか鍵がかかっていて、三人ともがっかりする。
 なにしろ壁も戸も同じクリーム色の鉄板だから、入り口からしてよくわからない。

 ところが、私がたまたま手をかけたところに錠があって、少しゆすったら簡単に開いた。

 そこへ事務の○○さん(ついさっきまで○○さんが誰か覚えていたのに、もう思い出せない)が入ってきて、しきりに謝っている。

 ソノさんが乾いた清潔な雑巾を持って、ガラス窓の結露を拭きだす。拭きながら○○さんと並んで、いいんですよ、などと言ってあげている。きゅうに寒くなりましたねなどと話を合わせている。
 雑巾のあとがむぞうさにガラスにつくので、私はながめながら、そうか、私の家もとにかく窓を拭いてしまおう、と思う。

 壁に生徒の描いた水彩画がいくつか貼られている他は、まるで飛行場のゲートのような、落ちつかない建物だ。
 外は曇っていて見えない。

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